10th Anniversary
aranciatoとCHRISTIAN PEAU

そう語るのはCHRISTIAN PEAUのデザイナー小池氏。 確かな技術、センス、そして革との向き合い方。各方面から支持されているCHRISTIAN PEAU。 革の選定や塗料、デザインそれぞれの分野において深く専門的な情報を止め処もなく話してくださいました。 そしてその工程ひとつひとつの裏側には、作り手のプライドや革として使う動物の生き方を尊重する姿がありました。
- まず、革の選び方からCHRISTIAN PEAUは違う。
- Q.どのような素材選びをおこなっていますか?
- 革を探しに世界中を周り動物たちが飼われている環境や育てられ方を調べ吟味し見つけています。エチオピア、バングラディシュをはじめどこでも行きます。一般的に生産されるレザーアイテムはキズの付いてない部分だけを使い残りの部分は、別のものにしてしまうことが多いですが動物一頭全て使います。傷があるところも、アザがあるところもすべて。
- 革そのものを長く愉しむための言わば「補強」のような加工に重点を置き、塗料も選んでいます。ここでも世間と比べると差があります。この加工段階では、一般的には大半がキズを隠し磨かれキレイにされていきます。最初はいいかもしれません。買うとき手にとってキレイなのが伝わりますから。でも、革の醍醐味である経年変化はこの加工をすることで出来なくなります。2、3年後、加工ひとつでその差は歴然です。
- 次に待つのは染色―
- 染色技術者と念入りに話をし、研究をしながら染めていきます。扱う革によって完成を左右するため同じ種類・同じ場所で育った牛でも塗料がのりやすかったり何をやってもダメな時などそこにも差があります。染料はこれも選び抜いたドイツ製のものを愛用しています。
- 革を選ぶ際に、この革を使いたいと思う感覚はどんな感覚ですか?
- よく使う革にヌメ革がありますが、ヌメ革というのは年月が経てば経つほど深みが増す。だからあえてそういう経年変化が楽しめる革を、ヌメ革のもつ表情を味わえるものを選びます。シボがキュっと締まっていたのが、時間が経つにつれて開いたり寄りはじめたりとかね。革がつくる経年変化は自然が生んだ美しさがありますね。
- 毎シーズン取り扱う色の風味が変わる印象がありますが、どういう流れで決められていきますか?
- お客様のリクエストで決めたりですね。または染料屋側から持ってきたりする。だいたい2シーズン前くらいから選んでアイテムを考えますね。
- 頭の中に、完成アイテムのイメージがあってそれに合わせた革選びをしますか?それとも革を見てから、これはこのアイテムで使いたいといった選び方をしますか?
- 両方あります。
- 丹精こめて作ったアイテムが、自分の手元から離れ売れていく時はどんな感情が湧きますか?
- 嬉しいです。やっぱり。でも自分が気に入って手放したくないものがすぐ出ていくときは寂しい気持ちもどこかしらあります。ただ、作り手のモチベーションがお客様に伝わってそれが結果として出ているので「やっぱりな」という手応えを噛みしめることが多いですよね。直結してるのだと思います。最初から自信あるモノや、出来の悪いやつを何回も何回も染めや加工をやり直しして完成したもの…。革は生き物なのだから作り手は誠心誠意込めて時間と手間をかけて革製品を扱うことが必要だと思いますね。そういうのがすぐに売れていくのを見ると、やり甲斐も感じられるし。
- 革の歴史とCHRISTIAN PEAUはどう関わっていきたいですか。
- CHRISTIAN PEAUの「ポー」はフランス語で「skin/皮膚」という意味があります。そして洋服は欧米の文化です。クリスチャンということで「欧米の文化を身につける」という意味を寄せています。セカンドスキンという感じですね。
- まだCHRISTIAN PEAUというブランドを知らないという方に、伝えたいことはなんですか?
- 売るためにではなく、革を活かした物作りをしています。最初はわからないかもしれません。でも2、3年後の経年変化の醍醐味がある。毛穴の状態や、ツヤなどがもっとも魅力になる時が必ずやってくる。その過程において革というものは嘘をつかない。ありのままの革を使っているからこそ、そう言うことができます。
革は生き物で自然のもの。付いてしまう傷や跡やシワは動物たちの個性や魅力を引き立てる声のひとつ。そんな証を小池氏は真摯に受け止め活かしているのだと思いました。小池氏は何度も「百貨店などに陳列するものは、確かにキレイだけど味がなくなるんですよね」と言った。革を単なる素材としてでなく、その歴史や背景などのドラマを理解しているからこその言葉なのだろう。全てが一点物であり、そして完成に至るまでに革と職人たちの技術、そして私たちがモノを手にした後の経年変化、これ全てを味わえるのがCHRISTIAN PEAUの最大の魅力であり、人気の秘訣なのだと感じました。