コート・ドールの北端、ディジョンの南わずか数kmに位置するマルサネ。とかく、コート・ド・ニュイ・ヴィラージュの高質なものと比べられて、骨格や厚みが乏しく、評価されることが稀な地域。
しかしながら、この地でも世代交代のさなかに、素晴らしい造り手が登場しました。まさに、「呉下の亜蒙にあらず」(三国志演義)で、旧容を一新しての登場です。温暖化に伴い、コート・ドール北端のこの地は、好ましい環境に変化していることもあり、一昔前のイメージをがらりと変えてしまうような、マルサネのご案内です。
シルヴァン・パタイユ(33歳)は、シュノーヴ村に数代続くブドウ栽培の家に生まれました。小さな頃から祖父のそばに張りつき、畑で遊び、セラーで樽をころがすのが何より好きで、自然にワイン造りの道に入りました。しかし、自ら醸造・ビン詰をしたのは、シルヴァンの代になって初めてのことです。1997年から醸造コンサルタントを始め、1999年に1haに満たない大変古い畑(マルサネ・ルージュ・ラ・モンターニュ)を祖父から引き継ぎ、2001年にドメーヌ・シルヴァン・パタイユを興しました。
醸造コンサルタントとしての才能は評価が高く、現在15ものドメーヌで、コンサルティングを行っていますが、自身のドメーヌの栽培面積は15haあります。ほとんどの畑は、賃借契約ですが、コンサルタントの仕事のおかげで、人脈に恵まれ、樹齢の高い恵まれた畑を契約しています。
2008年からは一部ビオディナミで栽培を始め、野生酵母で発酵、清澄をせず、軽く濾過をしてビン詰をします。味わいの奥に温かさとエネルギーを感じさせ、ミネラルがしっかりと味わいを支え、緯度の高さからくる涼やかさがあります。
派手で濃縮された技巧的なピノ・ノワール酒とは程遠くて、バランスがよく、美しい果実味を備えた繊細な味わいが身上です。亜硫酸の使用量も大変低いため、一口味わっただけで、自然派の考えで造られた完成度の高いワインであることがわかります。とりわけ、樹齢の高い最上のプロットから生まれる《ランセストラル》は、シルヴァンの腕の素晴らしさを感じとることができます。全梗で、2年に及ぶ醸造で造られ、マルサネよりはるかに格上のワインと、ブルゴーニュの専門家の間でもっぱらの評判です。良いコンディションを保ち、持ち味を存分に発揮できるように、注意深く扱えば、きっとブルゴーニュの新たな味わいが目の前に現れ、驚きに満ちた喜びを感じることができること、間違いありません。私は、このワインの到着を、毎日心待ちにしていました。通関が切れ次第、スタッフ一同で味わうことを楽しみにしています。だって、本当はピノ・ノワール酒が大好きなのに、なかなか、心に響く味わいに出会えなかったのですから。
ドメーヌ解説:
幼い頃からトラクターに乗ったり、セラーの中でバリックを転がして運ぶことを夢に描き続けてきたシルヴァン・パタイユは、その夢を現実とするためにボーヌの専門学校で醸造を専攻(BTAとBTSを取得)した後、ボルドーの学校で醸造を学びます(DNOを取得)。卒業してからの4年間を醸造コンサルタントとして複数の(有名な)ブルゴーニュのドメーヌで務めます。1999年にわずか1ヘクタールの小さな畑ですが古樹の植わった畑を購入し独立します。2001年に正式にドメーヌ・シルヴァン・パタイユを設立。ゆっくりと着実にドメーヌをつくり上げ、現在16ha(2016年4月11日現在)を所有しています。
ビオロジック(2007年~)、ビオディナミ(2008年~)
シルヴァンはドメーヌを立ち上げた当初から、手作業で草刈りなどの耕作をおこない、それは環境への配慮のみならず土壌により健康的な栄養バランスをもたらすと信じてきました。2007年から有機栽培を実践し2008年から試験的にビオディナミ栽培に取り組んでいます。
原則として全房で醗酵。抽出ではなく煎じるように、果皮を果汁にじっくり4~5週間漬け込む。
若く知的なシルヴァンは細部にまでとても敏感で丁寧であり、各キュヴェはそれぞれのキュヴェごとに分けて取扱い、非常に注意深くヴィンテッジ・コンディションを考察します。したがって、彼にとって一般論でワイン醸造をすることは不可能です。彼は、全房を発酵させて樽(バレル)や大樽(フーダー)で熟成させて赤ワインとなる、自然酵母の存在をを強く主張しています。真のテロワールを表現するため、熱心に醸造を勉強し、多様なドメーヌのメソッドや醸造哲学を調べ、実験や試作を柔軟に行うなど、努力を少しも怠りません。
醗酵:全房、またはほぼ全房で醗酵
熟成:樽(バレル)、大樽(フーダー) マルサネの製樽会社を好む(ブドウの状態によって焼き加減を変える)
畑面積:15ha
土壌:粘土石灰質
栽培品種:ピノ・ノワール、ピノ・グリ、ピノ・ブラン、シャルドネ、アリゴテ
年間平均生産量:54000