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オホーツク海は1月中旬から2月いっぱい流氷に覆われることから、流氷が一定期間、海をふさぎ獲り過ぎによる資源の枯渇を防いでいます。また、流氷にはアイスアルジーというプランクトンの餌になる苔がつき、そのプランクトンが小魚を、そして小魚が大型魚類を連れてくる豊かな生態系が形成され、世界有数の好漁場となっています。


◆食べ応え抜群の特大サイズを厳選

オホーツク海の一番のポイントは他の産地に比べて大型サイズが獲れることです。アメリカ(アラスカベーリング海域)やカナダ(ニューファンドランド島周辺海域)のズワイガニのサイズは1肩あたり200g前後が平均で、大きくても300gまでなのに対し、オホーツク海では250g~300gが平均で、400gを超える特大サイズも漁獲されます。当店では、オホーツク海の中でも特に大型サイズが多いとされる北オホーツク海域のズワイガニを原料として使用しています。


◆身入りの良い春漁の船内凍結品

オホーツク海のズワイガニ漁は、春漁と秋漁の2回ありますが、当店では一番身入りの安定している5月6月の原料を厳選して使用しています。また、カニの凍結方法には、船の上で獲れたてを冷凍する「船内凍結」と、漁獲後に港に帰り最寄りの工場で凍結する「陸上凍結」の2種類あります。スピード重視の「船内凍結」の方が鮮度が保たれ、生の獲れたての風味が味わえます。


【豆知識】ロシア産ズワイガニのほとんどは、韓国の釜山に水揚げ

韓国は1990年代から国際水産物物流・貿易基地を目指し、釜山の甘川(カムチョン)港に船舶修理団地や
、遠洋漁船の漁獲物や輸入水産物を受け入れる物流・加工団地を整備してきました。一説によると、釜山市の冷蔵保管能力は144万トンもあるそうです。

日本に比べて韓国は諸経費が安く、ロシア政府も関税を優遇したため水産物を運んだり、修理で釜山を訪れるロシア船は同港へ集中するようになり、かつては北海道や九州で水揚げされていたカニや助子(明太子の原料)は、今ではそのほとんどが釜山に水揚げされています。

国内総生産(GDP)の50%前後を輸出に依存する貿易立国の韓国。水産に関するモノも人も集積する甘川(カムチョン)港の開発は、仁川(インチョン)国際空港のアジア最大のハブ空港化と同じ戦略上にあります。
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初夏の風が若葉の上をさわやかに吹く風薫る5月のある日、
ロシア産ズワイガニを韓国の釜山にて買い付けしている“エージェント”と呼ばれる業者さんから1本の電話が入りました。

「3日後に釜山にて生ズワイガニとボイルズワイガニの入札があります!
それぞれ30~40トンのまとまった数量で、サイズも大きく、品質も良いみたいですよ!」

とのこと。


日本海のズワイガニ漁は11月~3月ですが、ロシア産ズワイガニの漁期は、ほぼ1年中です。

中でも、身のつまり具合と品質がよいのは5~6月ごろと言われてますので、
今回の入札は期待できるかもしれませんね…


実際に自分の目で見て確かめないと納得できない店長@田辺は、
社内研修の予定が入っていたのを
急遽キャンセルし、現地に直行することにしました!


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韓国の釜山で行われる昼からの検品に間に合うように、AM6時に本社を出発!


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車で約3時間、関西国際空港に到着。


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関空から釜山までの飛行時間は約1時間。

先日毛蟹の買い付けで北海道に行ったときは約2時間でしたから、釜山って近いな~


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あっという間に釜山に到着。早すぎて海外に来たという感覚がしません…


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韓国のエージェントと呼ばれる業者さんの車で、カニが保管されている冷凍倉庫へ移動します。

30分ほど車で走ると海が見えてきました!


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海岸にはロシア船籍が延々と連なっており、10階建てを超える大型の冷凍倉庫がいっぱいです。


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さすが国際水産物物流・貿易基地と呼ばれるだけのことはありますね。

釜山市の冷蔵保管能力が、144
万トンと言われているのも納得です。


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今回検品するズワイガニが保管されている冷凍倉庫に到着!


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中に入ってみると、忙しそうに荷物の積み下ろしがされていました。(カニではなさそうです)


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エレベーターに乗ってカニの検品をする11階へ。


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しばらく待っていると、冷凍庫の中からカニが出てきました!


