もの選びの解像度を上げよう。
「なんか、いいジャケット欲しいなぁ。」「そのジャケット、いいね。」 あなたが普段なんとはなしに使っている「いいジャケット」って、具体的に何をさしていますか。雰囲気?色?生地?シルエット?きっとそのいずれもを、理想的なイメージと好みで結び付けて瞬時的に「いい」という表現になっているのではないでしょうか。本ページでは、そんな「いい」の条件から、生地にフォーカスしています。無限といっても過言ではないほど多種多様な生地。今シーズンモダンブルーの主力となってる商品を例に、代表的かつトレンドを探ってみようと思います。
一見、無地。でも近づくと…
高低差のある生地のこと。映画のトレンドが3Dであるように、生地もまた立体素材でバリエーションを増やしているのが近年の傾向。例えば、遠目でソリッドなネイビー単色であっても、近付いてみると生地はワッフルだったり、ジャガードだったり、唐織やオットマンかもしれないオモシロさが醍醐味。必然的に凹凸が生まれることから、色の濃淡や光の当たり方にも当然影響。色糸で紡がれた能動的な生地に対し、予測がつかない豊かな表情を得られることも魅力のひとつです。
フォーマルなダブルジャケットと、迷彩パンツを合わせた大胆なイメージ。お洒落番長さながらの挑戦的かつ遊び心に溢れたルックで、周囲の視線を釘付けにできること間違いなし。異なるジャンルのミックスに違和感を感じさせないのが、ジャケットに使われたカジュアルな生地のおかげ。ニットマフラーとの質感も似通ってバランスはバッチリ。巧くフォーマルダウンしています。
GIORGIO ARMANI
ヘリンボーン柄をウールニットで立体的に編み込んだ3Bジャケット。ヘリンボーンの上品な陰影が雰囲気に膨らみを持たせています。アンコンジャケットスタイルの、アルマーニらしい柔らかな作り。パッチポケットがアクセントになっています。
GIORGIO ARMANI
多彩な素材を組み合わせ、格子柄を凹凸の立体にしてみせたユニークな生地。ポップな見た目に加え、伸縮性の高い、軽やかで柔らかな風合いも魅力です。ドロップショルダーや、4つボタンの本切羽カフといったディテイルを採用しています。
GIORGIO ARMANI
糸を立体的に交差させ、格子柄を描き出したユニークな生地。シンプルながら凝った生地の作りが、他にはない高級感を演出しています。ヴァージンウールにビスコースなどの化繊を混紡し、ストレッチ性のあるリラックスジャケットに仕上がっています。
LARDINI
上質ウールを使用したホームスパン調のツイード生地。ふくよかな厚み、そして稠密な凹凸と艶があります。本切羽ながらフロントには大判のパッチポケットをデザインするなど、フォーマルとカジュアルのミックススタイルになっています。
OFFICINA36
ハニーコム状の織り柄をあしらったデザインジャケット。トップボタンをミゾオチ部分で留め、Vゾーンが浅めになっているのが特徴的。コンパクトなショルダー、スリムなセットインスリーブなど、今のスタイルを代表するデザイン。
LARDINI
ニットのようなふくよかさをもつ生地は、ウールメインのホップサック生地。ダブルブレストにゴージ位置の高いピークトラペルと、イタリアの伊達男を象徴するスタイルです。まさにファッショナブルな大人のためのジャケット。
ホップサック
この秋冬注目の生地といえば、ホップサックです。通気性が良いため夏の生地、サマーツイードとして知られていますが、今季はいろんなブランドが秋冬素材としてウールツイードのホップサックを発表しています。
ちなみにホップサックというのは、ビールの原料ホップを運んだ麻袋のこと。粗い、カゴの目状の平織になっているのが特徴です。凹凸感からくるザラっとした肌触り、ナチュラルな風合い、ダウン・トゥ・アースな今のファッションの流れも感じさせます。
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濃淡で作る大人の雰囲気
生地を真っ先に印象付けるのは「色」。2トーン濃淡というのは、デザインに関わらず同系2色のコントラストカラーで仕上がっているものをカテゴライズしています。この魅力が顕著に出るのは、凹凸のないフラットサーフィスな生地において。例えば経糸と緯糸に濃淡を使うだけで、奥行きのある豊かな表情が生まれます。シルクやコットン、ウールなど素材糸のバリエーションや、引き揃えやバーズアイ、ツイルといった生地など、多種多様な組み合わせが存在します。
