キリン カフェインゼロ生茶 開発者インタビュー

7月6日 神奈川県横浜市にある京急電鉄・生麦駅。 とっても天気がいい日でした。
この生麦駅から徒歩10分、株式会社キリンさんの研究所へ取材してきました。
こちらにはキリンビール横浜工場もあり、工場に近づくと かすかにホップの香りがする、そんな所でした。
ちなみに生麦駅周辺の商店街にはキリンさんの旗が!
ビール工場は90周年なんですって!
周辺の居酒屋さんはキリンビール押し!当然ですね笑
しかし今回お話を聞くテーマはビールではありません。
当店でも大人気の「カフェインゼロ生茶」など「カフェインゼロ飲料」についてになります!
2014年に世界初となるカフェインゼロ緑茶飲料を開発したキリン株式会社 R&D本部 飲料技術研究所の主任研究員・塩野貴史さんに直接お話を伺えるということで和歌山県から神奈川県のこちらの研究所までやってきてしまいました!

世界初のカフェインゼロの緑茶 キリン カフェインゼロ生茶>>

「カフェインゼロ生茶」をはじめ、「午後の紅茶」シリーズのカフェインゼロの開発も行っていらっしゃるとのことで、カフェインゼロ飲料について濃いお話が聞けそうで楽しみです。


研究所、外から見るとかなり大きいです。
キリンさんのロビーではペッパー君も出迎えてくれました!
さらにこのロビーには、このカフェインゼロの開発をした際に塩野さんが受賞された安藤百福賞も飾ってありました。金ぴかです。
今日はそんな塩野さんにカフェインゼロについて色々とお話を伺います!
こんな感じでインタビューは始まりました笑
今までになかった「カフェインゼロのおいしい緑茶飲料」を!
今日はよろしくお願いいたします。
塩野さんが所属されてる飲料技術研究所ではどれくらいの方が研究されてるんですか?
飲料技術研究所で30名ほどです。
R&D本部(研究開発本部)で6つの研究所がありましてそのうちの一つになります。
ビールを中心とした酒類技術研究所をはじめ、商品のパッケージや容器の研究をしてるパッケージング技術研究所なんていうのもあるんですよ。
へー。パッケージ専門の研究所もあるんですね。
そうなんですよ。R&D全体では約300名ほど研究してます。
それでは早速塩野さんがリーダーとして開発されたカフェインゼロ生茶についてお話をお聞きしたいんですが、カフェインゼロへの取り組みはいつ頃からはじまったのですか?
キリンビバレッジとして2007年頃からカフェインオフの緑茶に取り組んでおり、2009年には私も開発に関わったカフェイン50%オフの「やわらか生茶」を発売しました。
はい。
そして、2010年に「カフェインゼロ」の緑茶を目指して研究をスタートしました。
そのなかでのカフェインゼロを目指されたわけですね。
当時いろいろなノンカフェイン飲料があったっと思いますが緑茶でカフェインゼロを目指されたのはなぜですか?
緑茶自体は非常に多くの方に飲んでいただいてる飲料であったんですが、当時キリンの「やわらか生茶」をはじめ、他社でもカフェインをほぼ除去した緑茶はまだありませんでした。
そこで生まれたアイディアが「カフェインゼロのおいしい緑茶飲料」です。
まだ誰も出来ていないことに挑戦されたわけですね。
はい。そして2014年4月に「やさしさ生茶カフェインゼロ」として発売を開始しました。
今までにない方法でのカフェイン除去!
これが世界初のカフェインゼロ緑茶となったわけですね。
カフェインはどのようにして、除いていくのですか?
カフェインクリア製法と言って、緑茶の液体の状態から吸着剤を使ってカフェインを除去していきます。
へー。

