手作りアロマスティックで嗅覚トレーニング
アロマ
2022.10.27

手作りアロマスティックで嗅覚トレーニング

こんにちは。ライターのおおうちです。

「嗅覚トレーニング」をご存知でしょうか。
「嗅覚リハビリテーション」や「嗅覚刺激法」として紹介されることもありますが、新型コロナウイルス感染症の後遺症としておこる嗅覚障害の対処法のひとつとして、近年注目されているトレーニング法です。

実は、私も先日新型コロナ陽性となり、嗅覚障害を経験しました。
ある日突然、何も香りがしなくなり、食べものが美味しくなくなったときには愕然としました。私は数日で回復しましたが、この機会に嗅覚トレーニングを手軽にできる方法がないかと考えましたので、ご紹介したいと思います。

また、今回クラフトでご紹介するアロマスティックは、嗅覚障トレーニングのツールとしてだけでなく、疲れた時のリフレッシュ、気持ちのリセットにも役立てていただけますので、あわせて参考にしていただけたら幸いです。

そもそも嗅覚障害とはなぜ起こるの

嗅覚のメカニズムは、匂いの成分が鼻の中を通り、鼻の穴の奥、鼻の付け根のあたりにある「嗅粘膜」に到達すると、嗅神経を通って脳へと伝達され、匂いと感じるというもの。

新型コロナウイルス感染症の影響で発症する嗅覚障害は「嗅神経性嗅覚障害」といわれるタイプ。ウイルス感染により嗅粘膜にある嗅神経がダメージを受けて匂いを感じ取れなくなる障害です。

嗅覚障害には上記の他に、匂いの成分が嗅粘膜に到達できなくなることによる気導性嗅覚障害(原因の多くが「副鼻腔炎」による)や、頭部の怪我や病気の影響で脳がダメージを受け、匂い成分の情報を脳が受け取れなくなり匂いが判別できなくなる「中枢性嗅覚障害」もあるそうです。

近年注目されている「嗅覚トレーニング」は上記の「嗅神経性嗅覚障害」のトレーニングとして研究が進められているようです。

嗅覚系の神経は、感覚神経としては珍しく、生涯を通じて細胞が再生され続けるというユニークな仕組みがあるといわれています。しかしこの再生された細胞は、生まれてから1,2週間以内に匂いの刺激を得られないと、細胞死が起こってしまうこともわかっているそうです。
嗅覚の仕組み、興味深いですよね。

嗅覚トレーニング法について

嗅覚トレーニングについては、2009年ドイツにて、嗅覚障害のある方が、バラ・ユーカリ・レモン・クローブの4種類の香りを朝晩、1日2回ずつ、10秒間嗅ぐことで、嗅覚障害のある方が嗅覚トレーニングを行わなかった方に比べて改善がみられたという結果が発表されました。また、2015年には上記のトレーニングを12週間行ったあとにメントール、タイム、タンジェリン、ジャスミンの4種類、または緑茶、ベルガモット、ローズマリー、ガーデニア(クチナシ)の4種類をさらに12週間おこなったほうが改善の度合いが高かったという数字がでているようです。

また、WHO(世界保健機関)が発表した「リハビリテーションのためのサポート:COVID-19関連疾患後の自己管理 第2版」(※注1)によると、コロナ疾患後に嗅覚や味覚が低下している場合のアドバイスとして、

– 1日2回の歯磨きで口腔内の衛生状態を良好にする。
– 1日2回、レモン、ローズ、クローブ、ユーカリをそれぞれ20秒ずつ嗅ぐなどの嗅覚トレーニングを行う。
– 唐辛子、レモン汁、フレッシュハーブなどのハーブやスパイスを試して、食べ物に風味を加える。ただし、これらは胃の逆流を悪化させることがあるので注意する。

といったことが推奨されているようです。

※注1

WHO「Support for rehabilitation: Self-management after COVID-19-related Illness second edition」(2021)より↓
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/344472/WHO-EURO-2021-855-40590-59892-eng.pdf

