全国には多くの蒲鉾屋があり、地域によって特徴ある蒲鉾が作られて来ました。
また、各地の様々な食文化の中で蒲鉾は姿や形を変え、日本人にはなくてはならない食材のひとつになっている事実は、四方を海に囲まれた日本ならではの「魚」を美味しく食べるという先人たちの知恵に敬意を表さずにはいられません。
中でも富山県は、婚礼や人生の様々な節目、お祝いなどに細工蒲鉾が使われる事が有名です。また、その大きさや華やかさも他県にはない特徴があり、全国でも細工蒲鉾の生産量としては群を抜いています。
富山県における細工蒲鉾の発祥や、その後の発展には諸説ありますが、婚礼という華やかな儀式を祝う膳料理の中の一つで、膳料理を持ち帰り、その福をご近所へお裾分けするという富山県人ならではの心温まる風習が育てて来た、富山独特の文化なのかもしれません。
富山県では現在も、お祝い事には蒲鉾が多く使われますが、以前ほど大きな蒲鉾は使われなくなり、時代とともに蒲鉾も小型化、多様化して来ました。しかし大きさが変わっても、細工蒲鉾を作る方法は変わる事なく、蒲鉾職人による丁寧な手作業によるものです。富山の細工蒲鉾は搾り出しという技法によるものと、付け包丁ですり身を変幻自在に操り模様を描いていく技法の組み合わせで作られます。
一人前の蒲鉾職人、細工師と呼ばれるまでには、少なくとも10年近くは修業が必要であり、その技術はひとからひとへのみに伝わるものです。
河内屋では富山伝統文化である細工蒲鉾を作り続けていくために、機械では絶対に作れない細工技術を大事に育み、次世代へ確実に伝えて行きたいと考えています。
河内屋では、昔ながらの従来の細工蒲鉾を受注生産していますが、富山県独特の細工技術を利用して、今の時代に合った新しい細工蒲鉾にもチャレンジしています。「手まり蒲穂子」や冬限定の「雪だるま君」などの商品は、その代表的な細工蒲鉾で、多くのお客様より大変高い評価を頂くまでになりました。
また、既成概念を破り、お客様がお求めになるオーダーメイド蒲鉾の製造にも、時間の許す限り積極的にチャレンジしています。
姿や形が変わっても、河内屋の味と、伝統の細工技術は頑なに守る。
それが河内屋と蒲鉾職人の誓いです。