ロバート・パーカー氏曰く…

「ソーテルヌ地方の中心部に位置するイケムは、たくさんの第一級シャトーに囲まれた畑を見下ろす小さい丘の頂きに雄大に広がっている。

1785年から1997年までの間、このシャトーは、まさに一族によって所有されていた。アレクサンドル・ドゥ・リュール・サリュース伯爵は、この広大なシャトーの経営責任者である一族の最も新しいメンバーで、1968年に叔父からこのシャトーを引き継いだ。

1997年に、このシャトーは巨大なコングロマリット、モエ=ヘネシーに売り渡されたが、この売り渡しについてリュール・サリュース伯爵は異議を唱えている。本書を書いている間、この売り渡しの合法性については、フランスの裁判制度によってまだ法的な決定は下されていない。

イケムの偉大さとユニークさにはいくつかの要因があることは間違いない。まず第一に、固有の微気候を伴う完璧な立地条件がある。
第二に、リュールサリュース家は、97Kmにも及ぶパイプを用いた精巧な排水システムを設置した。第三に、イケムには、経済的な損失やトラブルを斟酌せずに、最も良質なワインだけを生産しようという狂信的とも言える執念が存在する。

イケムが、近隣の畑に比べてこれほど優れている最大の理由は、この最後の要因にある。

イケムでは、1本のブドウの木からたったグラス1杯のワインしかつくらないと誇らしげに語られる。

イケムは信じられないような熟成の可能性を持っている。

イケムのワインはあまりに豊かでふくよかで甘いために、その多くはいつも10回目の誕生日を迎える前に飲まれてしまう。

しかし、イケムが最高の飲み頃になるにはほとんどの場合15年から20年の年月が必要であり、偉大なヴィンテージは50年あるいはそれ以上経っても、新鮮で退廃的に豊かなままであろう。

こうした品質への情熱的なこだわりは、何も畑に限ったことではない。
ワインは新樽の中で3年以上かかって熟成され、全収穫量の20%が蒸発して失われる。
リュール・サリュース伯爵が瓶詰めできると見なしたワインでも、最良の樽からだけ厳しく選別される。

私の知る限り、これほど無情な選別過程をとり入れているシャトーはほかにない。

イケムでは、豊かさが少しでも失われることを恐れて、決して濾過処理を行わない。

イケムはまた「Y」と呼ばれる辛口のワインをつくっている。

これは特色のあるワインで、イケムらしいブーケを持ちながら、樽香が強く、味は辛口で通常は非常にフルボディで際立ってアルコール度数が高い。

力強いワインで私の舌にとっては、フォアグラのような豊かな食べ物と一緒に出されるのが最高である。

イケムはほかの有名なボルドー・ワインと違って、新酒としてあるいは将来飲むべきワインとして売られることはない。

このワインは、通常はそのヴィンテージの4年後に、非常な高値で出荷されるが、費やされた労力、リスクそして厳格な選別過程を考えれば、最高の値札に値する数少ない高級価格ワインのひとつである。」
2018年11月29日
シャトー ディケム支配人
ルモワン氏を迎えて
今回シャトー・ディケム支配人の、ジャン・フィリップ・ルモワン氏を迎えて、ヴィンテージ違いのイケムを楽しむ会を開かせて頂きました。

『イケムはデザート・ワインとしてだけ楽しめるものではなく、食中を通して楽しんで頂けるもの。

クラシックなフレンチや王道のマリアージュのみならず、各国のお料理とも楽しんで頂く事が出来る事を知って頂きたい。』

というルモワン氏。

今回の会でも、フレンチ、和食の名店にご協力頂き、フィンガーフードをご用意して頂きました。

季節的にヤマウズラを使ったお料理が和洋ともに登場したのですが、1986年の熟成した旨味、2013年の奥行きと広がりのある味わいともに、魅惑の相性を魅せてくれました。
イケムと言えば、素晴らしい熟成能力で知られますが、今回、日本でいち早く味わって頂いた2016年ヴィンテージのフレッシュな魅力も捨てがたく、イケムはもっと、自由に思い思いに楽しめるものだという事を、ご参加のお客様にはお分かり頂けたのではないかと思います。


『シャトー・ディケムのセラーは、フランスの文化遺産に指定されているので、外観を変えることなく保たなければいけない。

だけど、セラーの中は改装し、進化を続けている。』

ワインとしてのイケム自体、その存在は歴史も含め何物にも代えがたい受け継がれてきた宝でありながら、その魅力を備えたまま、味わいはさらに進化を遂げている事と重なるお話でした。

シュヴァル・ブランでキャリアを積んだ後、イケムの支配人になられたルモワン氏。若き支配人である彼がイケムの魅力を伝えるにふさわしい方であった事は、ご参加頂いた皆様に感じて頂けたのではないでしょうか。

私たちにとっても貴重な機会となった、今回のシャトー・ディケム支配人を迎えての会。

ご参加頂いた皆様、ありがとうございました!