【一汁一菜】お味噌汁中心の食事 白玉だんご
奈良国立博物館前に「下下味亭」というごはん屋さんがあったのを覚えていらっしゃる方もあると思います。そのお店の一汁一菜は絶品で、何とか記録に残すために本にしたいと思っているうちにごはん屋さんは止めてしまわれました。
さまざま思い起こしながら少し私の想いも入れつつ、お味噌汁を中心とした食事の基本、一汁一菜を始めてみたく思います。
初午の日には稲荷ずしを食べる。まるで年中行事の様にそう思って来ました。どうして?などと考えずに。初午はお稲荷さん(神社)のお祭りで、節分を過ぎて初めての午の日に行われます。今年は節分と重なります。
どうしてイナリずしかしら?と考えてみました。あまり根拠とするものがありません。多分おあげの煮たものがキツネ色だからではないでしょうか。母はオノミが入っているのが稲荷ずし、入っていなければただの狐ずしと云っていたのを覚えています。昔、お稲荷さんの境内で山雀(ヤマガラ)という小鳥におみくじを取って来させる芸をさせていて、良く出来ると麻の実(おのみ)を食べさせていたのが、稲荷ずしに麻の実を入れるようになった理由ではないかと思うのですが。母はそれを知っていたのでしょう。父は狐ずしが大好きでしたので、他の時にはごまを入れて狐ずしと云っていました。
一汁一菜も早いもので十二回目になりました。お献立は稲荷ずし、わけぎと赤貝のぬた、白玉だんごの入った白味噌のお汁、十二月に漬けた大根漬けです。取り皿は大吉と書いたものを使い、ぬたは笑う門には福来ると書いた角切の角鉢を季節感よろしく用いました。これは吉住章さんの古い仕入れの品で、長い間倉庫に眠っていたもので、皆様にお安く御提供出来る物です。底に少々窯切れがありますが角物にはよくあることで使用にさしつかえはありません。とても様よく(形よく)使っていただけるものです。
椀は小ぶりなのによく入るもので、たっぷりと白みその汁を入れていただけます。金箔の十文字がきりりと美しく立春のよろこびを表しているようです。
稲荷ずし
お揚げさんをしょうゆ・砂糖・みりんで煮てさましておきます。
にんじん、ごぼう、しいたけを細かく切り、出汁とみりん少々・薄口しょうゆで味をつけ、かるく汁を絞っておきます。
寿司飯をつくり(あげを甘く煮るので少し酸っぱくします)、具を混ぜ、ごま(麻の実)を振り入れます。
お揚げさんを開いて寿司飯を詰めます。形よくととのえて下さい。