HERNO ブランドクロニクル~変わらないため、変わり続ける。~
高機能なダウンアウターが世界中でヒットしている「HERNO(ヘルノ)」。
伝統と革新、ふたつの顔を持つブランドが、なぜこんなにも愛されるのか?
世紀をまたぎ、「変わらないために変わり続けてきた」異端児の魅力を、
MODERN BLUEが名作や最新作とともに、徹底的に深堀りしていきます。
HERNO PROFILO
Paese生産国
Origineブランド名の由来
Concettoコンセプト
Tecnologiaテクノロジー
HERNO STORIA
変わらないため、変わり続ける。レインコートから、
ダウンへ。Perché non cambia, continua a cambiare
今でこそダウンアウターの印象が強いヘルノだが、その歴史は意外にも浅く、70年のうち僅か十数年に過ぎない。レインコートに始まり、ウールコート、カシミアコート、スーツ、ドレスと、時代とともに看板商品のメタモルフォーゼを繰り返し成長してきた。一方、ゴアテックス®を標準装備した「LAMINAR」のダウンウエアには、「エレガンスを損なわず、雨やアルプスの風に耐える機能的なコート」を目指した創業時の志が今も息づいている。
変わらないため、変わり続ける。イタリアから、世界へ。Perché non cambia, continua a cambiare
湖のほとりにある小さな工房から始まったヘルノは、事業の拡大とともにイタリアの市場へと進出。1960年代にはヨーロッパ全土にその名を轟かせ、やがて日本、アメリカなどを経て、世界へ。生産過程の一部を海外に移すなど今や遠く故郷を離れたヘルノだが、その本社は今も創業の地・レーザの町にある。工場はソーラーエネルギーや低消費型機械を導入し、環境にも配慮。原点である自然との共生や調和は、世界進出後も何ら変わっていない。
変わらないため、変わり続ける。父から、息子へ。Perché non cambia, continua a cambiare
ヘルノの歴史はマレンツィ親子の歴史と言っても過言ではない。父・ジュゼッペは小さな雨具製造会社を一代でイタリアを代表する世界的ブランドに育て上げた。その過程を豊かな自然の中でつぶさに見てきた2代目の息子・クラウディオは、ビッグメゾンも一目置く巨大企業になったヘルノを一旦「原点」に戻す決断をする。創業当時の父のごとく自社ブランドの製造に特化した結果、ダウンウエアという新たな鉱脈を生み出すこととなったのだ。
HERNO CRONOLOGIA
ひとりの青年のアイデアが
すべての始まりだった
独裁者ムッソリーニの失脚から敗戦へ。激動の最中にあった1940年代後半のイタリアで、レインコート会社に就職したひとりの青年が画期的な防水技術を開発する。彼の名は、ジュゼッペ・マレンツィ。ウォータープルーフ素材などない時代、軍隊経験を生かし調達したキャスターオイル(ひまし油)を使って完全防水を施したレインコートは瞬く間に大ヒット。ジュゼッペはその成功を足掛かりに独立、1948年に「ヘルノ」社を設立する。
若き才能はレーザの町から
イタリア、ヨーロッパへ
イタリアが奇跡的な復興へと進む1950年代。ヘルノはメンズ&ウィメンズのレインコートに続く看板商品として、ウールコートやスーツの製造に着手する。良質なアウターを提供するブランドとしてイタリア市場に本格進出、1950年代後半には国外にもその知名度を広げていった。会社が大きくなる一方、ジュゼッペは地域への配慮や技術力を支える職人の育成にも尽力。このことが後年、さらなる事業拡大を進めるうえでの基礎となっていく。
1着のコートと1人の日本人
ふたつの「出逢い」が転機に
アウターブランドとして知名度を上げたヘルノは、新たな看板商品としてカシミヤコートを発表。良質な素材と繊細な技術によるダブルフェイス仕様のコートは黎明期の代表作となり、ヨーロッパ全土にその名を知らしめることに。またこの頃、日本で初めてヘルノが紹介されたが、そこには奥田清治という1人の日本人が深く関わっていたとされている。
素材へのこだわりは強く、現在もイタリアの老舗ミルメーカー「PIACENZA(ピアチェンツァ)」社のシルクカシミヤや、同じくイタリアの高級服地メーカー「LOLO PIANA(ロロ・ピアーナ)」社のカシミヤ混ウールなどを採用している。
ヘルノ、ついに日本上陸。
そしてその名は世界へ
奥田清治との出逢いを通じ日本に高い関心を抱いたジュゼッペは、1971年、大阪にヘルノの国内1号店をオープン。日本市場に参入したイタリアンブランドの先駆けとなった。一方、本国イタリアでは、ジャケットやトラウザー、女性向けのドレスといったジャンルにも積極的に進出。総括的なコレクションも展開するようになり、ヨーロッパ以外への輸出も増加。創業から四半世紀を経て、ヘルノの名はついに世界へと羽ばたいていくこととなる。
この後、2002年にアオイ社が日本での事業を開始。2016年に合弁会社として現在の日本法人「ヘルノ・ジャパン」が設立された。
ジュゼッペの関心はより外の
広い世界へと向かっていく
’80年代に入ると自社製品にとどまらず、ラグジュアリーブランドの委託製造を開始。1986年には伝統的な既製服縫製会社の組合「クラシコ・イタリア協会」の結成に寄与するなど、業界での地位も確立する。一方日本ではインポートの流行を追い風に、百貨店や高級セレクトでの取り扱いが増え、富裕層の女性を中心に「ヘルノ=最高級のウールブランド」というイメージが根付いていった。アメリカへの進出も果たし、市場規模はさらに拡大していく。