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このカニは、ポディアポリスクという船の3Lサイズという規格です。

ロシア船の船長と船員がいたので挨拶をしてから検品開始!


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5L・4L・3L・2L・L・M・Hという規格ごとに、3~4箱ずつランダムに抜き取ります。


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まずは計量。


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ネット5kgの規格品なので、規定では解凍後に5㎏以上なければなりません。

ですが、陸上工場ではなく船上で漁獲しながら加工しているため、
作る船が違ったり、漁場が違ったり、または箱詰めする人によってバラツキが出てしまいます。

中には、解凍すると5kgを切る場合も…


◆ 内容量(ネット/グロス)について ◆
冷凍保管時の品質劣化を防ぐためにカニ表面にグレーズと呼ばれる氷の膜を意図的に付けています。カニとその氷込みの重さがグロス(総重量)で、解凍後のカニだけの重さがネット(正味重量)となります。一般的には10~20%ほどが目安となります。


それでは、中身を検品していきましょう!


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次に検品する項目としては…

サイズは揃っているか?、色目はきれいか?(冷凍の緩みなどはないか?)、身入りはどうか?
などを順番に細かく見ていきます。

中でも一番重要なのが身入りなんですが、一番難しい…。

サイズや色目はパッと見で分かりますが、身の詰まり具合と言われても殻の内側ですからね~。

カニは1年に1回脱皮するんですが、明確な時期が決まっているわけでもなく、
身の詰まり具合もそれぞれ個体差があります。

一般的には殻の色目や肩肉の盛り上がり具合を見ますが、生の冷凍状態は一番見分けが付きにくいんです。

試しに足を1本抜き取り、ハサミで切ってみると…


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写真の断面を見るとパンパンに詰まってそうですが、
生の冷凍状態は実物よりも良く見えるので、これまた具合が悪いんです。

身入りの悪いカニは水分を多く含んでいますので、解凍すると1~2割ほどやせ細ります。

続いて、食味検品。凍ったまま足肉の断片を口の中に入れます…


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身入りの悪いカニの場合は「かき氷」みたいな氷の塊を食べているような食感で、
身入りの良いカニの場合は「シャーベット」みたいに、ねっとりと口の中で溶けて、甘味が出てきます。

っとは言え、良し悪しの中間くらいのカニの判断が、非常に難しい。

今回検品しているカニは40トンまとめての入札となりますので、総額でいうと8,000万円くらい。

買うのか?買わないのか?いくらで入札するのか?


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最終手段として、カニの足と爪を数本ずつランダムに抜き取り、
事務所に持ち帰ってボイル&食味検品を行います。


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この一連の流れを、5L・4L・3L・2L・L・M・Hの規格ごとに行います。


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一般的にLやMの小型サイズは、身入りの悪いのはほとんど無いのですが、
5Lや4L・3Lの大型サイズは、良し悪しの差が非常に出やすいのが特徴です。

当店の黒箱は3L~4Lサイズ、赤箱は5Lサイズ限定で生産してますので、
細心の注意を払って検品しなければなりません。


一通り検品が終わり事務所に帰ろうとエレベーターに乗ったら、
同じビルの4階で助子(明太子の原料)の検品&入札会が開催されているとのこと。


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せっかくなので中を覗いてみましょう!


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フロアーに入ってみると、正面に日本と韓国とロシアの国旗が。


◆ 明太子の歴史と豆知識 ◆
明太子の歴史は朝鮮半島から始まりました。スケトウダラのことを明太魚(ミョンテ)と呼んでおり、そのスケトウダラの卵(子)なので「メンタイコ」と呼ばれるようになったといわれています。1800年代には刻んだトウガラシとともに塩漬けする方法が定着していました。これが辛子明太子のはじまりです。

日本の国内で消費される明太子の原料(スケソウタラの卵巣)は、その大半がアメリカとロシアからの輸入品ですが、そのうちのロシア船凍品のほとんどは韓国の釜山に水揚げされ、入札で競り落とされます。


検品開始時間の15時前になると急に人が集まってきました!


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検品会場に入るとビニールの手袋を渡され、
手前の容器に入っているタラコから順番に手で触りながら検品していきます。


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このタラコの入札は、1回あたり数億円にもなるということで、カニ以上にピリピリした雰囲気に包まれています。


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生ズワイガニのボイル検品をするために、エージェントさんの事務所へ…


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3階の事務所に入ると、大きな鍋とカセットコンロが用意してありました。


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早速、サイズごとにボイルしていきましょう!


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まずは5Lサイズ!


