【一汁一菜】お味噌汁中心の食事 さつまいも、焼ねぎ
奈良国立博物館前に「下下味亭」というごはん屋さんがあったのを覚えていらっしゃる方もあると思います。そのお店の一汁一菜は絶品で、何とか記録に残すために本にしたいと思っているうちにごはん屋さんは止めてしまわれました。
さまざま思い起こしながら少し私の想いも入れつつ、お味噌汁を中心とした食事の基本、一汁一菜を始めてみたく思います。
正倉院展が始まり、関西は秋たけなわの季節です。
今回のお菜(さい)はなつかしい(もう二十年にもなるでしょうか)奈良・下下味亭さんが正倉院展の頃に出されていた記憶のある伊勢長ひじきと生節の煮つけを思い出して作ってみました。その頃に教えていただいた瀬尾商店から毎年送っていただいています、もちもちと太くて大変美味しいひじきです。器は植山昌昭さんのなずなの中鉢。古染付のなずな手の小鉢の写しです。下下味亭さんでは本歌をお使いになっていました。やはりすばらしいお店でした。
お味噌汁は、さつまいもと焼ねぎのお味噌汁です。この度のお味噌も土居さんご推薦の麦味噌で、原料ははだか麦、大豆、食塩とありました。長崎県のチョーコーというお店です。きっとさまざまなお考えで大切に作られているお味噌でしょう。出汁はあご出汁(とび魚のだし)にしてみました。材料によってずい分味も香りも違うものだとあらためて感じました。お椀は黒のまり椀を使いました。
ご飯は梅干しをちぎって炊き上ったごはんにまぜたもの。器は川村宏樹さんの刷毛目飯碗です。
お漬物は小松菜で、長森慶さんの伊羅保摺粉鉢向付を用いました。醤油差しは伏原博之さんの京焼・乾山写の菊文醤油差し。完成度が高く美しいものに仕上がっています。
折敷は朱布盆・小、薄くて運びやすく重なりのよい盆です。
ひじきの炊き方
乾燥ひじきをさっと洗って水に20〜30分漬け、やわらかくなったらざるに広げます。熱湯を上からざっとかけ、早く冷まします。
これを油で炒めます。できれば玉絞りのごま油を使うと大変香りも味もよく出来上がります。油が全体に行き渡るくらいしっかり炒めて下さい。油が少ないとこげてしまいます。少し多い目がよろしいでしょう。
別鍋にお水(ひじきがヒタヒタに浸る程度の量)と生節(骨を取りながらお好みの大きさにほぐしたもの)を入れ、少し煮たところに砂糖・味醂・お酒少々・お醤油(濃口1:薄口2)を入れます。それをひじきとあわせ、上下返しながら20分位煮て止め、5時間くらいはそのままにして味をよく沁ませて下さい。