
暖かい空気は上へ
冷たい空気は下へ
サーキュレーター(Circulator)とは日本語に直訳すると「循環装置」となります。多様な業界で様々なサーキュレーターと呼ばれる製品がありますが、ここでは空気循環を目的とした扇風機に類似した家庭用の製品についてお話をしていきます。まず、前述でも触れた空気の滞留に伴う高低で発生する温度差について。水でも同じ現象が起こりますが、沸かしたお風呂をしばらく置いていると底が冷たく上が熱い。真夏でも海に入れば海面部分は暖かく足元の深いところは冷たいという経験されてことがおありではないでしょうか?これは温度によって空気や水の体積が変化しそれに伴って密度が変化してそれぞれ上下に分離する自然の摂理です。夏場のエアコンは高い位置から冷たい空気を送りますし、冬場なら暖かい風の吹き出し方向を下に向けますが、この摂理に従って理にかなった方法になっています。しかし、エアコンの風程度では中々部屋全体を素早くかつ適正な状況を保つには少々無理があります。そこで、追加措置として強力な風力で空気を撹拌し素早くかつ持続的に室内を適正温度にするために使用するのがサーキュレーターの役割です。例えば夏場に冷房を使用する際、エアコン単独の場合とサーキュレータを併用した場合とを比べたイメージをご覧ください。


素早く室温を適正温度にすることが
省エネのポイント
エアコンなど空調機器は設定した温度に達するまでそれに近づけようとパワーを上げて運転しようとします。つまり、サーキュレータと併用することで素早く部屋全体の温度を適正にすることが、結果としてエアコンなど空調機器の過剰な運転を抑え、省エネにつながります。サーキュレーターを使うことで機器を多く使用することになり、電気代がよりかさむのでは?と思われるかもしれませんが、サーキュレーターの電気代とそれを比較してもサーキュレーターの電気代の方が安く、併用することの方が効率的で過剰な電力消費もないため、省エネと言われる所以です。
現に、サーキュレータの電気代は一時間当たり1円以下です。またそもそも素早く温度が適正になることは私たちにとっても素早く快適さを得られるということなので、使わない手はありません。

サーキュレーターの
効果的な使い方
-
夏場
- 帰宅時など過度に室温が高い場合は、一旦室内の籠った熱い空気を外に逃がします。そのため2か所以上の窓を開けます。(※理想は対面の窓同士を開け空気の流れを直線的にするのが理想ですが、そうでなくても構いません。)一方の窓の外に向かって強力にサーキュレーターを稼働させます。これにより室内に空気の流れを作り、もう一方の窓からもう一方の窓に向かって空気を押し出していきます。
- 熱気がある程度排出されたら、窓を閉めエアコンを運転させます。この時エアコンの冷気が行き渡りにくく滞留するであろう天井角(エアコンと並行する角や対角の天井角)などに向けてサーキュレータを強力に当てます。この時エアコンの冷気が注がれる位置などから風を送るようにするとより効率的です。
- ある程度温度が下がったであろうタイミングでエアコンも感知して運転が弱まると思われます。ここまでくれば循環は十分に生まれている頃なのでサーキュレーターの風量も大幅に落とします。あとは緩やかな運転のみで十分循環の流れができています。
番外・・・夏場の車でも最初に(1)の車内の熱気を車外に逃がすということを行うと素早くエアコン効果を発揮させることができます。まず一つのドアを開けます。それと反対側のドアやリアゲートなどを開けます。最初に開けたドアを完全に閉めずに何度かポンプで押し出すように開け閉め(完全に閉めない)を繰り返します。そうすることでドアを閉めようとする圧力で中の熱気が他の開け放ったドアから逃げていきます。その後それぞれのドアを閉め車内に入れば驚くほど熱気がなくなっていることに気づきます。ぜひお試しください。
-
初夏や初秋
初夏や初秋の場日中に比べ朝晩はひんやりする時期です。しかし室内は日中の天候の影響で熱気が残っているといったケースが多くあります。夏場の(1)の要領で窓を開け放ち、今度は窓際から室内に向けてサーキュレータを運転させます。屋外の涼しい空気を室内に取り込んで空気の流れを作ります。ある程度涼感が得られたら窓を閉め、サーキュレータの運転も弱めます。
-
冬場
エアコン等の暖房を運転させ、サーキュレーターを天井に向け運転させます。暖房類は大半の製品が低い位置に暖かい空気を送るように作られています。一方で暖かい空気は天井にたまっているので上下で循環を生むような流れを作ります。ある程度運転させると足元も十分に暖かくなってきますので、運転を弱めて緩やかに循環させます。
-
梅雨時こそサーキュレーター
梅雨のジメジメとした空気感は気分まで落ち込みます。肌にまとわりつくような不快感はこの時期ならでは。こんな時期に換気しても余計湿気るのではとお思いかもしれませんが、むしろジメジメ感が和らぎます。2か所程度軽く窓を開けてサーキュレータを稼働させます。位置や方向などはお好みで構いません。空気を循環させることで肌に張り付く感じが薄らぎ少し快適に感じるようになります。また空気を循環させることでカビの発生も少なくなります。