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うーむ、、、比較的いい感じですが、中には身入りの薄いのも混じってますね。


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一般の市販品レベルなら問題ないんでしょうけど、
カニ専門店の甲羅組の品質基準だとNGですね。かに職人として妥協はできません。


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食べてみましたが、やはり繊維質が細く水っぽい感じです。

決して不味い分けではないのですが、抜群に美味しいかと言われると、うーん、、、、


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続いてLサイズ。やはり大型サイズに比べて身の詰まり具合は安定しています。


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今回検品しているカニの漁場は、沿海州と西サハリンの間の海域で、3月下旬~4月中旬キャッチだそうです。



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一口にロシア産といっても、沿海州、西サハリン、東サハリン、マガダン、西ベーリングと、
いくつもの産地があり、漁期もそれぞれ異なり、それに伴って品質にもバラツキが出ます。

やはり5月~6月に漁獲する北オホーツク(マガダン)海域のカニが一番良さそうですね。

残念ですが、今回の入札は見送りましょう。


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とりあえず本日の検品は終了。

昼ご飯も食べずに検品してたのでお腹ペコペコです…


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キムチやナムルがあって、ビールと焼酎。まさに韓国ならではですね~。


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普段は最初から最後までビールオンリーの店長@田辺ですが、
せっかく韓国に来たので辛い韓国料理にぴったりの焼酎を飲みましょう!

日本でも「JINRO(真露)」でお馴染みの韓国焼酎ですが、
地元では真露から出ている「チャム真イスル露(略してチャミスル)」が大部分を占めています。


まずは、外はカリッと、中はもっちりしている定番のジャガイモのチジミから。


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続いて、辛そうで辛くない、むしろ甘口の豚キムチ。


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カリッと焼いたチヂミ風卵焼きも不味くはないんですけど、無難な優しい味付けですね。


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そして最後の〆は、見るからに辛くない海鮮チゲ。


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辛い韓国料理を期待していたのですが、見事に裏切られました。笑

このままでは寝るに寝れないので、繁華街をぶらぶら…


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ウイスキーは苦手だけど、ソーダ割にしたハイボールなら結構いけることが判明!

これで癒し系の井川遥さんみたいな店員がいたら最高なんですけどね~


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ちょっと飲みすぎたかな~(-"-) 気合を入れて検品2日目!


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快晴です。それでは検品する冷凍倉庫へ行きましょう!


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今日は「タラン」と「ビリガー」という船名のボイルズワイガニの検品です。

数量は20トン+20トンの合計40トン。


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ボイルも生と同じく、5L・4L・3L…とサイズごとに見ていきます。


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漁場は西サハリンで、4月下旬のキャッチ。なかなかの良品です。


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ボイルズワイガニで注意しなければならない点は、肩の入り数チェック。


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大体の目安としては5kg1箱につき、5L=約12肩入り、4L=約14肩入り、3L=約16肩入り、2L=約18肩入り
という具合になるのですが、なぜかボイルは選別の甘い船が多いようです。


◆ ズワイガニのサイズ表記について ◆
ロシア産ズワイガニの一番のポイントは他の産地に比べて大型サイズが獲れることです。アメリカ(アラスカベーリング海域)やカナダ(ニューファンドランド島周辺海域)のズワイガニのサイズは1肩あたり200g前後が平均で、大きくても300gまでなのに対し、ロシア(オホーツク海/沿海州)では250g~300gが平均で、400gを超える特大サイズも漁獲されます。当店では、オホーツク海の中でも特に大型サイズが多いとされる北オホーツクのマガダンと呼ばれる海域のズワイガニを原料として使用しています。

3Lとか4Lというカニの大きさを表すサイズ表記には厳密な基準がなく、製造工場や販売会社によって異なります。当店では業界で一般に使われている「マガダン規格」を基準に表記してますが、一番確実なのは1肩あたりの重量(g)を確認することです。


ロシア/マガダン規格
Mサイズ:1肩あたり150~200g (1箱5kg/約28肩入り)
Lサイズ:1肩あたり200~250g (1箱5kg/約22肩入り)
2Lサイズ:1肩あたり250~300g (1箱5kg/約19肩入り)
3Lサイズ:1肩あたり300~350g (1箱5kg/約16肩入り) ┐
4Lサイズ:1肩あたり350~400g (1箱5kg/約14肩入り) ┴→カット生ずわい蟹「黒箱」で使用
5Lサイズ:1肩あたり400~450g (1箱5kg/約12肩入り) ─→カット生ずわい蟹「赤箱」で使用

