椅子の巨匠と呼ばれたデザイナー、ハンス J. ウェグナーが1950年に手がけた世界的な傑作チェア「CH24」。現在まで生産が続くカール・ハンセン&サンを代表するデザインです。"Yチェア"はそのシルエットから名付けられた愛称であり、英語圏では"Wishbone Chair(V字の椅子)"とも呼ばれています。以下ではYチェアの精緻な設計や、デザイン秘話について解説していきます。


Point 1
時代を先取りした設計

CH24のデザインにおいてウェグナーは、アームと背もたれを一体にするという、それまでの椅子デザインに見られなかった斬新な試みをしています。そしてこの曲木製のアームに安定性と心地よい使用感を与えるのが、印象的なY字形の背もたれです。


Point 2
自然木ならではの美しさ

Yチェアの主要なモデルは、素材である天然木の美しさを最大限に引き出す仕上げが施されています。木目の美しさ、色味のあたたかさはフォルムが持つ有機的な印象と相まって、自然の造形に感じるほっとする雰囲気をインテリアにもたらしてくれます。
ビーチやオーク、ウォルナットなどインテリアにおける主要な樹種が広く採用されており、室内の木製家具を同種の木で揃えたいという場合にも、Yチェアは有力な選択肢です。


Point 3
日本の住空間との調和

古くから自然と共存してきた日本では、ブナ(ビーチ)やナラ(オーク)、タモ(アッシュ)などを用いた木工家具が広く生活に取り入れられてきました。これらはYチェアの主要な素材であり、自然素材を活かした温かなスタイルは、日本の一般的な住環境とも違和感なく調和します。





Point 4
デザインヒストリー

デンマークの近代家具の父と呼ばれるデザイナー、コーア・クリント。彼の哲学は「過去にデザインを学ぶこと」と表現され、旧来の様式家具をリデザインし、後の北欧デザインに大きな影響を与えています。彼の教え子であるボーエ・モーエンセンもまた、彼の教えに従いアメリカのシェーカーチェアを元に名作チェア、J-39をデザインするなど若くから活躍しました。


ハンス・J・ウェグナーは、親友であり同僚だったモーエンセンとは対象的に、長らく自分のデザインの方向性を掴めませんでした。彼の転機となったのが中国明代の椅子「圏椅(クワン・イ)」。優美な曲線を描く背もたれは、ウェグナーが模索していた、身体曲線に沿って体重を支える椅子の大きなヒントとなったのです。ウェグナーはクワン・イをリデザインすることで、1944年に「China Chair(チャイナチェア / FH4283)」を、翌年には「Chinese Chair(チャイニーズチェア / FH1783)」を発表。その後、さらにディティールを突き詰めることでYチェアを生み出しました。