秋草文箔絵黒石州椀
桃山時代から江戸初期にかけて大変によろこばれた高台寺蒔絵の雰囲気を、箔絵で表現してみました。
本体は石州椀と言われてきた形の椀で、由来ははっきりとはいたしません。この形の椀はお茶事に中心的な役割を果たす椀盛に大変効果を表します。「はっ」とする形の斬新さ、といって奇を衒っているのではなく、中に入っているものをゆったり包み、飲み口もよく、それは美しいものです。
高台寺蒔絵は桃山時代の代表的な蒔絵の一つで、研出蒔絵のように金粉を蒔いた後にもう一度漆をかけて磨き出す技法ではなく、漆で絵を画き金粉を蒔いてそのまま磨くことをしない蒔放しという技法で作られており、大胆かつ繊細なのびのびとした文様が多く描かれました。また、片身替という方法で一つの文様を二つの方法で蒔き変化をつけたり、梨地という大きさの違う金粉を蒔いたりと、さまざまな変化をつけながら魅力を出していったと考えられます。
桃山時代、蒔絵の需要が多かったために、この最も簡単で効果的な技術が生まれたのだとも言えます。京都高台寺の御霊屋の、秀吉をまつる厨子の扉の大きな薄など、それは動きのある大胆で美しい文様です。蒔放しだからこそ出来たものなのでしょう。
箔絵はやはり貼りました後は磨きをかけませんので、少し蒔放しの雰囲気も持っているのではと思います。お使いになるうちに少しこすれて来た頃に、美しさが増して参ります。
工芸店ようび 店主 真木