洗濯物の部屋干しに効果的
雨の日や夜間など洗濯物を部屋干ししなければならないときってありますよね。しかしこの部屋干しがなかなか乾かない…。そもそもなぜ外で干すとすぐに乾いて、部屋干しなら乾かないのか?それは「太陽エネルギーによる水分温度の上昇」「風による気化」「遮蔽するものがない」という要素が屋外にあるからですが、室内にはこれら要素がほぼありません。太陽の光はもちろんなく、風が吹くわけではないので気化もあまり見込めない。さらに室内という遮蔽空間で気化した水分の逃げ場がないと三拍子そろっています。そこで活躍するのがサーキュレーター。強い風を当てて強制的に気化を促進するわけです。季節によって異なりますが、除湿器やエアコンの除湿機能と併用したり、窓を開けるなどして複合的に対策することで、部屋干しもより乾きやすくなります。
夏場
季節柄湿度の高い時期で、さらに雨ともなれば相当な湿度。室内では暑さ対策でエアコンを入れている状況。冷房でも一定の除湿効果はありますが、除湿機能と併用すると良いでしょう。除湿器との併用も効果的です。できるだけ部屋の中心に近いところに洗濯物を持ってくることと、サーキュレーターの風の行き先がエアコンの風が当たるところや、ある程度空気の循環が見込めそうな方向に向かって当てるのが効果的です。冬場
季節柄空気が乾燥している時期で、なおかつ室内は暖房を入れることが多いため比較的乾きやすい状況ですが、洗濯物の量が多いと湿った空気の逃げ場所がありません。また、窓際の結露などが発生しやすくなります。ここも除湿器や少し窓を開けるといった併用が効果的です。夏場同様に風を当てる方向を工夫し風の行き先が暖房機器の方に逃げていくような当て方や暖かい空気を洗濯物に当たるような方法が効果的です。その他の季節
春や秋には空調を使用しない時期なので、湿気の逃げ場として窓を少し開けて外気との交換ができるように工夫すると良いでしょう。やはり場合によっては除湿器などとの併用が効果的です。

時折変化をつけましょう!
サーキュレーターの風を当てるときには一か所に限らず首振りや位置を変えるなど風に変化をつけましょう。高い位置に洗濯が干せる場合は下から上に向かって風を当てましょう。水分を多く含んだ空気は重いので低い位置に降りてこようとします。また、極力洗濯物通しの隙間を作り風が通りぬけることができるような干し方や風の当て方を心掛けましょう。洗濯物自体も場所を変える、向きを変えるなど変化をつけると良いでしょう。
UNLIMITおすすめアイテム

扇風機とサーキュレーターの
違いとは?
羽を回して風を起こすという点では、扇風機と何が違うのか?とお思いの方も多いのではないでしょうか。原理は同じですが、機能的な違いと、そもそも目的が違います。扇風機は人に対して快適な風を送ることを目的しているのに対し、サーキュレーターは空気の循環や前述のような洗濯物などに当てることが目的です。そのため扇風機が比較的弱い風に対して、サーキュレーターは非常に強い風を発生させることができます。また、風の質も広く柔らかい風を発生させる扇風機に対し、直線的、集中的に遠くまで強力に風を送り込むのがサーキュレーターです。そのため、構造にも違いがあります。より強力に多くの風を送り込むために、サーキュレーターの多くは胴体にやや奥行きがあるものが多くみられます。一部に扇風機のような外観のものもありますが、より本格的なものになるほどに扇風機等の外観や構造の違いが出てきます。最近では扇風機のような風を起こすことができるサーキュレーターも出てきており、その逆に扇風機でも強力な風を起こすことができるものも出てきており、線引きが曖昧になりつつあります。
また、より最近では部屋干しの嫌なニオイを発生させる菌の発生を抑制したりすることができる機能を持ったサーキュレーターも出てきており、一方でいわゆる家電臭いデザインばかりだったこれまでの製品に対し、よりスタイリッシュなデザインのものも出てきています。
もちろん、部屋干しや室内の空気循環に扇風機が役に立たないわけではありません。同じように風を発生させるわけなので、一定の効果は見込めますが、やはり「餅は餅屋」。サーキュレーターの方がその目的には適しています。
用途・特徴 | サーキュレーター | 扇風機 |
---|---|---|
空気循環 | 〇 | △ |
風を遠くまで 届ける | 〇 | × |
涼むために 風に当たる | × | 〇 |
静音性 | △ | 〇 |