カナダ/アラスカ規格
5~ 8オンス:1肩あたり142~227g ─→カット生ずわい蟹「青箱」で使用
8~10オンス:1肩あたり227~284g ─→カット生ずわい蟹「白箱」で使用
10~12オンス:1肩あたり284~340g

※1オンス=28.3495g、1ポンド=453.592g


生と違い、ボイルは塩分濃度のチェックが重要なので、
足と爪を数本ずつランダムに抜き取り、事務所に持ち帰って試食をしましょう。


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北欧のバレンツ海で漁獲したズワイガニが入荷してきたので、急遽ついでに検品することに…


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まずは重量の計測。オホーツク海の規格は1箱5kg定貫が一般的なんですが、
バレンツ海では5kg、7kg、10kgなど様々。中には不定貫というややこしい規格もあります。

で、今回の規格は1箱12kg定貫です。。。


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中を見てみると、「こりゃあかんわ。全然ダメやね~」と一言。


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写真では分かり辛いですが、殻の色が薄茶色で傷もなくきれいで、
いかにも脱皮直後の身入りの少ない、いわゆる「若カニ」です。

少しこげ茶色のヤケ系といわれる「堅カニ」が理想なんですけどね。


3年ほど前からバレンツ海でのカニ漁が本格化してきましたが、
やはり品質のバラツキがひどいので、特に注意が必要です。


◆ 「バレンツ海」は第4のカニ産地となるのか? ◆
ズワイガニの世界的な産地といえば、ロシア、カナダ、アラスカが有名ですが、ここ最近になって北欧に面するバレンツ海でのズワイガニの水揚げが本格化しています。もともとはロシアが旧ソ連時代に食料不足解消のためにオホーツク海のタラバガニをバレンツ海に放流したのがきっかけで、20年ほど前からタラバガニが急激に繁殖。現在ではノルウェー産タラバガニといえば、アラスカ、ロシアに次ぐ第3の産地となりました。

以前からタラバガニがいるんだからズワイガニも相当いるのでは?と言われてましたが、漁獲→加工→輸出という流通ルートが確立していなかったため、なかなか商業規模にまではなりません。ところがロシア/オホーツク海の密漁防止協定に日本が調印して状況は一変。今まで非正規枠(密漁)で日本に入っていたズワイガニがほぼゼロになったのです。

数量でいうと年間数万トンと言われています。カナダもアラスカも資源保護のため年間の漁獲枠が決まっているので、この規模の不足分を補うことは到底できません。今までカニを漁獲して日本に売っていたロシアの漁師も、操業しないと船舶やクルーの経費が払えません。しょうがなしに、オホーツク海から遠路はるばる北欧バレンツ海まで船を運んで、本格的にズワイガニ漁が行われるようになったのです。

本格的にカニ漁が開始された1年目、予想以上に大型で良質のズワイガニが水揚げされました。品質はどうなのかと不安もあったので市場での相場も割安だったこともあり、一機にバレンツ海産のズワイガニ人気が広まりました。ところが2年目になると、カニのサイズが急に小さくなり、身入りの悪い粗悪品もかなり混じり始めます。「乱獲で資源がもう少ないのでは?」「漁場が広すぎてカニ生育状況の把握ができない」「いわゆる素人漁師が金儲けのためだけに漁獲している」などなど、いろんなウワサが業界に蔓延しています。

当たり外れのない高品質の商品を販売するためには、原料の選定が一番重要です。漁獲量は年間1万トンほどあるバレンツ海産のズワイガニですが、まだ歴史が浅く品質にもバラツキが多いので、現時点(2016年)では当店の正規品カット生ずわい蟹(生食OK)には使用しないことにしました。


事務所に戻り、ボイルと生の試食検品。


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オホーツク海のボイルズワイガニは、そこそこの身入りで塩加減もちょうどよく合格点。

バレンツ海の生ズワイガニは…


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予想通り、身入り50%くらいのものが混じっている若カニですね。

今年のバレンツ海のズワイガニは、
このような粗悪品が安値でかなりの量が流通していますので、
くれぐれも注意が必要です。



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帰りの飛行機の時間が迫ってて、
昼ご飯はカップラーメンのみ…


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今回のロシア産ズワイガニの検品を終え、改めて原料の把握が大変重要だなと痛感しました!


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これからも良質のカニを求めて、店長@田辺の買い付けの旅は続く…










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