REAL FUTEBOL GUIDANCE

ジュニア、フットボール育成についての考えかた、方針。
それぞれの立場で今感じていること。

湘南ベルマーレフットサルクラブ監督・奥村敬人
ブリンカールサッカースクール代表・古居俊平
アグレミーナ浜松監督・豊島明
対談 2019.12.19
2006年にFUTSAL SHOPとして産声をあげたRODA。
OPENした当時、僕は26歳で周りの友達も同世代、夜な夜なフットサルをやってはあーでもないこーでもないとフットサルを独学で楽しんでいた時代。当時は皆がプレイヤーだった。
あれから14年。気づけば結婚して、子供が2人出来て、自分も蹴るし、子供も蹴るし、という環境に周りも皆なってきている。
僕たちが小学生のころの環境とは全く違うこのFOOTBALLを取り巻く世界。
SNSからは死ぬほどFOOTBALL情報は流れてくる。
あーしたほうがいい、ここのスクールはいい、ここはだめだ。。。。
情報に翻弄された親が決めた先で本当に子どもたちは蹴ることを楽しんでいるのだろうか?
どーすればいいかなんて答えは誰も分からない。
だけど分からないなら、REALな現場の最前線にいる人に聞いてみよう。
それこそが本当に生きた情報。
僕、RODA創設者の鶴見が司会、進行をさせていただくなか
昨年の バーモントカップ(JFAバーモントカップ第29回全日本U-12フットサル選手権大会)で優勝したブリンカールサッカースクールの代表 古居氏
神奈川フットサル界のレジェンド P.S.T.C. LONDRINAから現在は湘南ベルマーレフットサルクラブの監督を務める 奥村氏
元フットサル日本代表の経験を持ち、我々と同世代で2児の父、現アグレミーナ浜松の監督 豊島氏
FOOTBALLとFUTSALを熟知した3人がRODAのために、、、
同じ悩みを持つ我々世代のために、、、
語ってくれた”生きた”言葉。

Table of Contents


ジュニアの育成についての考え方、方針

RODA鶴見
それではそろそろ始めさせていただきます。
ジュニアの育成について、古居さんは経営者としてもやられていますよね。
奥村監督、豊島監督は組織の中での監督という少し離れた現場にはなるかと思いますが。
それぞれ違った立場からの、ジュニアの教育に対する考え方、方針をお聞かせいただけますか? まずは奥村監督から、いかがでしょうか?
奥村監督
小学生のフットサルの育成クラスがあって月に4回、これしか私は携わってないんですが、そんな中でジュニアのフットサルには実は興味があります。
自分の教育方針というか、考え方としてはブラジル、ストリートサッカーの文化。そういった部分をすごく参考にしています。子供たちが大人とか年齢関係なく一緒にサッカーをして、その中でやられながら、泣きながら、くらいついて学ぶようなスタイル。3年生から6年生で一緒にやっているんですよ。(フットサルの練習を)
やっぱり3年生はやられて泣きながらとか、でも何とか食らいついて。一方6年生は簡単にやれちゃうけど、その中でうっかり3年生にとられちゃうシーンがあったりもして。
そういう環境を用意したところで色んなアプローチをしていくような育成を打ち出してやっています。
RODA鶴見
我々の少年時代でもあったような光景でもありますよね。公園で蹴って遊んでいると周りから色んな年代の子が集まってきて。
奥村監督
逆に僕の年代とかの環境だと、各年代でしっかり別れちゃっていて、あまり上の年代の人とやる機会がなかったですね。だから逆に上手い選手とかがそこで天狗になってしまうような風習もありました。
自分よりもっと上手い選手とやって、まだまだだなっていうとこを体感しながら、どんどん吸収していく、そういうスタイルがいいと思います。
RODA鶴見
ある程度精神的にも成長した年代の子供達でも、例えば4年生あたりの子たちでも、気持ちというか感情は出してくるものですか。悔しくて泣いちゃうとか。
奥村監督
ありますね。僕が受け持つ育成クラスではそういうなかで(各年代一緒にプレーするなかで)球際もバチバチでやって、狭い中で個を活かす。まず個があってスペースをどう活かしていくか。ボールの置き所、その中で2人の関係性があったりするところ。あんまり戦術にはめ込むようなことはしないで、1人、2人の関係の中だけで崩していくようなところを教えています。 ブラジルなんかでは2年生とかで4-0のかたち(クアトロ・ゼロというフットサルのボール回しの戦術)で崩している映像を見かけたりします。もちろんブラジルの中でもトップ選手たちがそういった感じだとは思いますが。 どこまでやっていいのかっていうのは正解はないと思います。
RODA鶴見
そうですね。豊島さん、どうでしょうか?
