Frederic Magnien フレデリク マニャン

ドメーヌに近いネゴシアン

ブルゴーニュの多くの造り手が「フレデリック・マニャ ン」の成功を羨んでいる。同時に近年のワインの大きな変化に驚いている。一代でドメーヌを築き上げたシャブリの重鎮「ジャン マルク ブロカール」も「フレデリック」の仕事と情熱を『昔のヴィニュロン以上に畑で働く。だから彼はいつも日焼けしている。一時期悩んでいたようだが今は 焦点が定まったね。ワインを飲めば解る』と絶賛している。
「フレデリック」は全てのブルゴーニュの畑、区画、そして所有者まで知っている。毎日、畑に出て自分の足で条件に合った畑を探し出し、所有者と交渉するということを10 年以上繰り返してきたから。 彼等は畑の所有者から委託を受け、栽培チームを派遣し畑の管理を全て自分達で行う新しい形のネゴシアン。書類上はネゴシアンだがドメーヌと変わりない仕事をしている。
『栽培責任者はルロワにビオディナミを導入した人で30年以上ルロワの栽培を指揮してきた。より繊細で果実のピュアな部分を重視したワインに進化していきたい』
ネゴシアンとして土壌を表現するためには従来の葡萄買いや樽買いでは不可能。栽培から関わり理想の葡萄を育て、理想のタイミングで収穫することができなければ理想のワインはできないのだ。

ヴィラージュ・ワインが進化​​​​​​​

土壌の表現に拘る「フレデリック」。100 年前に決められたAOCには納得していないようで、その枠に収まらない取組も始めた。鉄の多い畑から造ったワインに「クール・ド・フェ―ル (鉄)」。石の多い畑を合わせたワインに「クール・ド・ロッシュ(石)」。そして、粘土の強い畑のワインには「ク ール・ダルジール(粘土)」と表記したのだ。
『ヴィラージュ・ワインを造る時、村の個性以上に各畑の土壌の個性が勝ることがある。それならばその事実を表記するべきだと思った』
畑を選ぶ時に土壌と樹齢を最も重視している。
『ヴィラージュ・ワインでも最低40年の樹齢が条件。土壌の個性を表現するにはある程度根を伸ばす必要もあるし、樹勢を落とし、樹中の水分量を減らさなければならない』と。


D.R.Cよりルロワ

10年以上前から有機栽培を取り入れ、太陰有機法に従った栽培や醸造を行ってきた。最近の「フレデリ ック」はより自然で人為的介入を少なくする方向に向かっている。
『D.R.Cよりルロワが好きだ。1 点の汚れもない完璧に整理整頓されたワインよりも、欠点があっても伸びやかで定規で測れないワインが好き』
通常、春に葡萄房が形成され始めるとツルの先端を切り落とし、ツルを伸ばす為に使う養分を葡萄房に使わせるようにする。葡萄の生育を促す栽培法で ほぼ全ての造り手が導入している。
『春の摘芯もやめた。養分の分配は葡萄樹が自分でやる。人間がやるべきではないし、ツルを切られることのストレスの方が大きい』
ワイン造りは造り手の趣向やトレンドを極力排除した自然な形でありたい。醸造はグラン・クリュもACブルゴーニュも基本的に変わらない。


ジャー(アンフォラ)熟成

日本に初めて「フレデリック」のワインが紹介されたのは「バレル・セレクション」という手法だった。インポー ターが樽買いし日本国内で流通させた。
『当時の日本の流行でもあったのか日本は新樽100%しか買わなかった。実際は新樽の比率は当時でも50%以下だった』
日本に最初に紹介された「フレデリック・マニャン」は新樽100%のみだったので彼のワインに今でも樽のイメージを持つ人も多い。加えて2002年まではノン・フィルターで少し濁っていたし、収穫も今より遅く、今より少し過熟だった。そし て、マセラシオンも長かった。ここ数年で「フレデリック」の評価は一気に高まっている。2000 年代前半まではワインに悩みが現れてい たように思う。通過点だったのかもしれない。
『ジャー(アンフォラ)での熟成も開始。スペイン製の薄い素焼きの甕での熟成により、水分が少し蒸発し、若干凝縮する』
内側を蜜蝋で焼き固めていないジャーを使用。香成分や水に溶ける成分は何も無いのでバリックのようにタンニンや香をワインに与えない。
『葡萄そのものの個性を出してくれるが、現段階では、単体では複雑味に欠けると判断。バリック熟成のワインとのアッサンブラージュでバランスをとる』
2012年版ベタンヌ・ドゥソーヴではネゴシアンとして最高評価のBD マーク4 つを獲得し一流のドメーヌ 以上の評価を獲得した。ベタンヌのコメントが印象的で的確だった。
『フレデリック・マニャンは変わった。他のネゴシアンと区別しなくてはいけない。難しい年だった2008をとても上品に仕上げ、それが本物だということを2009年で証明した。今後も楽しみだ』