カフェインクリア製法

それまでは茶葉の状態から熱湯などでカフェインを除去する方法が一般的でしたが、それだとカフェイン以外にも味わいや香りの部分も失われてしまって緑茶本来の味わいにはならなかったんです。 それにカフェインも完全に除去することは出来ませんでした。
それで今までとは全く違く方法でのカフェイン除去となったんですね。
このカフェインクリア製法を使って、もともとの緑茶の味や風味をそのままにカフェイン除去をしています。
吸着剤を使ってカフェインだけを吸着して、ほかの成分はほとんどそのままになってます。
実際に飲んでみると本当に普通の緑茶というか、カフェインが入ってないことで違和感を感じるところはないですね。そもそもカフェインって味があるものなんですか?
カフェイン自体は少し苦味があるんですが緑茶にももともと苦味があり、カフェインを除去しても味に影響はほどんどありません。
へー。吸着剤を使ってカフェイン除去をしてるそうですが、この吸着剤を使うっていうことはほかの食品などでも使われてる方法なんですか?
いろいろと使われてます。一般的には浄水器に使われているのもこう言ったものですね。
カフェインゼロ生茶では食品に使用されてきた天然吸着剤を使っています。
そうなんですね。この吸着剤を見つけるまでは実際どれくらい試されたんですか?
美味しさとカフェイン除去を両立するのは吸着剤を使っての方法で出来るだろうと思ってましたが、その吸着剤に最適な素材を探すまで1年以上かかりました。
カフェインだけを除去できるものが見つかるまで100種類以上は試しましたよ。
1年もかけてこの最適な素材を見つけたんですね。 この吸着剤でどれくらいまでカフェインを除去できてるんですか?
吸着剤を使って100mlあたりのカフェイン含有量0.001g未満まで除去しています。
完成までには失敗も
100種類もの吸着剤を試されたときに失敗談などありましたか?
吸着剤によって主に吸着をする成分が違っていて緑茶のうまみ成分や健康成分である「カテキン」や「テアニン」は残したうえでカフェインだけを除去するものを探していたんですが、逆にカフェインをまったく除去できずにカテキンだけを多く除去してしまったりなんてこともありました。
カフェインだけが残っちゃったんですね笑
私がかなり期待していた吸着剤も、実験するとこんな結果になってしまったり笑
難しいですねぇ笑
そんないろいろな素材を試してるうえで、この吸着剤の素材に出会えたんですが、実を言うと結果を見るまではそんなに期待していない素材でした。
それも面白いですね笑。
その素材が見つかってからは色々と実験や改良を重ねて、2014年やさしさ生茶カフェインゼロ、そして2015年カフェインゼロ生茶の商品化に繋がりました。
カフェインゼロ生茶が世に出て2年。多くの方が飲まれているとは思うんですがさらなるカフェンゼロ商品など、この2年でさらに研究は進んでいるんでしょうか?
今もいろいろと研究は進んでます。実際に「午後の紅茶 こだわり素材」シリーズなどではこの技術を使ってカフェインゼロの紅茶シリーズもだしてます。
そのほかにもウーロン茶など、いろいろな種類のお茶でも研究中です。
そちらも楽しみにですね。
※開発中のお茶の試飲中 いろいろ内緒です
紅茶の商品でもこの製法使ってます
さきほども話に出ました緑茶ではなく紅茶となる「午後の紅茶 こだわり素材」シリーズとしてカフェインゼロの商品があり、こちらでもカフェインクリア製法が使われているとのことですが……
そうですね。ただ紅茶に合わせて少しやり方は変えてます。
それぞれの紅茶でも成分が違うのでより味を変えずにカフェインを除去できるようにしています。
今だと「ヘルシーミルクティー」、「ピーチティー」、「マスカットティー」、「トロピカルティー」が出てますが、紅茶でカフェインゼロをするうえで苦労したことなどありますか?
「ヘルシーミルクティー」が特に苦労しましたね。ミルクティーからカフェインを除去するのは大変でした。
え?それってとても意外でした!!どちらかというと紅茶の中でもミルクティーの場合はミルクをプラスするので素材のままのストレートティーなどより操作がし易いのかなと思ってました。ミルクティーが大変だったというのはどうしてですか?
ミルクに負けないように、紅茶を濃い目にするので、その分カフェインも多くなるんですね。薄い紅茶ですと紅茶の風味が全くしないので笑
なるほど。言われてみると納得です。

キリン 午後の紅茶 こだわり素材(カフェインゼロ)シリーズはこちら>>
今もいろいろとカフェインゼロの研究をされていますが、今後日本のデカフェ市場はどうなっていくと思いますか?
(※デカフェとは、カフェインを取り除く処理をしたドリンクやフードの事)
アメリカのデカフェ市場は10〜15%であるのに対し、日本の市場はまだまだ1%ほどです。日本でのデカフェ市場は今後もっともっと伸びてくると思います。
そうですね。ちなみに当店では、普通の生茶より、カフェインゼロ生茶の方が売れているんですけどね(笑)
ありがとうございます。
やっぱり通常の生茶に比べると店頭で見かけることは少ないですよね。そういった事も当店のようなネットでよく買って頂いてることになっているんですかね。
カフェインコントロールって知ってます?
ちなみに塩野さんの奥さんが今年2月に出産されて、塩野さんが開発された商品をよく飲まれていたそうですね。
カフェインゼロ生茶とヘルシーミルクティーはよく飲んでましたよ笑
妊娠中や授乳中はカフェインを気にしないといけませんからね。
そうなんですよ。キリンとしてももっとこのカフェインゼロ商品のことを知って頂きたいと思ってるんですが、まだ妊婦さんでも知らない人は沢山います。妊婦さん向けの講演などでも直接お話しを聞くことがあるんですがまだまだ知られていない。
はい。
あとは妊婦さん以外の方でも、寝る前のカフェイン摂取には気を付けたほうがいいと言われてます。
そうなんですね。
ただカフェインを取ることがいけないことではなくて、カフェインコントロールと言って必要なシーンで飲み分けでいただいたらと思います。
恥ずかしながらカフェインコントロールという言葉初めて聞きました。朝はコーヒーや緑茶でカフェインを取ったりですかね?
そうです。朝はカフェイン入りを飲んで夜寝る前はカフェインを摂取しないようにするなどがいいですね。
そういった意味で、これからは妊婦さんや子供さんだけでなく、カフェインコントロールをした方がいい場面、例えば寝る前とかに、何を飲もうとなったときに、水? 麦茶? そうだ!「カフェインゼロ生茶」!となればいいですよね。
お客様にまずはカフェインゼロ生茶のことを知っていただいて一つの選択肢として頂ければと思います。
そうですね。当店でも少しでもお客様に知ってもらえるように頑張ります。今日はお話しありがとうございました。
ありがとうございました。

当日はキリンビバレッジの方も多くいらしたんですが、そういった方でもなかなか聞けないお話もあったそうです。 開発にまつわる非常に貴重な話をしていただき塩野さんありがとうございました!

そして、このインタビューの機会をご用意して下さったキリンビバレッジ株式会社 営業本部 佐藤さん(写真1番左)、近畿圏地区本部 谷川さん(同右から2番目)、営業本部 米山さん(同1番右)、この写真も撮影して下さった近畿圏地区本部 神田さん、皆さん本当にありがとうございました!

今回インタビューに答えてくださった方
キリン(株) R&D本部 飲料技術研究所 主任研究員
塩野 貴史
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※このインタビュー記事は2016年7月のものです。リンク先の商品ページは内容等がリニューアル・改廃している場合がございます。