豊島監督
今はトップカテゴリーを受け持っていて、育成からは離れてしまっているので育成年代の現場に立つのはごく稀です。
ただ基本的な考えはケイトさん(奥村監督)がおっしゃったとおりです。
年代にもよりますが、その組織がチームなのかスクールなのかでやることは変わると思います。チーム化していない組織で戦術とかをやってもしょうがない。決まり事とかそいうのをそこまでやっても。
フットサルを教えていてもやっていることはフットボールであることは変わらないので、基本的には個で局面を打開したり、パスの選択を自分で出来るようにならないと、ロボットみたいになっちゃうので。がっちり戦術にはめてどうこうというのは、自分がジュニアの育成の現場に立っていたときはやらなかったです。
まだフットサル専門でやっている子達は少ないです。自分の実感では8割、9割はサッカーと両立してやっているような状況でした。フットサル専用の練習というよりは、サッカーで活かせるような狭い局面での状況設定をつくって判断力を養うトレーニングを連続して行う。そしてゲームに活かす。そういった形で取り組んでいました。
もちろんそこの組織にチーム性があれば、そこに戦術をはめ込むというのも面白いアプローチになります。ただ、自分のジュニア育成現場ではチームではなかったので。
RODA鶴見
チーム監督という立場のお二人にお話しいただきました。ありがとうございます。
そうしましたら、スクールという立場から古居さんお願いします。
BRINCAR古居代表
僕らは基本サッカースクールとして運営させてもらっています。カテゴリは3歳から15歳までの間。
自分の経験のなかでのサッカーというものの位置づけですが、人生、生活を豊かにしてくれる側面がすごく多くて。お金とかそういうものではなくて。子供たちにもサッカーの楽しさ、本質的にどう楽しいのか。これを伝えたいです。
自分が一番やったことへの達成感だったり、自分が成長したという経験が非常に大事なもので。そういったところで、子供たちには個の追求というのがベースです。楽しさを追求するために、個を伸ばす。だから僕らは一番最初にくるものが楽しさ。なにをやっても楽しくというところを。苦しくても、辛くても、最終的に楽しいというものにつなげるにはどうすればいいのか。例えば、練習にドリブルをたくさん入れたりとか、もしくはリフティングをやったりだとか、サッカーの一つ一つの要素を取り入れて。楽しさがどんどん連続していき、子供たちがもっとこうなりたいとなっていく中で、僕らはどんどん新しいものを提案していかなければなりません。レベルやカテゴリがどんどん変わる中で、いろいろプラスアルファして形にしていくようなものですが。
最初はサッカーというものはボール遊び、ということから始まり、そこから、こいつと一緒にやっていて楽しい。上手い人と一緒にやって楽しい。誰かと一緒にボールを蹴って楽しい。サッカーというものを通じて集まれる、一つのコミュニティのツールとしては最高で、そこを僕らは大事にしています。サッカーを教えているっていうのも、こういうことやっていると楽しいんだよ。こういうことやっていると友達も増えていくよって。
そういうのが続いていって、最終的には社会人につながっていくなかで、自分が夢もって、目標もって、どういう風になりたいのかというようなすごくポジティブな考え方の出来る子供たちが育っていくのかなと。サッカーをうまく使いながら彼らの成長を僕らが促していくという形で取り組んでいく。 ということで、個人の追求、1対1をそこで仕掛けて抜く、点とる、守る、サッカーの原理原則のしっかりゴールを守って攻めるっていうのをより追求した中で伝えている感じです。
RODA鶴見
みんな学校ちがうんですよね?一緒の子もいる?
