漆器・糸目溜塗椀・大・尚古堂|和食器の愉しみ・工芸店ようび

糸目留塗椀

時代椀の復原

 「時代椀大観」(松田権六先生 羽野幀三先生編)の内の一つ糸目溜塗椀の形の美しさに魅され、写したお椀です。
昭和十四年(一九三七年)に刊行された「時代椀大観」は、当時の塗物に携わっている人達に多大な恩恵をもたらしました。しかしこれらの椀たちを今一度研究し、実際に使えるものとして復原作業をした人は多くはありませんでした。今の時代に一般的に売りやすいものではなかったこと、それ以上に、これらの魅力を今の人たちに伝えたいという強烈な思いが無かったからです。技術も意志も「濃いもの」を造るのには、やはり、それなりの条件、環境を整えていく必要があるのです。

 本歌は飯椀、汁椀、平椀がありそれぞれ蓋がついております。当初、その三つ椀の内、茶道具の飯椀(大)と汁椀(小)の四ツ椀として輪島の尚古堂さんに復原していただきました。

 ところがこのような四ツ椀は現在ではなかなか人気がありません。気持ちを変えて、小さい方を椀盛用として蒔絵を施してみましたら、豪華な椀となり、多くの方にお求めいただけるようになりました。

 どの季節にも使っていただけるように蒔絵は百花にしました。底が安定した形なので大・小共に盛り心地がよく出来ています。
外は春慶風目はじき(溜塗りのように思えます)内側は黒百花蒔絵でございます。木地は欅で、美しい糸目は欅ならばこその手法です。
こんな椀でごちそうのお汁を召し上がるお幸せな方がいらっしゃると思ひますとわくわくいたします。

2007年12月

工芸店ようび 店主 真木
漆器・糸目百花椀・尚古堂