イザイアやキートン、ルイジボレッリらと協会設立に尽力。2005年にはクラウディオが協会の5代目会長に就任するなど縁は深い。
企業としての全盛を迎え、
やがてバトンは父から息子へ
ファッション業界のグローバル化が進む中、ヘルノは有名ブランドへの製品提供によりさらに時代の流れをつかんでいく。プラダ、エルメス、ルイヴィトン、アルマーニ、ジルサンダーなど名だたるビッグメゾンとの協賛は、1990年代に最盛期を迎えた。一方、すでにヘルノ社の製造部門や営業職でキャリアを積んでいたジュゼッペの三男・クラウディオは、拡大を続ける現状を踏まえながら、21世紀に向けたあるべき会社の将来像を模索していく。
ヘルノ社にはクラウディオ以外にも、長男・マッシモ、次男・ジョルジオが入社しており、それぞれが経営に参画しているという。
ハイテクとクラシコの融合が
新世紀のヘルノを決定づけた
21世紀に入り、クラウディオが2代目社長に就任。2005年にビッグメゾンのOEM事業から事実上の撤退を宣言、自社ブランドの製造に専念することになる。スポーツウェアに使われるハイテク素材と伝統的な製造技術の融合を打ち出した新生ヘルノは、2008年に約200gの超軽量ダウンジャケットを発表。ダウンを直接注入する独自製法が話題となり、2009年AWにニール・バレットとのコラボで採用されると、その人気は最高潮に達した。
インジェクション(直接注入)方式による高品質グースダウンを証明。羽根の枚数が多いほど、ダウン充填量が三段階で大きくなる。
派生ラインが増えた’10年代、
「ダウン=ヘルノ」がより強固に
2010年代に入りダウンウエアはヘルノの新たな代名詞として定着し、ハイテクとクラシコの融合はより加速。2012年、それまでアウトドア系の代名詞だったゴアテックス素材をクラシコに落とし込み、高機能素材とファッション性の融合をコンセプトに掲げた「HERNO LAMINAR(ヘルノラミナー)」をスタート。さらに創業70周年を迎えた 2018年には、「男性のワードローブに必要な11着」の型を超軽量ナイロンで表現するメンズライン「HERNO LEGEND(ヘルノレジェンド)」、女性のアイコニックなウエアをウルトラライトダウンで美しいシェイプに仕上げたレディースライン「HERNO ICONICO(ヘルノイコニコ)」がデビュー。クラウディオの掲げた変革は、目に見える形となって結実することとなった。
変革期から、新たな全盛期へ
次の10年が始まった
2010年代でひとつの完成形を見たハイテクとクラシコの融合はより洗練されたものとなり、同時にヘルノは新たなステージへと突入している。その象徴が2020年に始まったサスティナブルな提案、「HERNO GLOBE(ヘルノグローブ)」。数多のブランド同様にリサイクルナイロンファブリックを採用しているが、ひと味違うのはその染色。黄色は玉葱、紫は葡萄、など植物由来の染料を用いることで、環境負荷の軽減を実現。美と物語性、そして環境保護という三位一体の新機軸により、ヘルノはこれからもさらなる進化を遂げていく。
Clonologia
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1948ヘルノ社設立
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1968日本での事業展開を開始
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1971大阪に国内1号店をオープン
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1986「クラシコ・イタリア」結成。ヘルノが中心メンバーとして参加。
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2002アオイ社が日本でのヘルノ事業を開始
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2005ビッグメゾンのOEM事業からの脱却を宣言、以降は自社製品の製造に専念
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2008インジェクション方式のダウンウエアを発表
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2009ニール・バレットとのコラボを発表、ダウンジャケットが大ヒット
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2012イタリア・ミラノに第1号旗艦店オープン。AWより「LAMINAR」スタート
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2013国内初のコンセプトストアとなる世界第2号旗艦店を青山にオープンAWよりキッズラインをスタート
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2016「ヘルノ・ジャパン」設立
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2018創業70周年。第94回ピッティ・イマージネ・ウオモ期間中に記念イベント開催。SSより「RESORT」、AWより「LEGEND」「ICONICO」スタート
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2020SSより「GLOBE」スタート