スクールを通じて、サッカーを通じてやっぱりみんな友達になりますか?
BRINCAR古居代表
学校は一緒の子もいて、違う子もいます。
友達になって、そして小学校から中学校に上がるわけで、そこにスクールに入ってた子がいたり、またそっから高校に行ったらそこにも一緒にスクールにいた子がいたりだとか。
ブリンカールという場所でみんなサッカーを学びに来てるだけだったはずなのに、自然と色んな違ったところも自分の世界観が広がっていって、コミュニティが広がって、最終的には、大きくなった今でも友達同士あって遊びにいくとか。お母さんたちも含めて飲みにいったりだとか、そういうつながる場所にもなったりしているので。サッカーというのを通じて、いろんなものを彼らは成長する中で得ているかなと思います。
ただ、競技性が上がって競争がでてくるので、いろんな苦しいものにもぶつかります。(メンバーに)選ばれる、選ばれない。(試合に)出れる、出れない。上手くなる、ならない。というところが始まってくるので、そこがなかなか難しいところではあります。競技性が上がってくればくるほど。
RODA鶴見
個人が競争していて、でもその中でみんな楽しもうとしている、
クラブとしては楽しんでくれというスタンスをどう伝えますか。
BRINCAR古居代表
これはできた時の達成感になります。
うちでいうとクラスが変わってきたりするので、自分が評価されて上に上がったとか。いつもコーチと会議していて、こいつ今頑張っているよって話になったら、別にそれが定期的でなくても、じゃクラス上げてあげてトレーニングさせてあげたり、日ごろ頑張っていることを評価してあげる。それが上手い、下手ではなくて頑張っていることを評価してあげる。上にあげて、その子がそこでモチベーション高くトレーニングしてその子がまた自分のカテゴリに戻った時には、そのモチベーションのままやることで周りの子が影響を受けて頑張ってやってくれますので。
10対0で勝つ試合と、1対0ギリギリ、アディショナルで入れるような試合と、どっちがっていうのでいくと、やっぱりそっちのほうが喜び、達成感が違うので。そして、なるべくそっち側をどう作るかっていうのが大切ですよね。どう真剣になるか。
僕ら楽しさって言ってますけど、真剣にやらせることをまず求めているので。楽しくワイワイやることではなくて、真剣に勝つためにどうするか。負けた時の悔しさというものは相当なものにはなりますし、逆に勝ったときは相当うれしい。そういうのを連鎖してつなげるようにしています。

保護者のオーバーラップ感

RODA鶴見
子ども自身のそういう気持ちとは別に、保護者さんのオーバーラップ感みたいなものを最近聞いたりするんですが。前のめりになってしまって子供以上に親の気持ちが出ちゃうような話が。
そういうのってありますか?
