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 > 知れば知るほど奥深い 磧本ソムリエのワイン講座 > LESSON#031 ワインと楽しむこぼれ話

ワインと楽しむこぼれ話
 ワインの楽しみのひとつに、「“面白こぼれ話”にグラスを傾ける」というのがあります。ワインに関するウンチク話は多くの本で語られていますから、ここでは、私自身の貴重な体験をメインにお話いたします。本邦初公開ですが、ワインの味が数段アップすることを祈ります!
カロン・セギュールの恋 「カロン・セギュール」。ハートのエチケットで大人気ですが、実は、僕にも「胸キュン!」の思い出があります。

 以前、My Wine CLUBでもご紹介しました「カロン・セギュール」。ハートのエチケットで大人気ですが、実は、僕にも「胸キュン!」の思い出があります。
 フランスでの修行時代のこと。一目惚れしたマドモアゼルがいたのですが、ある日、サンテミリオンの丘のレストランで食事をするチャンスがやってきました。僕は有頂天になり、1937年のカロン・セギュールを注文したのです。テーブルキャンドルのライトに照らされながら窓辺の席に座る彼女の美しさに見惚れてしまった僕は、手元が狂ってボトルを倒してしまったのでした。僕の頭は真っ白になりましたが、みるみるうちにテーブルクロスの赤いシミが大きなハートマークを描いて…。カロン・セギュールが僕の心を表現してくれたのです。

バラの代理はロゼに限る その映画は、初めてのランデブーで、男性が女性に赤いバラを一輪プレゼントし、女性が笑みを浮かべて感動する、というストーリー。

 これも僕の恋物語です。日本のレストランでのことで、やはり初デートでした。どなたでもそうだとは思いますが、好きな方と一番最初に食事をするときは緊張も張り切りも全開になるものです。「よし、前に観た外国映画のワンシーンを真似しよう!」と思い立ちました。その映画は、初めてのランデブーで、男性が女性に赤いバラを一輪プレゼントし、女性が笑みを浮かべて感動する、というストーリー。…ですが、僕のデートの約束時間がとても遅かったため、フラワーショップが一件も空いていなかったのです。がっかりしましたが、そこで名案が閃きました!レストランに着いた僕は彼女に言いました。「外国では愛する女性にバラの花を一輪差し上げるのですが、僕はバラの代わりにあなたにロゼを贈ります」と。キザですね!

アラン・ドロンはロゼマニア!? アラン・ドロンは一時期、世界一の美形として有名でしたが、自身のバースデー・パーティーで、すべてロゼを使用したパーティーを開いたというから驚きです。

 「太陽がいっぱい」などの名作で日本でもお馴染みのフランスの男優、アラン・ドロン。一時期、世界一の美形として有名でしたが、自身のバースデー・パーティーで、すべてロゼを使用したパーティーを開いたというから驚きです。シャンパーニュもロゼなら、メインとなるワインもすべてロゼ。どんなメニューか想像もつきませんが、料理もピンクに近い色だったといいます。会場内のインテリアも、テーブルクロスからカーテン、部屋を飾る花まですべてピンク色一色。この趣向には賛否両論があり、「素晴らしい!」と絶賛する人と、ひんしゅくして眉をひそめる人。でも、少なくとも女性からは好評だったといいますから、さすが「女心を知り尽くしたアラン・ドロン」と感心したものです。

ぶどうの岩盤浴!? 実は畑にあった石は、ぶどうの生育のための必需品なのです。

 ワインの勉強でコート・デュ・ローヌ地方を最初に訪れたときのこと。畑に大きな石が置いてあるのには驚きました。角の取れた丸い石が、ゴロゴロとぶどう畑を覆っているのです。自分はワインの勉強中で見習いの身でしたから、「大切な畑に大きな石を置きっぱなしにして!」と、「働き者のムッシュ磧本」をアピールするために腕まくりし、石を退かそうとしたところ、雇い主が「やめてくれ~」と大慌てしていたのです。実は畑にあった石は、ぶどうの生育のための必需品でした。石が昼間の太陽熱を吸収して、夜間にその熱を放出しぶどうの実をより熟させていたんです。さながらぶどうの岩盤浴ですね。美味しいぶどうを生育させるために必要な石を捨てようとしたわけですから、知らないというのは恐ろしいです…。

ワインの香りで名推理 ワインにとって温度は重要な要素ですが、それを深く感じた体験が、まだあります。

 4時間目でもお話したように、ワインにとって温度は重要な要素ですが、それを深く感じた体験があります。私のお店にある方がワインを持って来て、早速それをテイスティングしました。そして、その方に尋ねました。「このワインは午後になると陽が射してくるようなお部屋に保管していませんでしたか?そして、そこには本がたくさん置いてありませんか?書斎でしょうか?」と。お客さまは目を丸くされました。ワインをテイスティングしたときに、畳イグサの香りとカビ系の匂いが、微かにしたのです。そこから、西陽のあたる部屋だという推理が働きました。プラスして、陽に焼けた本独特の匂いも感じられたのです。棚に本がたくさん揃っている場所というと、まず考えられるのは書斎。大当たりでした。ワインには匂いが付きやすいですが、それは温度管理と密接な関連があるという好例でした。