「DCモーター搭載」って
よく聞くけど一体何のこと?
ここ10年ほどで扇風機やサーキュレーターで「DCモーター搭載」とうたわれた製品をよく目にするようになりました。消費者心理としては「何か良さそう」とは感じるものの、一体何のことなのか?電気代が高くつくのでは?とお思いの方も多いのではないでしょうか?
DCモーター出現以前はACモーターが主流でした。
この「AC」「DC」とは何のことかというと…
AC = 交流
DC = 直流
という電流の流れを示すもので、DCは電圧が一定で一方向にのみ流れるのに対し、電圧が一定周期でプラスとマイナスで切り替わり電流の流れる方向が常に変化するのがACです。よく家電製品の電源でACアダプターというものが付属していることがありますが、このACは交流であることを示しており、家庭用のコンセントはACになります。…と少々小難しい話になってしまいますので、専門的な話はここでは割愛して、わかりやすく比較した表が以下になります。
DCモーター | ACモーター | |
---|---|---|
電圧 | 直流 | 交流 |
風量 | 細かく調整可能 | 細かい調整は できない |
消費電力 | 少ない | 多い |
運転音 | 静か | 大きい |
価格 | 高価 | 安価 |

従来の扇風機の風量ボタンは「弱・中・強」といったような大まかな風量設定しかできなかったのは、ACモーターであるが所以でした。最近では10段階など細かい設定ができるものや無段階の設定ができるようになっている製品が出てきているのはDCモーターを搭載することで実現できたものになります。また、表にあるようにDCモーターは消費電力も少なく省エネ、運転音も静かでいいことづくめですが、価格が高いというデメリットがあります。最近の高価格帯の扇風機やサーキュレーターはほぼDCモーターが採用されており、高価格になる要因の一つとなっています。
省エネとは言え劇的に電気代が安くなるとまでは言い難く(そもそもACモーターの電気代もそこまで高いわけではない)かなり長い期間使わないとペイできないかとは思われますが、それ以上それ以上に細かな風量調整や静音ということを考えると、快適さに投資したと考えた方が良いのではないでしょうか。

stadlerForm
Tim

【番外】 恒常的で穏やかな循環には
シーリングファンがおすすめ
おしゃれなショップやカフェのような雰囲気を思い浮かべそうなシーリングファン。これも元々天井付近に溜まった暖かい空気を循環させるためのものです。
羽根には風の方向性を決める角度付けがされており、回転する方向によって上から下、下から上と切り替えることができるため、季節に応じて使い分けることができます。
サーキュレーター程強力な風は発生せず、瞬発的な撹拌能力などは劣りますが、天井付近に設置されていることと、大型の羽根のため効果的な撹拌性が見込めます。そのためエアコンなどの空調との併用という点で、ある程度適正な温度に達した後、適正温度を保つ恒常的な使い方になります。また、換気や冬場の加湿など広く効果が見込めます。
目に見えて効果がわかりにくい側面はありますが、そのインテリア性も相まって近年一般のご家庭でも導入が進んでいます。
シーリングファン導入の注意点
天井について
シーリングファンの多くは大きな羽根を回転させるためモーターが搭載されており、羽根自体も金属製などの場合総じて重量があります。そのため天井側の耐荷重を事前に確認ください。また、回転する羽根が接触するなどの恐れ、および機器の重心などの問題から傾斜天井ではご利用がいただけないケースが多くあります。天井高
・・・ 元々シーリングファンは吹き抜けや天井高の高い部屋での使用を想定して作られていました。そのため一般的なご家庭の場合、かなり部屋を圧迫してしまう恐れがあり、頭に近い距離で羽根が回るというようなことにもなりかねません。天井高を確認いただくとともに、製品の全高を事前に確認ください。最近のモデルでは日本の家屋に合わせて極力高さを抑えた製品が出てきています。(そもそも天井高が低いところではシーリングファンを使う必要がないという側面もあります。)照明について
シーリングファンは基本的に照明器具ではありません。ただ取り付けは照明器具と同様、一般的なご家庭では「引っ掛けシーリング」という方法で取り付けます。そうなると照明器具が取り付けできなくなります。一部に照明と一体になった製品もありますが、中には補助的な明るさしかないものもありますので、導入にあたってはあらかじめ照明をどう確保するかご確認ください。場合によっては天井の補強工事や、電気設備工事などを行わないといけない場合や、お取り付け自体を断念せざるを得ない場合もあります。
UNLIMITおすすめアイテム