BRINCAR古居代表
めっちゃありますよね。
奥村監督
ありますねー。やっぱね。
子供がプレーする度に親の顔を見ちゃうとか。親の評価を気にしちゃっているというか。家帰ってなんか言われちゃうとか。帰りの車中で言われちゃうとか。ていうのはあるんだろうなって。
BRINCAR古居代表
そうですねー。間違いないですね(苦笑)
RODA鶴見
何か伝えたりすることはあるんですか?そういうお子さんに。
BRINCAR古居代表
うちは保護者に説明します。
特にフットサルの全国大会にいくような保護者に対しては必ず保護者説明会でスポーツメンタルについてお話します。
奥村監督
ロンドリーナに関してもそれは必ず阿久津がやっていますね。
(※阿久津氏:奥村氏と同じく神奈川フットサル界のレジェンド、現在は湘南ベルマーレフットサルクラブGKコーチ/ロンドリーナU-15ヘッドコーチ)
BRINCAR古居代表
阿久津さんはもう徹底していますよね。子供に対してそういうことを言う人は言動をやめさせますもんね。
奥村監督
ほんとにそうですね。もう徹底して。
BRINCAR古居代表
うちも結構その話はすごく取り組んでいて、結局はすべて親のためにやっているのではなくて子供たちのためにやっているので。
プレーヤーズファーストでやるために子供たちの自発性と、成長する機会を奪っちゃいけないと思ってるので。保護者の方にはこういった心がけをしてくださいと言っています。
親と子供と指導者、三者が理解をしっかりしないと、子供たちが成長できないと思っています。
話はするんですけど、そこはでも、それでも(難しい)ですね。(苦笑)
今年説明したのは、怒りのプロセスだけは覚えてください、と。なんで怒るのかということを自分たちで理解して、なぜ怒ってしまったのかと立ち返ってもらって、その数が10回怒っていたのが5回くらいになれば子供たちのためだし、それが1回でも減るならいいなと思っています。
逆に今は、親に怒ってもいいよって言っています。親もストレス社会で生活していて子供に期待をすごいかけているわけで、自分が依存していることを気が付いていない。それで怒らないでと言ったところで、そんなの無理な話でしょ。怒るでしょって思っちゃうから。だから怒ってもいいと思います。そのほうがもっと気が楽になってお母さん達も楽しく。怒っちゃうから見に行くのヤダ。なんてなったらそれもそれで面白くないし。
理想ではありますけど、世の中に出たら厳しい世界があるわけで、その中でやれるやつがほんとのいい選手でもあるなって思いますし。ここは僕の中で前とは考え方変わったとこですね。前は絶対言うなと言っていました。
RODA鶴見
なぜそのようなシフトチェンジをされたのですか?
BRINCAR古居代表
“楽しさ”ですねやっぱり。
僕らだけ楽しむではなく、子供たちが楽しむ、そして親も楽しまなきゃいけない。みんなが楽しまないと。
親が楽しむ姿をみて子供が喜ぶといったところがあるので。なので僕ら指導者は親も規制しすぎちゃだめだなと。言うことは言うんだけども、その数が減っていけばいいなと。
やっぱり子供に対して依存しすぎないことですね。他人が物事をやらなくても何も思わないけども、恋人、家族、親族になればなるほど期待は上がり対価を求めすぎてしまうから、所有物になってしまって。自分がこんだけ送り迎えしてやっているのに、練習やったらふざけているみたいな。当然怒るわけですよ。他人の親は何とも思わないんですよ、楽しそうだなって。
親にはこんな説明をしていて、だから怒っちゃうと思うんですけどって。そんだけやったから、こんだけ返してくれっていうのは自分のエゴだから、そこは少しでも喜びがかえってきたらオッケーと思って喜んでくださいと。そっちを見るんではなく出来たことを喜びましょう。リフティング5回出来てもすごいって思ってほしい。絶対100回出来ないといけないと思わないで。そんな風に思ってます。

南米フットボールの体験について

RODA鶴見
ちょっと角度を変えさせてもらって
皆さん南米(のフットボール)を体験されてると思うんですけど…
BRINCAR古居代表
おれ、だいぶ前だな(笑)
お二人のほうが詳しいかな。
奥村監督
自分アルゼンチンすね。
RODA鶴見
実際どうですか?教育とか育成のところ。
チラッと覗いてきた感じどうとかありますか?体験されてきたりとか。