全体のトーンをグレーで統一させたシックなオフスタイル。ジャケットはショールカラーのようにたっぷりしたノッチドラペルが作るふくよかなVゾーンが特徴。大人の貫録を印象づけるキーポイントになっています。Vゾーンから覗かせた白シャツが、暗くなりがちな中で唯一の爽やかさをアピール。清潔感と、危うさスレスレの良好イメージです。
BOGLIOLI
ボリオリジャケットの金字塔ドーヴァー。中でもこちらはウール100%、ネイビー&ブラックのななこ織り生地。透け感を残し贅沢な風合いになっています。リラックス&高フィットの包むような着心地は体験しておきたいところ。
L.B.M.1911
コットン、ウール、シルクをミックスした光沢感のあるツイード生地。遠目にはメランジ素材のようで、近づくと濃淡ブルーを活かしジグザグを描いているのがまた味わい深い。ドレーピーな薄地でリラックスした着用感が楽しめます。
L.B.M.1911
ブラックとグレーの濃淡で渋みのある色合い。紡毛糸によるななこ織りツイード生地が、素材の表情を押し出しています。カフは4つボタン本切羽。フロントポケットはカジュアルなパッチタイプ。背無し仕様で、軽やかな着用感になっています。
L.B.M.1911
こちらも紡毛糸を使ったツイード生地で、温かみのある風合いになっています。艶を帯びたネイビーの濃淡グラデーション、ややドレーピーな生地感で、着用感は軽やか。カフは4つボタンの本切羽。フロントポケットはカジュアルなパッチタイプ。
L.B.M.1911
ほんのりと光沢感をもったチャコールグレー生地は、近づくと濃淡で魚鱗のような模様を描いています。薄地によるドレーピーな作りで、着心地は軽やか。カフは4つボタンの本切羽。フロントポケットはカジュアルなパッチタイプ。
OFFICINA36
ネイビーとブラックによる、ピッチの狭いストライプ柄がシック。カッチリとしたテーラードスタイルを踏襲しながら、セットインスリーブのスリムな作り、高めのゴージ位置と、デザイン性を強く意識した作りになっています。
L.B.M.1911
コットン素材の風合いを生かし、褪せたチャコールカラーに見えるジャケット。近づくと、濃淡グレーの糸がななこ織りになっているのがわかります。ピークドラペルに貫禄のあるダブルブレストで、大人のテイストが全開です。
L.B.M.1911
光沢感のあるチャコールグレー生地は、近づくと濃淡グレーの糸を小紋柄のように織りあげています。紡毛糸を使い、温かみのある雰囲気に。生地は薄地でドレーピーな仕上がりになっており、リラックスした着心地を楽しめます。
LARDINI
段返り3Bジャケットと、センタークリース入りジップフライパンツのセットアップ。ダークネイビーの無地に見えますが、複数の同系色糸がミックスされた平織生地になっています。艶感があり、エレガントな雰囲気を楽しめる一着。
L.B.M.1911
6つボタンフロントを採用したジレで、生地はウールをベースにしたななこ織りツイードです。ブラックとダークグレーの紡毛糸で織り柄を描き、大人の表情を演出。引き締まったウエストラインが今のシルエットを描いています。
L.B.M.1911
左と同じ6つボタンスタイルのジレですが、こちらは濃淡に違いのあるブルー系の糸を織り込むことで細かい柄を描いています。紡毛糸によるツイード生地が温かみのある風合い。アームはざっくりと開いたスタイル。
L.B.M.1911
同じくジレ、こちらはほんのり光沢をもったダークブラウンカラー。やはり濃淡に違いのある糸を織り込むことで近づいて知れる柄を描いています。遠目にはメランジのような雰囲気。薄地でドレーピーな着心地が楽しめます。
L.B.M.1911
グレーの濃淡で魚鱗のような模様を描いたジレ。ウールをベースに、ポリエステル、ポリアミドを混紡したツイード生地で、光沢感、ドレープ感が出ているのが特徴です。5Bシングルフロント、ウェルトポケットのオーセンティックなスタイル。
L.B.M.1911
左に同じく、5Bシングルフロントのクラシカルなジレ。こちらはグリーンとブラックのヘリンボーン柄になっています。ウールにアクリルを混紡しているため伸縮性は強く、トラッドなスタイルを今日的にアレンジした一着になっています。
1トーン? …ズームすると多彩な糸が。
