Jean-Marc Brocard ジャン マルク ブロカール


シャブリ本来の味はヨード

1973年、0.3haから始まった「ジャン マルク ブロカ ール」。現在、所有する自社畑は200haまで増えた。家族経営のドメーヌとしては広大な畑。シャブリには大規模生産者が多い。だが、その多くが1970年後半のAOC拡張時に広がった「ポルトランディアン土壌」の畑を所有している。ジャン マルク ブロカールは北部「ポルトランディアン土壌」ではなく南部のプレイ村に醸造所を構え、その周辺のキンメリジャン土壌のみに畑を所有。
『本来のシャブリは1億5,000万年前のジュラ紀に海の底で形成された「キンメリジャン土壌」から生まれる。キンメリジャン由来のヨードの強いミネラルこそがシャブリでボーヌには無い個性』
彼等が所有する畑のほぼ全ては拡張前のシャブリに位置。ヴィラージュも100%キンメリジャン土壌の畑から造られる。
『1980年代、フランスでは僕等のシャブリは売れなかった。ヨード感が強すぎたからだ。最初に評価してくれたのはイギリス人。海に囲まれた彼等はヨード感に慣れていてミネラルを求めていた』
今ではブルゴーニュ・ブランのようにたっぷりとした果実が前面に出てヨード感を感じさせないシャブリも多い。「ブロカール」は昔と変わらないシャブリ本来のヨード感を感じさせる。

ヴィラージュもキンメリジャン

現当主「ジュリアン」が最も力を入れるのは優良なプルミエ・クリュでも高価なグラン・クリュでもない。スタンダードのヴィラージュ「サント・クレール」。
『僕等にとってはグラン・クリュよりもヴィラージュのサント・クレールが大切。高価なシャブリではなく、本来のシャブリの美味しさを広めたい』
AOCシャブリは買い葡萄から造られることが多いが「ブロカール」のシャブリ「サント・クレール」は全て自社畑。醸造所に隣接した畑で収穫後、すぐに仕込みを行う事が出来る。また、通常AOCシャブリはシャブリ北部の「オックスフォーディアン土壌」の葡萄を使う。この土壌は樹勢が強く、収量が多いので葡萄が安いのだ。
『サント・クレールはシャブリの中心を流れるセラン川の左岸南に位置し、グラン・クリュと同じ時代の後期キンメリジャン土壌が露出する畑。グラン・クリュほどの傾斜はないが、全く同じ土壌』
特筆すべきは「サント・クレール・ヴィエイユ・ヴィーニ ュ」。サント・クレール内にある樹齢 80 年の区画でビオディナミが採用されている。
『樹齢80年の樹の根は30m以上垂直に伸びていているので雨の少ない年でも良い結果を得ること ができる。また、樹勢が弱く、水分量が少なく、凝縮度が上がるので重厚なワインになる』
圧倒的な凝縮度とキンメリジャンのミネラル。そして低いPHからくる高い酸度がこのワインの熟成力を高めていて蔵出しバック・ヴィンテージも素晴らしい状態で楽しめる。

100%ビオディナミを目指す

「ブロカール」の大きな転換が2代目「ジュリアン」が1998年から始めたビオディナミ。父「ジャン・マルク」は当時、猛反対したが「ボワッソヌーズ」から始めて今では80%の畑の転換が終了している。
『アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムールもブロカールで働いていた。彼等とも協力してビオディナミを進めてきた』
しかし、雨の多かった2012年や天候不順の2013年にも薬剤を使用しなかったので生産量は半分以下まで落ちてしまった。勿論、売上も半分以下になるということ。ドメーヌ運営も大変。
『調剤も購入するのではなく、自分達で作っている。ビオディナミによって各畑の個性が、より明確に出てきている』
「ジュリアン」は他にもウッフ(卵型発酵槽)の導入や、仕立の変更、発酵期間の延長など積極的。グラン・クリュ・レ・プリューズはコンクリート製のウッフで発酵、熟成することで澱の影響を強く受けてより複雑性を強調できている。
『シャブリ・サント・クレール V.Vの変化が解りやすい。しっかりとしたグリップ、シャブリらしいヨード感は非常に強く感じられる。さらに目の細かい緻密な質感。僕等の仕事は間違っていなかった』
ヴォード・ヴェイは東向きの斜度 52 度という厳しい環境なのでモンマンよりも冷涼感が出て、果実よりもミネラルと酸が特徴的で最も垂直性が出る。ヴォロランは肉付きのよい果実味が得られるように変化。モンマンは熟した果実にヨード感を強く感じられるようになった。