奥村監督
いや、クラブの子供たちの指導ってのはそんなには見てはこなかったですが、思ったことはあります。
アルゼンチンとかって子供の育成はベテランの指導者、おじいちゃんみたいな方がやっているって話は聞きました。日本だと選手とか若い人がスクールとかやっているところで、何か、こう、すべてを解かっているような。
そんな話を聞いて、僕も子供たちと接するときは、自分がその年代の時どうだったかというのを考えるようにしていて、4年生の自分どうだったかとか、どういう気持ちでサッカーやっていたとか、コーチに指導されてどういう気持ちになったとか、そういうのをすごく意識するようにしていて。アルゼンチンの優しい感じのおじいちゃんが子供の心をつかみながらやっているのかなと思ったりして、もちろん全部が全部ではないと思うんですが。そこはすごく自分の中で意識しているとこがあって。どんなプレーしてもチャレンジしたらほめるし、泥臭くスライディングで足のつま先で触ったプレーをとにかく人一倍褒めるとか、そういうことをすようにして、親御さんたちもすごく夢中になって見てくれている。その育成クラスというのを共に楽しんで見てくれている。先ほど“真剣に”と言われていましたけれど、本当に真剣に夢中になってその時間を一緒に楽しんでくれている印象があるので。
アルゼンチンでのそういったもの、子供の心をつかむというところを参考にしているかなと思います。
RODA鶴見
生活にフットボールが根づいている感じが全然ちがいますよね。
奥村監督
そうですねー。まあどこでもボール蹴っていますもんね。道端でもそうですし。
今はどうなんですかね。ぼくがいっていたとき、ストリートサッカーやっている横でドーベルマンが走っていたりとか(笑)ドーベルマンが野良犬なんですよ。逃げながらやっていたりしていましたね(笑)しかもボッコボコのグランドで、かといってボールタッチもままならないところで思いっきりカニばさみスライディングタックルしたりとか、それを予測しながらよけていったりする中で、予測力とか、もちろんボールの扱いもそうですし。
日本ってやっぱり恵まれていて、ピッチとかも綺麗でみんな足技上手いけど、詰められた時にどうしても引いてしまうというか。そこを逆に行くんですよね。来られたら更に行く。そこのメンタリティはすごい。阿久津とかに言うのは、ボコボコのグランドつくってそこでやればいいじゃないかって(笑)
(一同笑)
BRINCAR古居代表
いやいや(笑)無茶苦茶キレイだからうちは(笑)
(ブリンカールのグランドは)とにかくキレイなんですよ(笑)ゴミが一つも落ちてない(笑)
(一同笑)
奥村監督
イレギュラーしたボールを処理しながら相手が来ているのを見るとか。手を使うとか。そういうところの能力は全然違うなと思って。
もっと言うと子供たちがサッカーでプロになって親を助けるとか。そういうメンタルでやっているから、そこのベースが全く違うんです。そこのサッカーに対する人生のかけ方が違うから。こいつボールの扱い下手だなってやつでも試合になったら上手いですよね。日本でそうなるっていうのは難しいですけどね。
だからボコボコのグランドで(笑)ガチガチにやったほうがいいんじゃないかなって。(笑)
BRINCAR古居代表
言っちゃいけないっす(笑)そこ一番金かけてやっているんで(笑)
(一同笑)
RODA鶴見
さっきお話にありましたが、それこそアルゼンチンの子供の親もプロになってくれっていう感じで言っているんですかね?それで期待かけてプロになれなかったら…
奥村監督
まぁ、あると思いますよ。
本当に、今日は練習したけど、次の日は来なくていいよっていう、子供でもそういう世界があると思うので、まあ、ある意味慣れている、普通になっているので。
RODA鶴見
その子はやめちゃうんですかね。サッカー。
奥村監督
いや、他の下のリーグでチャレンジしたりとかですね。一緒に練習してたやつが、次の日トップレベルの試合に出ているとかは普通にあることなので。
RODA鶴見
サッカーをやめる選択肢っていうのは無いんですかね。向こうの人たちは。トップいけなかったらやめるみたいな。
奥村監督
んー。でも生涯サッカーなんですよ、やっぱり。
