軽快なおもてなしの料理・和食器、季節のコーディネイト

　おもてなしの料理の中には家族へのもてなしも入っているのです。

　日常の中で、時にはいつもと違う発想でちょっとごちそうをと思うのは愛情であり、作る側にもいただく側にもたのしいことに違いありません。

　いつもとは少し変えてその季節らしい器を出してみる、同じものでも切り方を変えてみる。いろいろとこまかな工夫があれば料理は生き生きとするのです。

　この頃はおとりよせブームとかで主婦が何から何まで作らなくても美味しいものが入手可能です。少し手間をかけ、しっかり作ったものと市販のものの組み合わせで軽快におもてなしの方法を覚え、あまり負担にならないようにすれば時々やってみたくなるのではないでしょうか。

　八月は暑さにぐったり。よほど涼しげな食卓にしなくては仲々食欲もすすみません。
　焼きなすは八月の食べ物として一番食の進むものでしょう。万願寺ししとうを取合わせました。さっぱりと生姜と少しかつをの味をプラスして。
　パート・ド・ヴェールのお皿は大変ぜいたくなものです。一つの作品に一つの型をつくりガラスの材料を詰めて熱をかけて焼き、型は一回だけでだめになります。なので二枚同じものは作れないのです。
　薬味の入っている小向は今月ご紹介させていただいている福地さんの可愛らしいもの。何を盛ってもきれいな重宝な小鉢です。
　関西では祇園さん天神さんともに鱧祭りと云われる程鱧がつきものなので、その間高価になります。わたしども家庭料理には八月に入って油がより一層のって美味しくなり、高騰した鱧の価格が下がった頃に鱧ずしを作る習慣です。大徳寺弁当と呼ばれている春慶の大きな縁高は蓋付で、これの上にお手塩や盃などのせたりお汁をのせたりお盆のように使います。
　詳しくは解りませんが、大徳寺のお斎のために作られたものだそうで、本歌と云われているものには「大徳寺」という焼印が押されています。かなりの量盛れるものなのですが、御友人たちのお集まりの時お寿司を盛られたりおにぎりと魅力的なオカズを少々。蓋には取り皿とお汁と云うような使い方の出来る誠に重宝なものです。盛器と考えてお菓子やいろんな御菜を盛っていただくのもよろしいと思います。
　汁椀（4.2寸・奥田志郎作）には焼なすを沈めて白みそにみょうがをたくさん切り入れ夏の醍醐味を味わってみます。このお料理は銀閣寺道の「なかひがし」さんのお料理を真似ました。白みそはなかひがしの奥様のお里のしま村さんのものです。
　お菓子は奮発馳走して、京・甘泉堂の水羊羹。錫のまゆ皿が雫をたらしてうまく水羊羹に合ってくれています。やはり竹フォークがすてきです。

店主　真木啓子