冬っていうのは、オシャレを楽しめる季節ではありますな。カッコいいコートにインナーに、重ね着の妙がありますな。そしてマフラーをアクセサリーのようにして巻いて。ロマンチックな季節ですなあ。
しかし夏派の僕には、冬はツラい季節なのですなぁ…なんで人類はアフリカを捨ててシベリアまで旅してしまったのだろう…。
そうはいっても今年は寒い冬が来るのだから、いちばん暖かそうなアウターを探してみました。それも今季の流行キーワード別に、掘り出してみました。あと、冬といえばこの映画…そんなおすすめ映画のコーナーも作りました。興味のある方はぜひどうぞ。
モデル:Kentaro Yamate, Shade Marina
写真・文:Kazunori Iwata
文:Chie Murakoshi
スタイリング:Marei Masaki, Kentaro Yamate

秋冬も、アウトドア。

ドレッシーなアイテムにスニーカーを合わせたりバックパックを合わせたり。スポーツミックスな着こなしがブームですが、この秋冬は、アウトドアの要素を入れたいと思っています。
秋冬のアウトドア…、うっ、考えるだけで…寒ぅ。やっぱりダウンウェア、それもかなりボリューミーなものがいるな。
それで探しました。モンクレール・ガムブルーのダウンウェア。モンクレールはもともとアウトドアブランドですなあ。このごろはモードなドレッシー路線にいってますが。つまりブランド自体がスポーツミックスなブランドなんですなあ。レイヤード風のデザインも今季っぽいですが、何より二重構造になっていて暖かいです。

華やかで、ハマるとカッコいい色。

グリーンが流行色です。いや、ほんとうはレディースの話なのですが、メンズのキーカラーとしてグリーンというのも注目したいところです。グリーンは着こなしの難しい色ですが、華やかで、ハマるとカッコいい色でもあります。
いちばん暖かいニットウェアといえば、間違いなくバークのこのニットダッフルです。贅楽なローゲージにファー付き。深いグリーンとゴージャスなファーのコンビネーションが他にないオーラを放っていて、いいですなあ。
グリーンで思い出しましたが、昔、グリーン色のベンツに乗ってるヤクザみたいな上司がいました(モダンブルーの話じゃないですよ)。部活動でジョギング中の中学生を数人掴まえてエンコした大型バイクを押させて…。エンジンがかかると、「坊主、ありがとな」と言ってみんなに1000円札一枚づつ渡して。そしてみんなに断られてましたなぁ…。「いや、おじさん、もらえないっす!」って。
あの当時の中学生も、数えると今や29歳なんですなあ。と、完全に脇道逸れましたが。

中綿入りで、暖かいチェスター。

今年、いちばん注目度の高いコートといえば、キング・オブ・クラシックアウターのチェスターフィールドコートです。そのままドレッシーに着るというのではなく、スウェットみたいな超カジュアルアイテムに合わせたり、ニットキャップに合わせてみたりと、スポーツミックスなドレスアイテムとしても注目されています。
例によっていちばん暖かいチェスターコートを探してみました。ヘルノから、ちょっと珍しい中綿入りのチェスターです。ポケットもスラントスタイルでカジュアルな仕様になってます。
しかしチェスターといえば、僕の中ではジェレミー・アイアンズのような長身でがっしりした男が着る英国人のコートというイメージですなあ。それが今ではいろんなバリエーションが出ていて、スポーツミックスできてしまう。そこに時代の新しい香りがするんですなあ。

スキニーパンツ穿いてブーツなんか履いて

今季の大きなキーワードとして、スポーツミックスというのがありますが、もう一つ、モードスタイルも健在です。なかでもモノトーンアイテムを重ね着するモノトーンレイヤードに注目が集まっていますな。
そんな中で注目してしまうのが、ニットブランドのバークのこの変り種アイテム。ニットにダウンが混ざりこんでますぞ。これだけでモノトーンレイヤード、かつスポーツミックスという。どうもベルスタッフなんかも髣髴とさせるバイカーズスタイルのデザインになってますな。
スキニーパンツに合わせてブーツなんか履いて、モードでもちょっと野口強さん寄りの。真冬にロックでハードなモノトーンスタイリング、そんな危険な匂いがしますな。
何から何までモノトーンですぞ

モノトーンのアウターをさらにもう一つ。こちらはモンクレールです。ダウンをはちきれそうなくらい使ってます。どんどんボタンを留めていくと筒みたいになって顔が隠れていく仕様、これがオシャレですな。そしてフランネル地ウールのアウターシェルからボタンからライナー、何から何までモノトーンでできている点、なかなか面白いです。
そういえば大学生になったばかりのころ、独り暮らしの部屋に黒のパイプベッドを置いてヴォーグかどっかのモノクロ写真のページを壁に貼って…何から何までモノトーンな部屋作りをしてたカッチョいい時代が僕にもありましたなあ。ママの仕送りで、そんなことやってましたな。黒なのに蒼い蒼い時代です…。思えばあれから十うん年、歳だけでも大人になったので、今度はもっと違った意味でモノトーンコーデに挑戦したいところです。
© Gramercy Pictures Photofest / Zeta Image
ファーゴ(1996米)
コーエン兄弟の代表作「ファーゴ」です。血なまぐさい殺人事件が起きます。事件の知らせを受け、フランシス・マクドーマンド演じる田舎の女警官が現場に行きます。女警官はいつもの仕事をこなし、淡々と事件を解決していきます。
異常事件を題材にしながら主婦の日常を綴ったかのような映画です。ゴダールは「ファーゴには何もない」と評しました。虚しい映画なのです。殺人と出産と日常が普通に横並びしてしまうリアリティー。そんな人間の虚無感がミネアポリスの雪景色によっても語られます。