こう、おじいちゃんがビール飲みながら。休んでビール飲んでそのあとサッカーをやってみたいなのが普通にあるし、サッカーの楽しみっていうのをみんなが分かっていて、だからこそ本気になっておじいちゃん同士が喧嘩しているとか。
楽しんでいますよね。応援する人も。自分が相手に対してこう言ったら怒るだろうなんて予想しながら変なこと言ったりとかもするし。相手がキレてくれたみたいな。で、その選手がプレーをミスしたらサポーター心理からしたら狙いどおりじゃないですか。だから選手たちもそこを気にしないようにしなきゃいけないし。僕もライン割ったボールを取りに行ったら30人位に唾ひっかけられたりしました。ほんとに。だけどそこでニコって笑ってスローインしたりありましたし。そういった駆け引きが常にあるなって。それで、子供もみちゃってるんで、そういう親を。子供もやっちゃいますよね。だから、そんなところも参考にしてます。子供は大人の真似をするので、接し方は気をつけるようにしています。
RODA鶴見
豊島さんもブラジルでいろいろな経験されていますよね。
豊島監督
そうですね。南米はその辺がシビアになるから、もう子供のカテゴリから。
自分は18歳で行ったけど、次の日チームメイトがいないとかはざらだし、そのチームに所属した瞬間からもう始まっているので。削りあいというか。そういう環境がそこにあるので。そこで出来なければ下のカテゴリに行くだけであって、できる奴はどんどん年齢関係なく飛級していって、それこそプロになっちゃうとかいう世界がそこにありますね。
サッカーの先進国だったりすると南米と一緒で、次の日違うカテゴリでプレーしていたり、違うチームにいるっていうのはざらにありますよね。
育成環境など含めて日本とは大分かけ離れた世界がそこにあるので、一概には何を取り入れて、何がダメだというのは言いづらい部分があると思いますが、フットボールがビジネスとしてそこに存在しているからこそ一人の選手に力を注ぐ、できる選手に対してはその熱量も半端ではないものがあって、それが子供の頃から始まっているので、ちょっと日本とは規模感が違い、一緒にはできないかなと思います。

フットボールの原理原則について

RODA鶴見
さっき古居さんのほうからチラッとフットボールの原理原則といった言葉が出ていたんですが、
海外だとはじめからそこがベースにあるようなお話をよく聞いたりするんですが、日本のフットボールシーンの中において、原理原則みたいなものはどういったタイミングで備わっていくものですか?子供がボールに触れた先に。
BRINCAR古居代表
原理原則は大分難しいんじゃないですか。そのとらえ方を含めていくと。
海外とかは文化として染み付いていて、スポーツが自分たちを豊かにする生活の一部になっているので。スポーツが周りにあふれているような感じですね。みんなで楽しむ、みんなで一緒に共有する。応援する。歓喜する。悔しがる。それをするにはどうするかというのがよく見てるから分かっている。
日本人はやっぱり、特にフットボールの原理原則に関しては難しいと思います。原理原則を教えているって人はそんなにいないんじゃないですか。もしかしたら。
RODA鶴見
それは勝手に備わっていくようなものですか?
BRINCAR古居代表
いや備わっていないんじゃないですかね、日本だと。備わってないのと、なかなかそこを伝えきれていないからダメな部分もあるかもしれないです。ある意味軟弱というか。勝ち負け、点とるか、とられるか。そこの原理原則をより追求しているのか、そこをちょっと目を背けて、ただ楽しい、ただ出来たことだけを称賛するのか。いいサッカーをして負けたらオッケーなのか。いいサッカーをしなくても勝てばオッケーなのか。
いいサッカーをしなくても勝てばオッケーなのが海外だから。基本的には日本はどちらかというとそのプロセスを美化しがちなので。日本人がどれくらいちゃんと理解できてフットボールを落とし込めているかという難しい部分があると思います。
みんなそこは色々な切り口があると思いますが、要は、さっきの話にもあった、負けたら次の日そこにはいない。スポーツというのは本当はそれくらい厳しい世界だと思うんです。それを追求しようと思ったらもっと厳しさを子供たちに伝えなくてはいけない。
どうしてもそういうふうになってくるので、さっき言いましたが、要は親が何を言ってもいいと、そういう中でもやらなきゃいけないんだと。そういう中でやってたからこそ勝ったときは相当嬉しいですし、負けたときは相当プレッシャーになって悔しいし。
