フォーマル着物
礼装のきものの着こなし
きものには、素材や模様の付け方などによって様々な種類があり、それぞれに格が違い装い方や着るのに適した場所も変わってきます。
ここでは留袖や訪問着など、フォーマルな装いについて特徴や着こなし方を
まとめています。
既婚女性の第一礼装です。儀礼の中でも結婚式の礼装として着られるのが一般的です。現代では主に婚礼で仲人夫人、新郎新婦の母、親族など、場合によっては列席者も着用します。染め抜き五つ紋を付け、白の比翼仕立てにするのが決まりです。
家族や親族の結婚式に出席するために若い方が黒留袖を求めるときには年齢にふさわしい華やかなものを選びましょう。
ヤングミセスの黒留袖には柄の位置が高く、大きめの柄で華やかな配色のものが適しています。おめでたいときには明るく華麗に装いましょう。
五十代・六十代は円熟した女性美を発揮する年齢です。交際が広くなるだけでなく母親として結婚式に望むときこそ、黒留袖が必要です。
仲人夫人は、花嫁のそばにいて目立つ立場です。仲人夫人の黒留袖は立場にふさわしい品格と華やかさを備えたものをお勧めします。ある程度個性的な人目を引く柄行を選ぶのも良いでしょう。若い頃に作った黒留袖が派手なときには帯を地味にするか新たに年代に合ったものをお作りになることをお勧めします。
礼装のきものや帯の模様には重厚な正倉院模様、雅やかな王朝風の模様などが好まれますが吉祥模様と呼ぶおめでたい意味のある模様が、とくによく使われます。
礼装の場合は出席者はできるだけ明るく、華やかに装いたいものです。
祝儀の席には年齢よりも派手めであってよいと思います。
その意味でも金地・銀地の帯はよく好まれています。
黒留袖にあわせる帯は黒地以外ならどのような色彩でも一応の組み合わせができます。
大切なのは礼装としての帯の格です。
色留袖は五つ紋付なら黒留袖と同格の第一礼装です。
年齢よりも派手めの色留袖でも胸に柄がありませんから落ち着いた感じになります。
裾模様には格調のある柄が多くあります。手書き友禅の技術の高い品は、流行に左右されず品格があり飽きかきません。黒留袖は一越ちりめん地ですが、色留袖は地紋のある生地を使うことが多く、綸子・紋意匠ちりめんなどをよく見かけます。
二十代で色留袖を用意するときには、明るい色・図案も華やかなものを選ぶとよいでしょう。
若いうちは手持ちの派手な袋帯を合わせるなど10年ごとに変化をつけると考えると年代ごとにふさわしい装いとなります。
五つ紋、三つ紋、一つ紋を模様の格に合わせてつけます。
古典的で重厚な模様の色留袖なら五つ紋か三つ紋付きに向きます。
一方、モダンな雰囲気の模様やしゃれ味を感じさせる柄行には訪問着感覚の色留袖として一つ紋にするとよいでしょう。
ミスの第一礼装は振袖です。
振袖の場合は紋が入っていなくても礼装となります。
振袖にはおめでたい吉祥模様などの総模様が好まれますが
近年は古典的な模様だけでなくモダンな柄行も多く流通しています。
振袖はお祝いのときに着ますから、華やかな模様がほとんどです。
さまざまにある中から着る人の趣味や個性に合わせて選ぶとよいでしょう。
手描きの京友禅染の振袖は、はんなりとしたもの艶やかなものなど様々な模様があります。
染の技術のうえでは華麗さ、重厚さで京友禅に勝るものはないといわれています。
加賀友禅染は京友禅と手法は同じですが、加賀の五彩といわれる、
藍・エンジ・黄土・緑・墨の五色を用いたと独特の色調とぼかしの手法に魅力があります。
また、金箔や刺繍を加えないことも特徴の一つです。
紅型は沖縄の伝統的な型染です。
南国らしい鮮やかな色調やはっきりとした模様表現が特徴です。
独特の華やかさがあり多くの振袖の中でも際立つ個性があります。
多彩な紅型振袖には、すっきりとした模様で色使いも単彩に近い帯が合います。
絞り染振袖も高い人気があります。
絞り染の振袖には、ふっくらとした立体感があり軽く着心地の良いところも魅力です。
