刺しゅう作家インタビュー 小倉ゆき子

本日は、様々な種類の刺繍など、自由な発想で「針仕事」の創作に携わって来られた、手芸デザイナー 小倉ゆき子先生にお話を伺いたいと思います。
とても楽しみにしておりました。どうぞ、よろしくお願いいたします。

シュゲールでは、最近、刺繍を楽しまれるお客様が徐々に増えてきている、と実感しています。
長年に渡り、これまでに、携わって来られた作品、手法は数知れず様々かと思いますが、まずは「針仕事」をはじめられたきっかけを、お伺いできますでしょうか?

子供の頃から、何か考えたものを形にするのが大好きでした。小学校迄の間は着るものなど母が作ってくれていましたが、中学生になってからは、材料など布はいくらでも買ってあげるから自分で作りなさいと母から云われ、制服以外のふだん着はほとんど自分で作っていました。
しかし、刺しゅうとの出会いは大人になってからです。

もしかすると、刺繍は刺繍糸でするものだと思っている方、また、クロスステッチが刺繍だと思っている方も多いのかもしれません。
数々の作品の中から、いろいろな技法や素材を使った作品を、ご紹介していただけたらと思います。

ダイステッチワーク

染める「ダイ」と刺しゅうの「ステッチ」を合わせた手法です。「ダイステッチワーク」と名付けました。

フルール・ダムール

刺しゅう糸で花を作ります。刺しゅう糸を切る、結ぶ、そして組み合わせて作品にします。

線 刺しゅう

DMCの刺しゅう糸で作られているパスマントリー(紐など)をほどきながら刺しゅうをします。マイナスしていく、珍しい刺しゅうです。

ビーズ刺しゅう

より美しく、簡単に刺せるように考えました。ビーズの数でそれぞれのステッチを刺します。

リボン刺しゅう

新しい刺しゅう用リボンは今、日本が世界に誇れるもののひとつです。そして、そのリボンならではの新しいステッチも沢山私が考案しました。

ありがとうございます。多くの中から一部しかご紹介できないのが残念です。
刺繍糸以外の素材を取り入れ、どんな糸でも刺してみたいと思われた、チャレンジの精神は、本当に素晴らしいと思います。見る者をワクワクとさせる「発想力や工夫力」は、どのようなところから湧き出てくるのでしょうか?

何にでも興味を持って、ワクワクするものを沢山見たり聞いたりして来ました。お芝居やコンサート、展覧会 などなど。
まずは、自分の目でたしかめて、手を動かす。
今もあれこれ知りたい事がいっぱいです。

ここ20年ほどは、リボン関連に多く携われているとのことですが、立体感があり、見た目にも華やかな、リボン刺繍は見る人のこころをくすぐり、 やってみたいと思われている方も多いように感じております。ラッピング用のリボンと、刺繍用のリボンは、違いますか?適したリボンを選ぶコツのようなものはありますか?

刺しゅう用リボンとラッピング用リボンとは、とても大きな違いがあります。幅などの違いもありますが、何よりもラッピング用では針は使いません。刺しゅう用のリボンは針に通して何らかの布に刺しゅうをします。その為、素材はとても重要です。今、世界のどこよりも刺しゅう用のリボンは日本にあります。まずは基本的な細くやわらかいリボンから手がけられたらと思います。

リボン刺繍が、かつては、ヨーロッパ貴族の衣装や、持ち物を華やかに飾ったと思うだけで、心も浮き立ちます。現在では、フランスや中国でも人気だと伺っていますが、今、海外では、どんな場面で使われているのでしょうか?

時代が変わりヨーロッパでも貴族社会ではなくなり、華やかな衣装は昔の事となったと思います。
かつての絹のリボンとは素材の違う日本のリボンで、お楽しみとしてリボン刺しゅうもなさっているようです。
フランスでも、私のリボン刺しゅうの基礎の本が出版されています。

今後のご予定や、ファンの方へメッセージなどございましたら、お願いいたします。

10年程前から台湾にリボン刺しゅうの講習に出かけており、多くの講師も育ちました。
今秋は中国にも出かけます。今はビーズ刺しゅうの基礎と作品の出版予定(パッチワーク通信社)で手がけております。
そして来年は、再度ダイステッチワークにも力を入れたいと思っております。
皆様方も一つの技法だけでなく、あれこれいろいろと楽しんでいただきたいと思います。

【あとがき 】
50年間休みなくお仕事を続けて来られ、さらに知りたい事、やりたい事がいっぱいの小倉先生に、パワーをいただいたような気がいたします。
本日は、お忙しい中、お時間を割いていただき、素敵なお話をありがとうございました。




小倉ゆき子

手芸デザイナー
桑沢デザイン研究所卒業後、子供服のデザイナーから手芸デザイナーへ。
主婦の友社で最初の手芸のお仕事をいただいてから、今年で50年になります。
その間お休みはありません。ずっと、きのうの続きです。