なぜガソリンを抜くのか?

なぜ、除雪機のガソリンを抜かなければいけないのかというと、一言で言えば
【ガソリンが劣化するから】
です。
よく、『ガソリンが腐る』とも言いますが、これは比喩的な表現で実際にガソリンが腐敗しているわけではありません。
そもそも腐敗とは、有機物に細菌などの微生物が繁殖してタンパク質などが分解・変質される事なので、原油からの精製油の 混合物であるガソリンに腐る(腐敗)といったことは起こりません。
正確には酸化や揮発によりガソリンが『変質する』というのが正しい表現でしょう。
ガソリンは劣化すると

【変色して異臭を放つ】

【ドロドロのオイル状態になる】

【カチカチの樹脂状態になる】

と、段階的に変質していきます。
除雪機は1年のほとんどを『未作動』で過ごす機械です。
頻繁に給油をする自動車などの機械は、『古いガソリンを消費し、また新しいガソリンを補給する。』というサイクルがありますが、除雪機にはこのサイクルがオフシーズン中にはありません。
なので除雪のシーズン終わりにガソリンを抜かないで翌シーズンまで放置してしまうと、このオフシーズン中にガソリンが劣化してしまいます。
ガソリンが劣化してしまうと、エンジンの始動不能やアイドリング不調など様々な不具合を起こします。

そもそも、ガソリンが劣化すると何故エンジンが掛からなくなったり、アイドリング不調が起きるのでしょう?
そもそもエンジンはいきなりガソリンを吸い込んで動いているわけではありません。
その前段階に【キャブレター】という装置があり、この装置でガソリンと空気を混ぜた『混合気』という状態にガソリンを変換してエンジンに送り込みエンジンを動かしています。
『混合気』は『キャブレター』内でガソリンを霧状に噴射し、空気と混ぜられることで『混合気』になります。
キャブレタ―の中にはメインジェットをはじめとする直径1mmにも満たない極細の穴をガソリンが通り抜けることにより、ガソリンを霧状にしています。
大雑把に言うとキャブレターの中に『霧吹き』があってガソリンをシュッ・シュッと霧状にしているのをイメージしてもらえればいいかと思います。
さて、みなさん見た事があると思いますが、霧吹きのノズルの水が噴き出てくる所ってメチャクチャ小さい穴が空いてますよね?
では、霧吹きのタンク内にソースやサラダ油など『ドロッ』とした物を入れて使ったらどうなるでしょうか?
上手く霧状になると思いますか?
そう、劣化したガソリンをキャブレター内に残していくと、これに似たことがキャブレター内で起こります。
ガソリンが劣化して『ドロドロのオイル状態』になると上手くガソリンが霧状にならず、エンジン供給される混合気が不安定になり、アイドリング不調やエンスト等の不具合を引き起こします。
さらにガソリンが『カチカチの樹脂状態』まで劣化してしまうとキャブレター内のメインジェット等の極細の穴を完全に塞いで詰まらせてしまいエンジンに混合気が供給されないためエンジンは始動不能に陥ります。
シーズン初めにエンジンが掛からなくなり、

『去年の最後に使った時にはあんなに調子よく動いていたのに…』

という不具合のほとんどは、この『キャブ詰まり』が原因です。

こうならないためにもシーズン終わりには、しっかりとガソリンを抜いてから保管しましょう。

※キャブを詰まらせてしまった場合は、応急処置としていくつか方法がありますが効果があったり、無かったり、または一時的なものになります。
根本的に解決するためには、キャブレターの分解清掃か、キャブレターの交換をするしかありません。
整備未経験の方にはキャブレターの分解清掃・交換作業は難しいので、最寄りの販売店か修理店へ相談しましょう。








ガソリンの抜き方

この作業は風通しの良い屋外で行うようにしましょう。
また、気化したガソリンに引火する可能性があるため火気厳禁で作業に当たってください。

まず、ガソリンタンク内に残っているガソリンを抜きましょう。
抜き方は簡単。
燃料キャップを外し灯油ポンプを使って、燃料タンクから普段から除雪機のガソリンを保管している容器にガソリンを移して戻します。
※この時使う灯油ポンプは、ガソリン用・灯油用と別の物を分けて使用しましょう。

ポンプで抜ける限界までガソリンを抜き終わったら給油キャップを閉め、燃料コックを開き、エンジンを掛けます。
あとはこのままガス欠でエンジンが停止するのを待ちましょう。
これでキャブレターの内部からガソリンが無くなります。



あとはガソリンタンクが金属製の場合、長期間の保管で錆(サビ)が発生しないように『防錆スプレー』をタンク内全体に軽くひと吹きして防錆処理を施し、燃料コックを閉めガソリンを抜く作業は完了です。





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