絞り染は大変手間のかかる技法で細かい総絞りや、多色に染め分けたものは贅沢品です。
疋田絞りがもっともよく知られていますが、絞りの技法にはさまざまなものがり
柄に合わせて多様な技法を併用することが多いようです。
絞り染めに、さらに箔や刺繍を施した豪華なものもあります。
訪問着は袖から胸、肩、裾にかけて一枚の絵画のように模様が染められています。このような模様付けを絵羽模様とよびます。訪問着は上半身に模様があるので色留袖に比べて華やかに見えます。
訪問着は未婚、既婚に問わず着られ格調高い柄ゆきなら留袖や振袖に次ぐ着物として重宝します。古典柄のきものは帯を替えれば十年は着られますので一枚は用意しておきたいものです。
第一礼装に次いで格のある装いを準礼装といいます。三つ紋、一つ紋付の色t目尾sでや紋付の訪問着、紋付の色無地などが準礼装です。
準礼装の訪問着は結婚披露宴、
お茶会、パーティーなど、さまざまな機会に来ていける着物です。
準礼装に向くには古典柄の品格のある訪問着です。
しゃれ味の強い柄行やモダンなもの、軽いものなどは紋付きなどには向きません。
紋をつけずに社交着として楽しみます。
訪問着を改まった席で着るときは、礼装用の光る袋帯を締めます。金糸、銀糸の入った袋帯は金箔や刺繍のある訪問着にあわせると良いでしょう。
地色が微妙で色合わせに困ったときは調和しやすい白地や金地、銀地の帯がよいでしょう。
小物は着物の帯の色調にあえば自由に取り合わせてよいのですが、帯〆は金銀を使ったもの、帯揚げは絞りの多いものを選ぶと晴れ着らしくなります。
伊達衿を重ねると華やかな装いになります。
より改まった感じで感じを着る際には、白の伊達衿を使い、帯揚げ、帯締めに純白を使うと色留袖に近い格が出ます。
付けさげは訪問着に近い着物です。しかし絵羽模様ではありません。仮絵羽(反物をきものの形に仮縫いしたもの)にしないで染めたものを着尺といい、仕立てると小紋や付けさげになります。
着尺は絵羽よりも格が下とされていますのが、その中でも準礼装に近い感覚で着られる着物が付けさげです。
一反の着尺から着物を仕立てると袖山、肩山で前身ごろと後ろ身頃が振り分けになります。生地全体に同じ向きの柄を表していると仕立てあがると肩を境に模様の向きが前後で逆になってしまいます。そこで模様が前も後ろも同じ方向になるように一反の着尺にあらかじめ柄置きを考えて染め分けたものを付けさげとよぶのです。
訪問着のように上前の合いの口の柄が続いていて、重めの模様のものを「付けさげ訪問着」とよぶこともあります。付けさげは上前の模様は連続していても衿や袖、脇のもようが続いていないことがほとんどです。
付けさげには、手描き友禅や型染があり訪問着と変わらないような絵羽風模様も見られます。訪問着と変わらないほど模様に品格のある付けさげに、準礼装向けの帯を合わせるとお茶会やパーティーのような改まった場所に着ていけます。
付けさげには、訪問着に合わせるような帯を合わせられます。
格のある織物の帯ならパーティーにも締められます。
しゃれ感の強い付けさげには織りや染めの名古屋帯も良いでしょう。
お食事や稽古事の集まりなどには織りや名古屋帯も重宝します。
帯揚げ・帯締めなどの小物も訪問着着用時とほぼ同様に。しゃれ着の小物には帯に合わせて好みのものを使えます。
色無地は黒以外の好みの色に染めた無地着物です。無地ですが紋を入れると書くが高くなり改まった装いとなります。色無地は帯次第で幅広く活用できる重宝な着物です。
特に染め抜きの一つ紋をつけておくと準礼装としてお茶会、学校行事、パーティー、会食などに着られます。三つ紋、五つ紋をつけることもあります。色無地の染め抜き五つ紋付は本来は第一礼装となりますが、現代では準礼装に近い感覚です。近年は色無地には一つ紋をつけるのがほとんどで、三つ紋、五つ紋をつける方は少ないようです。
一方、紋をつけない色無地は色を楽しむしゃれ着となります。
また、刺繍のしゃれ紋をつけて華やかさを添えることもありますが、しゃれ紋ですと礼装にはんりません¥。