嗅覚トレーニングに使う精油

現在、嗅覚トレーニングにおいては、バラ、ユーカリ、レモン、クローブの4種の香りを紹介されることが多いですが、国内でも日本人に馴染みのある香りを使った臨床試験が進行中だそうです。
ということは、トレーニングを行う方が認識しやすい系統の異なる4種類の香りを意識して嗅ぐことが重要なのだと思います。そこで、今回は、提唱されている4つの香りとともに、私なりのアレンジ精油もご紹介したいと思います。

一つ目はお花の香りです。
ローズAbs.は加熱せずに抽出された精油なので、バラそのものの香りを感じることができます。ローズの精油というとかなり高価なものとされていますが、開花直前の香り成分が揮発する前のバラをひと花ずつ採取して抽出され、2000個のバラからわずか1mlしか採れないという大変貴重な精油なので、それも納得です。マンデイムーンさんにはテスターや2mlの少量から販売されており、トライしやすいと思いますので、是非お試しいただきたい香りです。

ローズはちょっとハードルが高いなと言う方には、ローズゼラニウムカモミールローマンなどでもOK。
また、ホワイトマグノリアもおすすめしたい精油です。
モクレン科のお花からとられる精油で、懐かしさを感じる優しい香り。
鎮静作用に優れたリナロールを主成分とするため、不安や緊張を和らげる効果も期待できます。

2つ目は柑橘系の精油です。
レモンの爽やかな香りは、アフターコロナのやる気が出ないときにおすすめです。
すっきりと気持ちを切り替えてやる気を後押ししてくれます。
レモンの他にも、柑橘系で馴染みのある香り、ということで、オレンジスイートグレープフルーツマンダリンなども使えると思います。
いずれもあらゆる年代の方に好まれる香りで、リラックス効果も高い精油です。

3つめのユーカリは、ユーカリプタスをおすすめ。
くっきりとした清涼感のあるハーブウッディーノートは、呼吸器系を整えてくれますし、自宅療養で感じやすい閉塞感からの開放も手伝ってくれます。
同じく1.8シネオールを主とするラヴィンサラやローレルもおすすめですが、ローズマリーシネオールペパーミントなど、ご自身がイメージしやすい香りをセレクトしても良いかと思います。

4つ目については、クローブもいいですが、同じくフェノール類のオイゲノールを主とするシナモンリーフもおすすめです。
また、より香りに馴染みのあるものとしてコーヒーカカオバニラなどもイメージしやすいかと思います。

アロマスティックで嗅覚トレーニング

さて、4タイプの精油についてご紹介しましたが、
どのようにトレーニングしたら良いでしょうか。

精油瓶から直接香りを嗅ぐ(この場合は、直接鼻を近づけるのでなく、精油瓶をもって手で仰ぐようにします)、または、ティッシュに滴下してそれぞれの香りを嗅ぐという方法もありますが、続けるためには、毎日手軽にトレーニングできるのが一番ですよね。

今回はご自宅だけでなく、オフィスなどお出かけ先でも
手軽に使える「アロマスティック」での嗅覚トレーニングをご紹介します。

■材料
エッセンシャルオイル 4種 各2滴
フロストリップバームチューブ[M] 4本
コットン 2枚
ラベル用シール

■作り方

1. コットンを半分にカットします。

2.1でカットしたコットンをリップバームチューブに詰めます。
リップバームチューブの芯の部分を囲むようにして
コットンを丸めて差し込むと作業しやすいです。

3.2.のコットン部分に精油を垂らします。
チューブ部分に精油が直接触れないように注意してください。

4.蓋をしめて、ラベルを貼ります。
ラベルを貼った上にメンディングテープ(なければセロハンテープでも可)で
ぐるりと巻き留めておくと剥がれにくいです。

5.残りの3本も同様に作業し、合計4本のアロマスティックを作ります。

■使い方
4種類のアロマスティックを1日2回、それぞれ10秒間ずつ嗅いでトレーニングします。
1本ずつキャップを外し、香りを嗅ぎます。
嗅覚が低下していても、それぞれの香りをそのイメージをしながら嗅ぐことで、嗅神経の再生を促すことができるそうです。
精油の種類にもよりますが、1週間程度で香りが薄くなりますので、適宜精油を追加してください。

