真面目に、一途に、うなぎ師達のストーリーがはじまります。
美味しい鰻の理由、その一
鰻師
鰻と共に24時間の生活です
鹿児島県志布志市にある山田水産株式会社の有明事業所は、日本で最大級の養鰻場を持ちます。地下深くの美しい湧き水を使い、我が子のように手塩にかけて、うなぎを養鰻場で育てます。養鰻場では、鰻師と言われる従業員が5つのブロックに分かれて、鰻を管理しています。リーダースタッフは住居も、敷地内に構え、鰻と共に24時間の生活です。
各養殖池の水温、水位、水流等は、中央制御盤にて24時間集中管理をして鰻を見守ります。
鰻はストレスに弱く、成長にバラつきが出るため、100,000尾以上いる中から、サンプルを取り体重測定をし、鰻の成長具合を管理します。50〜60日間のサイクルで成長に応じて、同じ大きさの鰻ごとにグループ分けを行い、きれいな養殖池へと移し育てるのです。
そして、山田水産は、無投薬養殖へ挑戦し、2005年、日本で初めて鰻の無投薬養殖を実現しました。
取り組み当初は、45%もの鰻を失うこともありましたが、稚魚から成鰻まで完全無投薬の養殖に成功しました。
「安心・安全な鰻をお客様に提供したい」という想いからの取り組みなのです。
1日2回の水質検査を欠かしません。
養鰻場の水は、地下70mより汲み上げる地下水です。水温・水質・酸素量などを厳しく徹底的に管理していきます。鰻と共に朝を迎え、鰻の様子を観察しながら各池の水を採取します。1日に2回行われる水質検査で、PH値、亜硝酸、アンモニアを測定して水質をチェックし、結果はデータ化して保存します。水の入れ替え量などの判断は、検査結果によって決定します。すべての養鰻池の水温や水位・水車の状態を24時間、コンピュータで集中制御します。給排水も自動で行なっています。万が一、池に異常が発生したときは、担当スタッフに自動通知されます。まさに水づくりこそ、鰻養殖のカギになるのです。
作り置きしない、こだわりの鰻の給餌
餌の主原料はイワシやスケトウダラなどの魚粉や魚油です。
不足しがちなビタミンを補うサプリメントを加え、これに水を加えて餌練り機で餅状になるまで練り、鰻の成長や食欲に応じて粘度や給餌量を調整します。
給餌は早朝5時と午後3時の2回。鰻は稚魚のときから餌付けされ、給餌時間が体内時計として刻み込まれているため、時間になると餌を求めて集まってきます。餌はつくり置きをしないで給餌の度に1回ずつ練り、新鮮な状態です。
鰻の食べっぷりは、勢いで餌のかたまりが持ち上がってしまうほど。この時の鰻が発する体調のサインを見逃さないよう注意深く観察します。そして、食べすぎは病気の原因となる為、毎回の給餌量を記録し観察します。「鰻を病気にさせないこと」そのため鰻師は、養鰻場に住居を構え、家族と共にそこで暮らし、24時間体制で鰻と寝食を共にするのです。
美味しい鰻の理由、その二
割師・焼師
プロの手仕事割師・ふっくら仕上げる焼師
極上の鰻の蒲焼を完成させる為、鰻師から隣接する工場の割師・焼師にバトンが渡されます。
隣接する養鰻場から移された鰻は、地下70mから汲み上げた良質の地下水で48時間以上かけて体内浄化して身を引き締めます。氷で締めて仮死状態にした活鰻を一尾ずつ割きます。
一日に2000尾を割く割師の腕前は、プロ中のプロ。そして、手塩にかけて育てた鰻を、最大限に美味しく焼き上げるのが焼師の仕事になります。
品質を決める白焼き・旨味を凝縮させる炭火焼工程
蒲焼きの品質を決めるのは白焼き。白焼きと蒲焼きの工程で合わせて16個の炭箱を設けています。炭火を使うことで、鰻の余分な水分と脂分を飛ばして、鰻本来の味を凝縮させることができます。
加工ラインには、炭火焼工程を導入しており、炭の遠赤効果で旨味が凝縮され、香ばしく仕上がります。皮目を焼いた鰻の尾の焦げ部分をカットして形を整えたら裏返して、腹目を上にして焼きます。表面ににじみ出てきた余分な脂肪分はシャワーで洗い流し、その後、全長約17mの大型蒸し機に約7分30秒くぐらせ、ふっくら肉厚に蒸しあげます。
手塩にかけて育てた鰻を、美味しく焼き上げるのも焼師の腕です。
タレも吟味し、焼きにこだわった炭火の本格蒲焼きです。
蒲焼きは、こだわりの4度焼き
蒲焼きは、こだわりの4度焼きです。鰻が最も美味しく仕上がると言われるこの方法でタレにつけて焼く工程を4回繰り返し、じっくり焼き上げます。
1〜3回目までは同じ焼きタレの槽を通り、30分に1回は、焼きタレの糖度と温度を測定します。そして、4回目の焼きは、焼きタレよりやや粘度の高い「仕上げタレ」の槽を通って艶を出し、香ばしく焼きあげます。この手法を機械化することで、鰻専門店にも負けない味を作り出すことができるのです。
焼き上がった鰻を急速冷凍
丹念に焼き上げた蒲焼きの美味しさを閉じ込めるため、焼き上がった鰻は-20℃以下に急速冷凍します。フリーザーの倉内温度や蒲焼の中心温度は、1時間に1回測定をします。
実は、焼き上がった直後の蒲焼きは、まだ味がよく染み込んでいません。冷凍することで味がゆっくりなじんでいき、解凍して食べるときに最もおいしい状態になるよう焼きあげています。冷凍した鰻は金属探知機を通り、安全な状態を確認してからの出荷となります。