いつかはと憧れるレディコート

いつかはこんなコートが似合う大人の女性になりたい。と憧れてやまない正統派のコート。デザインは、いたって普通でシンプル。でも着こなすには、それなりの気品と品格が必要で、なかなかの高ハードルです。
このコートを着たら、首元にファーを巻いてピンヒール履いてとアレコレ想像してイメージ作り。顔周りが映え、落ち着いた色合いのベージュは上品な印象を与え、どんなスタイルともコーディネイトしやすい万能カラーです。
さっと羽織ってベルトをキュっと締めれば、うんうん、いい女に仕上がりました。

美しく進化を遂げたマルチアウター

オンタイムに活躍するクチュール的なシルエットがポイントとなったコート。機能を重視するとなんだか野暮ったい。デザインを重視すると保温性に欠ける。そんな常識を覆したコートがイタリアの高級アウターブランド「ヘルノ」にありました。
寒がりの女性には嬉しい中綿入りのライニング、取り外し可能なカラーやスリーブなど、さまざま着こなしを愉しめる工夫が取り入れられています。尚且つ、見た目もすっきりスマート。パーティに七分袖コートで颯爽と現れ、帰る時にはしっかりと冷気からガード。このコートなら、そんなシチュエーションも可能です。
着た人だけにしか解らない優越感、あぁこの秘密は誰にも知られたくない。

ボアが心地良い王道コート

今季、秋冬の流行色といえば「ダークカラー」でネイビー、ボルドー、グリーンなど。その中でも、一歩間違えてしまうと子供っぽくなりがちなのがモスグリーンです。ミリタリーなイメージが強いですが、実はブラック・グレー・ネイビーなどベーシックなカラーと相性が良くクールなイメージに仕上がります。
街中ですっかり見慣れたキルティングコートの中でも、クラシカルな雰囲気漂うマッキントッシュは別格。無駄のないコンパクトなシルエットで女性らしさをしっかりアピールすると、カジュアルスタイルが不思議と上品な印象に。ダウンは軽くて温かいけど、しっかり着た感が欲しい人にお勧め。ぬくぬくしたボアの温もり、病み付きになりそう…。

とことんカッコよくスポーティに

スキー場では誰しもカッコ良く見えるように、このダウンジャケットを着ると誰もがカッコ良くきまります。そのジャケットとは、スキーウエアとタウンウエアをミックスしたモンクレールの「GRENOBLE」ライン。
モノトーンでまとめたボディはスポーティで、とことんカッコイイ。そしてボリューム感のあるファーがリッチな印象をプラスして、ほんのり女性らしさが薫ります。スリムなパンツにあわせて凛とした表情で愉しみたいアクティブなデザイン。ブルブルと凍えるような真冬も、かわせる一着です。
Love letter(1995日)
岩井俊二の劇場用長編デビュー作。数年前の山岳事故で彼氏を失った、中山美穂演じる女性が主人公です。彼のことが忘れられず、昔住んでいた住所に手紙を出す。すると来るはずのない返事が。しかも返事の主は、彼と同姓同名の女性…。
小樽の冬、まるで降りしきる雪のように揺れては消える恋のお話。生と死、偶然と必然、大人の女と少女の狭間…物語は現実と幻想のあわいを浮遊するように複数のイメージ軸を往復します。
デビュー作ですでに完成したスタイルを示した岩井俊二は、その後「花とアリス」に至って恋愛映画の金字塔を打ち立てることになります。
メンズ使用アイテム
ダウンジャケット(MONCLER GAMME BLEU)
マフラー(GLEN PRINCE)
セーター(FRANKLIN&MARSHALL)
ジーンズ(DSQUARED2)
スニーカー(SERGIO ROSSI)
さらば冬のかもめ(1973米)
ジャック・ニコルソンとオーティス・ヤング演じる下士官どまりの海兵2人が、ランディ・クエイド演じる新兵を刑務所まで護送する。募金箱から40ドル盗んだために懲役8年、青年期を棒にふることになる新兵に同情した2人は、護送の道すがら、せめてものとハメ外しの旅をすることに。
敗北を運命づけられる反抗、虚無感の漂うロードムービーという、典型的なアメリカンニューシネマの構造をもった作品です。バージニア州ノーフォークからカナダにほど近いメイン州キタリーまで北へと向かう冬の旅。どうも冬の映画というのは、季節自体が主人公たちの心理を語るように制作されますね。同じくニコルソン主演の「ファイブ・イージー・ピーセス」もまたニューシネマの一本で、北へ向かうロードムービーでした。
ファッションとの関係でいえば、主人公3人のピーコート姿でも有名な映画です。