白磁:白磁六角長皿・水野克俊

水野克俊さん

彼は瀬戸の窯業訓練生として一年いた後、九谷青窯で七年間秦耀一氏に教えを受けられました。この九谷青窯は秦耀一氏が中心になって作られた工房で、この四十年位の間にたくさんの個性的なよい作家達を輩出されて来ました。ようびで長い間お願いしている作家さんも何人もいらしゃいます。秦耀一氏は父上の秦秀雄氏の影響を受けられて、ものつくりとしてのすぐれた感覚と技術を持つ方で、ようびも大切に思っている作家です。その上若い方々の育成も大変自由な雰囲気でのびのびとなさるので、この水野さんもその七年間が今も生きているとおっしゃいます。

秦耀一さんがおっしゃった「変わった形であることを個性にするな、当たり前の形の中に出る雰囲気こそが個性なのだ」この言葉を大切にしているそうです。ようびも同感です。

白磁菊花7寸皿・水野克俊

水野さんは独立なさって三年後位からのお付き合いですが、もう二十五年位になるでしょうか。その間たくさんのものを作っていただきながら知らないことが多くて、おだやかな中に少しきびしさをのぞかせる作品をよしとして御紹介して来ました。この釉のおだやかな色は、天然の灰(ヒミツです)がヒミツの量入っているとのことでした。

この頃やっと方向性が見えてきたとおっしゃる水野さん、「ロクロに向っていられればいい」とだけ控え目な抱負を語って下さいました。

白磁片口小鉢・しずく形・水野克俊

水野さん自身あまりおっしゃらないので迂闊だったのですが、砥部の石をスタンパーで叩いて粉にした生地を使っていらっしゃることが解りました。スタンパーで叩いて粉にした生地は今や大変貴重な技術で、大方のものはグラインダーで粉砕した生地を成形します。普通に入手できる砥部の土で出来たものは、もう少し分厚くなってしまうものなのですが、水野さんの作品は薄くて美しく丈夫に出来ているのはこの過程を経て初めて実現するものなのです。長い間そのことを知らずに作品を頂戴していたことをお詫びして、改めてお客様にそのことをお知らせする次第です。

工芸店ようび 店主 真木