アピストグラマ


日本やヨーロッパで人気の南米原産の小型のシクリッドです。オスは体側や各ヒレに美しい色彩を持ち、主にブラジル、ペルー、コロンビアから輸入されるワイルド個体、海外でブリードされた美しい品種が流通します。
未記載種を含め非常に多くの種類が知られる点や、バリエーション豊かでコレクション性が高い点、小型水槽でも飼育・繁殖が楽しめることから、古くから多くの愛好者がいます。



アピストの飼育というと熱帯魚上級者のようなイメージがありますが、いくつかの注意点を知っていれば簡単に飼育が楽しめる種も多く存在します。

アピスト飼育の注意点
・オス同士だけでなく、ペアでも争う事がある。基本はペアで飼育し、十分な隠れ家を用意する必要がある。
・弱酸性の水質を好むのでソイルやピートを使用し、水質を調整する。



アガシジィグループ
・アピストグラマ・アガシジィ
・アピストグラマ・プルクラ
・アピストグラマsp.ウィルヘルミ など
アピストグラマの中でも最もポピュラーなグループです。スペードテールやラウンドテールを持ち、アピストグラマの中でも飼育が容易な部類に入ります。
カカトイデスグループ
・アピストグラマ・カカトイデス
・アピストグラマ・ユルエンシス
・アピストグラマsp.ロカフェルテ など
大きな口が特徴的なグループで、別名ビッグマウスグループとも呼ばれます。ペルーを中心に生息し日本の水でも飼育しやすいグループです。強面な顔つきどおりオス同士では気が荒い部分を見せますが、繁殖は容易で子育て上手といわれています。
ナイスニィグループ
・アピストグラマ・ナイスニィ
・アピストグラマ・パンドゥロなど
広義的にはカカトイデスグループに含まれる事もあります。カカトイデス同様に、大きな口を持ちます。ラウンドテールを持つ種が多く、メスはパンダのような特徴的な斑紋が顔に見られます。
マクマステリグループ
・アピストグラマ・マクマステリ
・アピストグラマ・ホングスロイ
・アピストグラマ・ホイグネイ など
やや体高のある丸みのある体型が特徴的なグループで、オスの尾ビレの上下に赤い模様を持つ種が多く見られます。コロンビアのオリノコ川を中心に生息し、弱酸性の低いpHを好みます。
ペルテンシスグループ
・アピストグラマ・ペルテンシス
・アピストグラマ・イニリダエ
・アピストグラマsp.ロートカイル など
細身の体型と大きな背ビレが特徴的なグループです。オリノコ川、ネグロ川を中心に生息し、弱酸性の低いpHを好みます。独特の姿から愛好家に人気のグループですが、ケンカが激しく、産卵には低pHの水質が必要だったりと、育成の難しい種が多いです。以前はイニリダエやロートカイルを含みましたが、近年では別グループとされることもあります。
ビタエニアータグループ
・アピストグラマ・ビタエニアータ
・アピストグラマsp.ディアマンテ など
やや細身の体型とライヤーテールの尾ビレが特徴的なグループです。特にビタエニアータは産地ごとのバリエーションが見られるため、非常に人気の種です。飼育自体は容易ですが、次代では性比に偏りが見られたりして累代維持の難しいグループです。
トリファスキアータグループ
・アピストグラマ・トリファスキアータ
・アピストグラマsp.リオマモレなど
良く伸びる背ビレとブルーの色彩から人気のグループです。アピストの中でも古くから知られるポピュラー種で、ブリード個体も多く流通します。またブリード個体の色彩に差が少なく、安定した品質をもちます。
クルズィグループ
・アピストグラマ・クルズィ
・アピストグラマsp.ナナイ
・アピストグラマsp.ペバスなど
ペルーを中心に生息するグループで、近年になって多くのタイプが輸入されるようになったグループです。エウノータスやモアエといったグループを含むのか、まだまだ体系がまとめられていないグループです。“sp.ナナイ”、“sp.ペバス”といった美しく魅力的な種が多いです。
レガニグループ
・アピストグラマ・レガニ
・アピストグラマ・ピアウイエンシス
・アピストグラマ・ルブロリネアータ
アピストグラマの中でもころっとした体型をもつ可愛らしい種が多いグループです。飼育自体は容易な種が多いものの、地味で判別の難しい種が多く、まさに本グループを極めた人こそ真のアピストグラマファンと呼べるでしょう。
その他のグループ
・アピストグラマ・ボレリー
・アピストグラマsp.マウスブルーダー など
上記グループに属さない独立した種類です。

*アピストグラマのグループ分けは不明確な点も多く、今後の研究で変動する可能性もあります。


基本はペアで飼育
アピストグラマはオス同士はもちろん、ペアでもケンカをします。オス同士のケンカはヒレを盛んに広げるフィンスプレッディングを見られますが、ヒレが傷ついたりします。また、産卵前はオスがメスを追い掛け回し、発情したメスは産卵後はオスを激しく追い回します。流木や水草など、十分な隠れ家が必要です。
ろ過能力より水質の維持
アピストグラマは強い水流は好みません。水質の悪化には十分注意が必要ですが、急激な水換えでpHが上がってしまうのもよくありません。弱酸性のpHを維持できるソイルでの飼育がオススメです。少々コケの生えたようなこなれた水での飼育が適し、フィルターはスポンジフィルターで十分です。

スポンジフィルター

ソイル
難種の飼育は機材でフォロー
難種と呼ばれるアピストの飼育で重要なのはpHを低く抑え、硬度も極力低い環境です。硬度を下げるためにはRO水を使用するのが有効です。またTDSを低く抑える事も重要なので、TDSメーターは欠かせないでしょう。生息地の環境をより再現するためにもピートやブラックウォーターなどの調整剤も有効です。

RO浄水器

TDSメーター
エサの与えすぎはダメ
沈降性の人工飼料であれば問題なく食べてくれますが、古いエサではエロモナス症にかかりやすいので注意が必要です。またエサを与えすぎると体型を崩しやすいので、少なめにこまめに与えるのがコツです。手間はかかりますが、沸かしたてのブラインシュリンプをふんだんに与えると色も揚がって美しい発色を見せてくれます。

ブラインシュリンプ


アピストグラマはケーブスポウナー(洞窟産卵)といわれるとおり、流木やシェルターの陰に産卵します。

ペアの相性にもよりますが基本的には産卵後メスが積極的に子育てを行い、オスも子育てに参加する場合があります。

しかし多くの場合は、産卵後メスはオスを激しく追いまわし、場合によっては殺されてしまう事もあるので、必要に応じて隔離する必要があります。
まずは繁殖に適した水質の準備が大切です。
ペルー原産の種類は日本の中性付近の水質でも発情までいたることが多いです。
オリノコ川、ネグロ川に生息する種は適切な水質の準備の必要です。pH5以下の硬度が0〜1程度の超軟水を用意する必要があります。軟水の作成にはマジックリーフやピートの使用が有効です。

そして発情したメスが重要なポイントとなります。発情したメスは全身を黄色く染めて、積極的にオスにアピールします。適切な環境を用意し、メスを発情させるまでが重要なステップです。
ペアの絆を強くしメスの発情を促すためには、当て馬になる小型魚を入れておくのも1つの手です。

稚魚は自由遊泳を開始するまでは親魚に任せてしまっても問題ありません。
稚魚は沸かしたてのブラインシュリンプで問題なく育成可能です。

マジックリーフ


発情したメス



リーフプロソイル

隠れ家・シェルター

浮き草

水草

ブラインシュリンプ孵化器