どのくらいそこの原理原則を伝えるかっていうのは難しいですよね。ゴールをしっかり目指すために自分がどれくらい日々追求しているのか、守るためにどれだけ追及しているのか、その中に技術とか戦術とか出てくると思うので。
そこが本当にしっかりできている奴がいたら、なんで(我々がいるのか)って。どちらかといえば楽ですよね(笑)監督は楽ですよ(笑)
それさえ出来てれば、一つの事を言えば全部理解してくれて、全部の事やってくれるからから。
豊島監督
そこと育成っていうのはまたちょっと(違いますよ)ね。別の、トップカテゴリに進むにあたって。段階もありますし。
RODA鶴見
単純にボールを相手より一点でも多く入れて、あとは集団で行うじゃないですか。
僕らスポーツの前に遊びだと思って、遊びって呼んでいるんですが、その辺と、かつ、勝利を目指すところっておっしゃる通りそんな簡単ではない話だと思います。
いろいろな情報がある中で、選択肢もいっぱいあって、たまたま入った少年団で、勝利至上主義であったり、勝つことは重要とは分かっているんですが、そこに子供が追い付いていない状態で入ってしまったときに、試合に出れる、出れないもでてくるじゃないですか。そういうシーンを見たり聞いたりすることも多いなかで、どういう選択肢があるのかと悩みを抱えている親御さんもいらっしゃると思います。
割とスポーツをやられていたご両親とかがいるといろいろ知っていると思うんですが。そうじゃない中で、こうだよってボンって入れちゃうと、それこそ辞めちゃうとか、でも一点でも多くとんなきゃそもそも面白くないし。いろいろな部分あるんですけれど、ちゃんと整理してっていうチームさんっていっぱいあるのかなって。どうなんですか?
BRINCAR古居代表
基本的に日本人はみんな真面目だなと思っちゃうんですけど、こうだって言ったら、それを変えることがダメ、ちょっと方向転換するのがダメみたいな、新しいものを取り入れるのはちょっとというのがあるので。
どうシフトしていくのかっていうところですね。より厳しさをもっと伝えていくのがどこのタイミングなのかっていう。下の年代でそういう部分も伝えていきながら、かといってそこだけに引っ張られずにどのようにやるのか。
ここには指導者のビジョンとか、クラブの理念とか、非常にそこが大事になってくるかと思います。子供たちを育成するうえで、最終的にそれをどうゆう風にしたいのか。僕はやっぱり生涯スポーツとしてサッカーを一生続けて楽しさをもっと持って生活してほしいと思っているので。途中でやめることは非常に寂しいことだし。
自分の教えたことができなかったら悪なのか。できなかったとしても別にいいと思って寄り添いながら一緒に指導できるのか。育成はどちらかといえば寄り添いながら親身になって、考えながら模索して、一緒に苦しみながら成長するものだと思っています。
勝利至上主義みたいなひとが育成にどのくらいいるかは知りませんが、ただ指導案、やり方とかじゃなくって、本質のところを伝えられるかどうかをもっとやらないと。ただライセンスとって、ただ教えるってなると、やっぱり偏った指導になってしまう。例えば25歳の指導者が25年生きたバックボーンの中の伝えられる量は限られてくるので。組織としてみんながどういう風に指導していくか。さっきおじいちゃん指導者の話ありましたが、60歳だったら60年分の何かが言えるわけだからやっぱり小学生にはいいのかもしれないし。
僕も見ている感じ、本当に厳しいし。どこも怖いっすよ(笑)いや引くほど怖いっすよ。
先ほど奥村さんがおっしゃった、自分が子供だった時の事考えたら、そんな言われかたをしたら委縮してできないでしょ、逆に。
とは言え、まあ、難しいところですね。状況を全く知らない人が聞くとあれなんですけど、小さいころからずっとそれでやっている子供たちは、本当にいつもの事なんですよ。
でもそれはこの厳しい時代、コンプライアンスとか言われている中で、最終的には厳しいと思います。そういう時代になってきているってことを自覚して伝えていかないと、自分たちがやりたいことも表現できなくなってしまう。時代にフィットしていかないと。
RODA鶴見
はたから見ると強烈な、そういった指導を受ける選手たちは普通なんですか?