【保存について】
しっかりと蓋をして、直射日光の当たる場所や高音になる場所をさけて
保存してくさい。

いかがでしたでしょうか。

長引くマスクの生活により、嗅覚を使う機会も少なくなってきているかと思いますが、この機会に改めて、香りに意識をむけた生活をお勧めしたいと思います。

今回は手軽に持ち歩けるアロマスティックをご紹介いたしましたが、もっと手軽に、という方には、精油を使った天然素材のコスメを時間や日によって使いわけるというのもいいかもしれません。

いずれの場合にも、その香りに気持ちを集中させ、認識しながら嗅ぐことがトレーニングになりますので、日常のなかでもお庭や公園の花や植物の自然の中の香りや、果物やスパイスの香りなど、ご自身が心地よく感じられる香りを意識して嗅いでみていただけたらと思います。

注記)
嗅覚トレーニングの効果についてはかなり個人差があるようです。意識して匂いを嗅いでいるのに匂いを感じにくいという状態が1ヶ月以上続くようでしたら、また、何か違和感や不安なことがありましたら、最寄りの医療機関や相談窓口(コールセンター)に連絡して、相談することをおすすめいたします。


 


ライター:おおうちなみ
アロマテラピーインストラクター。ハーブ&ライフコーディネーター。「香りのある暮らしをもっと楽しく」をテーマに、暮らしに取り入れやすいアロマクラフトやコスメ作りなど、様々なアイデアを提案しています。

コラムで紹介した商品

ホワイトマグノリア・エッセンシャルオイル

ホワイトマグノリア・エッセンシャルオイル

アジアの熱帯地域で栽培されている、マグノリア・アルバの花から抽出されたエッセンシャルオイルです。南国の甘い花の香りの中に緑茶のような清涼感を併せ持つ、エキゾチックな香りが特徴的です。鎮静作用に優れたリナロールを主成分とするため、不安や緊張を和らげる効果が期待できます。また、皮膚の弾力を高めるはたらきがあるといわれており、アンチエイジングにも効果的です。

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ローズマリーシネオール・エッセンシャルオイル

ローズマリーシネオール・エッセンシャルオイル

マンデイムーンのローズマリーシネオール・エッセンシャルオイルは、スペインで栽培されたローズマリーシネオール(Rosmarinus officinalis)の葉を持続可能な方法で収穫し抽出しました。
ローズマリーは浜辺に生息し、花が雫のように見えたことから"Rosmarinus"(海の雫)という学名を持つ植物です。シネオールの成分が多く含まれ、特有のさわやかですっとした香りが特徴です。
エイジングケア効果があるので、スキンケアコスメや石鹸、入浴剤などはもちろん、フェイシャルや全身トリートメントにもおすすめです。

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バニラAbs.・エッセンシャルオイル・オーガニック(油溶性)

バニラAbs.・エッセンシャルオイル・オーガニック(油溶性)

お菓子などにもよく使われる甘く温かみのある香りのエッセンシャルオイルです。
芳香成分バニリンはフェロモンと同じ働きがあり、心の安らぎや幸福感を与えてくれます。
植物の育成、バニラ豆の収穫、熟成には多く手間がかかるため、高価なエッセンシャルオイルとして知られています。
オイルになじみやすい性質のエッセンシャルオイルです。キャリアオイル、クリームに加えてスキンケアに。キャンドル、アロマワックスに加えても香りをお楽しみいただだけます。

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