名前の通り、複数色が入った生地のこと。代表例はシャネルツイードやタイシルクなど。基本的には意匠糸を用いたものが多く、複雑に絡んだ多彩なカラーによって生み出される色彩の妙が堪能できます。よって先に挙げた例以外でも、引き揃えやツイル、ニット、ジャガードもこのカテゴリに入るものが多数あります。
全体をシックにまとめたアダルトなイメージ。ワントーンのパンツとシューズ、ニットのコンビネーションに対し、素朴な味わいを持ったツイードジャケットの存在感が絶大。ヌケのある着こなしを実現させた上級のこなし方です。
LARDINI
遠目にはメランジの入ったグレー。近づくとブルー、ブラウン、アイヴォリーという複雑な生地。その効果は確かで、醸し出す雰囲気は一段違います。ウールにモヘア、アルパカなど多彩な素材で仕上げているのも特筆です。
LARDINI
濃淡グレーのベース地に挿すレッドのペンシルストライプ。グレーのスーツなんだけどやや赤みを帯び、それが微妙な色気となっています。ウール地にエラステインを混紡し、豊かなドレープと伸縮性を産みだしています。
LARDINI
同じくスーツですが、こちらは濃淡グレーのベース地にアイヴォリーが混じり、メランジのような効果が出ています。ジャケットはゴージが高いノッチドラペル。立体メイクのアームや身頃で高いフィットを実現しています。
LARDINI
こちらのスーツはダークネイビーをベースカラーに、ワインカラ―がシックなアクセントを加えています。豊かなドレープ、伸縮性、そしてやや光沢感があり、洒脱な雰囲気。パンツはテーパーが緩やかに入った細身の作り。
LARDINI
ウールやモヘア、アルパカなど多彩な素材のミックスで完成した、今注目のファンシーツイード。糸もブルーにブラウン、アイヴォリーと複雑な構成になっています。ちなみに後ろ身頃はコットンツイル地で、あくまでカジュアルな雰囲気。
ヘリンボーン
イメージは重厚。トラッドスタイルによく合い、高貴な柄といわれるのがヘリンボーンです。
英語で「ニシンの骨」という意味で、その名の通り魚の骨に似た模様を描いています。日本では杉綾ともいいます。
互い違いになった斜め線が光の反射角度を変化させるため、生地は光沢感に富むほか、平織より厚みがあるため重厚感もあります。
大人の渋い魅力を引きだすにはもってこいの柄で、とくにメンズの秋冬ジャケットにおいては、外せない選択の1つ。
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大人はやはり霜降り。
「メランジ」とはフランス語でいうところの混合。実態は梳毛の染色糸とそうでない糸を一緒にしたり、異なる色の羊毛をミックスして紡績したものです。そこから発展して、単に霜降りをイメージさせたものに「メランジ」という名前が使われることも多くあります。いずれにせよ、素朴で温かみのあるニュアンスを伝えることのできる素材です。
ネイビーのソリッドパンツと霜降ジャケットのアンサンブルは、清潔感と牧歌的なイメージのミックス。飽きのこない表情が生まれると同時に、新鮮さを印象付けるファッショナブルなフォーマルコーディネイトになっています。
LARDINI
英国ハンティングジャケットをアレンジした一着で、ダークネイビーをベースに、ベージュ系の明るめのカラーで杢を描いています。起毛処理された表面は温かなイメージ。テーラードの技術でアウトドアスタイルを描いた個性的なデザイン。
LARDINI
段返り3Bジャケットに、ジップフライパンツのセットアップ。ダークトーンのグレー地に細かな杢が織り込んであり、いわゆるプレーンなチャコールグレーのスーツと比べると雰囲気もソフト。極細番手梳毛糸のウールツイル地。
L.B.M.1911
ブルー系の糸にグレーをミックスし、まるで夜空に雪が舞うような柔らかい雰囲気を演出した一着。紡毛糸を部分的に使い、風合いに変化をつけている点も注目です。薄地によるドレーピーな作りで、リラックスした着用感が楽しめます。
L.B.M.1911
ブラック糸とグレー糸を巧みにあしらったジレ。生地自体がヘリンボーン柄になっており、さらにその上にグレー糸をループ状にしてプレス加工を施すことで、ヴィンテージ感さえ感じさせる、素朴でぬくもりのある独特の風合いが生まれています。
L.B.M.1911
赤みの強いビターブラウンにアイヴォリーが混ざったようなメランジ生地で、軽めの起毛仕上げになっています。後ろ身頃も同じ素材を使用しているのが特徴的で、さらに裏面がボタニカルのプリント柄になっているのはユニーク。