豊島監督
言われ慣れていますよね。
BRINCAR古居代表
だからそれが怖いですよね。さっき言ったその中でその子たちが育ったら。その子たちそれが普通になっていることが。本人たちもそういうことを言ってもおかしくないわけです。本人たちそうやって育っているし。
それって社会に出たら不適合者になってしまうから、それがその子たちの将来のためかって言ったら、そうではないと思うんですよね。そこをちゃんと見ているのか。ビジョンですね。サッカーだけ教えてればいいのか。サッカーというものを通じて何か伝えるものがちゃんとあるのか。
技術、勝つために蹴るだけ、結構みんなこんな感じだから、疲れてしまわないかなと。もっとニュートラルに物事考えられれば楽なのになんて思います。
小学生年代は、申し訳ないんですが、フットサルっていう世界の中でやっているチーム、特に多いと思います。ジュニア年代の指導者。それでフットサルというものをやろうとしてる人たちの偏り具合は。
RODA鶴見
そうなんですね。フットサルの動き方とか特性の関係ですかね。
BRINCAR古居代表
そう。こうだったでしょ、みたいな。型にはめたがる。
なんでそれやらないの!って。要は失敗が分かるから、本当はそういう風に動くはずだったのに動かなかったからそれは失敗、お前のミス。みたいな。この上げ足とっている感じ。もとを考えたら指導者がやっていることだからって思うんです。
BRINCAR古居代表
いやいや、ほんとに怒りすぎだから。子供たちが可哀想すぎる。
試合の時、かたやこっちはヘラヘラしているから、文句は言われるけど…。
RODA鶴見
文句言われるんですか?
BRINCAR古居代表
文句っていうか、見た目が悪いって。ヘラヘラ笑っているから。
だから、奥村さんが見てくれた決勝、僕ほとんど指示出してないです。わざとベンチずっと座っていました。ベンチに座って何もしないで勝てたほうがすごいだろうって思っているから(笑)
奥村監督
後半見られなかったんですよ、仕事で。前半1対1で、1-0で勝っていて追い付かれて、コンサドーレのほうが前半の最後は押していたんですよ。それで、コンサドーレ勝つかなって思っていたんですけど、仕事終わって見たら4-1でブリンカールが勝っていて。
指示は出してないってことですね。そこまで。
BRINCAR古居代表
僕たちが奪ってしまうのかということを考えてたんです。この瞬間をぼくらが知恵とかいろいろなものを与えて勝たせてあげるのか、自分たちから勝ちたいと思って、自らが決断、実行するチャンスをどうするのか。俺らが勝ちたいわけじゃないからあいつらにやらせようと思って。
BRINCAR古居代表
あえて言うのをやめよう。すべては練習で決まっていると思っているので。練習で伝えていることしか出ないんだから、改めてそこで言ったところで何がおこるのって。今回はちょっと思っていたので。
前は違うんですよ。初めて優勝した時は結構指示出していたんですよ。今回、2回目のチャンスもらったから、彼らにちょっと任せてみようと。
豊島監督
出来る確信もあったわけですね?ある程度、少しは?
BRINCAR古居代表
いやたぶん、一回優勝しているから欲がなかったかもしれないです。
あいつらが一回やってみればいいというのがあって、それだけの練習もしてきたし、どうかなといった感じで見てたんですが。そしたら優勝したので。だから嬉しかったです。すごいな、あいつらが本当にすごいなと感じました。
豊島監督
ハイライトしかみてなかったですが、最初すごい押されてて、このままいかれてやられちゃうんじゃないかって…
BRINCAR古居代表
だから大分言われましたよ。なんでベンチすわってそんな感じ?余裕かましすぎじゃないって試合終わった後、親にも言われました(笑)
いやいや、ぜんぜん言うことないよ。頑張ってるし。これ以上なにを言うのと。そんな感じです。
我慢です。
言いたいことを全部言うか、言わずに我慢して子供たちが自分で気づく機会を与えてあげるか。僕たちが子供たちの成長のチャンスを奪ってしまわないよう考えました。

正解のない中にも独自の哲学をもって現場の最前線で答えを求めて輝く人たち。
そこには説得力があり影響力も備わる。
思わず上がる感嘆のため息。頷き。
さらに話題は核心にせまります。
続きは『RODA Original Web Store』にて公開中!
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