フリーエディター／ライター
藤原 綾さん
フリーエディター／ライター。
出版社での女性誌編集部を経て、2007年にフリーの編集者として独立。
以後、『sweet』や『SPRiNG』などの女性誌、コレクションブランドからストリートブランドのムック本や
カタログのビジュアル制作を手掛けるなど幅広いジャンルで活動中。手掛けた作品は数百冊に及ぶ。
先日、先輩から仕事の件で相談があると連絡があって、表参道の素敵なカフェを指定されました。その先輩、とにかく美人でおしゃれ。同性ながら、話してるとぽわ〜んと見惚れちゃうほど、魅力的な人です。そりゃモテるわっていう。
久しぶりの再会でしたが、全く変わらぬ美しさにびっくりしました。相変わらず上品な所作で、どこのブランドかはわからないけど、上質そうなワンピースを纏っていて、ファッション誌バリバリやっていたあの頃のままって感じ。
その先輩と久しぶりの再会を祝いつつ、新しい仕事の案件を話していたのですが、なんだか胸元のカメオのネックレスがすごく気になりまして。
私の母親がつけていたのは女性の横顔のブローチだったけど、こちらは細いゴールドチェーンに繊細なお花彫刻。なんて美しい……。キュキュキューン！
あまりにも綺麗だったので聞いてみると、イタリアに旅行した時に買ったそう。思い起こせば、デザイナーの友達もつけていたような？
今まで存在は知っていたもののあまり気にしていませんでしたが、ここに来てなんだかぐっとカメオ熱が高まっちゃいました。
bild:Sherry's Rose Cottage, flickr.com, CC BY 2.0
そもそも、このカメオっていうのは何かというと、浮き出るように彫られた彫刻のことをいいます。 このカメオ、なんとその歴史は古代エジプト文明まで遡ると言われていて、その後、古代ギリシャ時代に、お守りとして広がっていったそうです。今では女性のアクセサリーというイメージですが、当時は男性が身につけていたのだとか。古代ギリシャでは、自然災害はゼウスの怒りと考えられていたので、神様の怒りを鎮めるためにこの彫刻を身につけたんですね。
このお守りを身につけるという行為にしろ、お守りの形状にしろ、現代も当時とあまり変わっていないってすごくないですか？
伝統はすたれないので、愛着をもってお守りとして身につけたいカメオ。私が母のブローチを受け継いだように、長く愛用できると思うので、ちょっと背伸びしてでも手に入れたいアイテムです。
ということで、今回はカメオの魅力をお届けします！
bild:Thomas Quine, flickr.com, CC BY 2.0
【初級者編】
カメオというと、少し年齢が高めの人たちがつけているイメージですが、今では現代的なデザインもあるし、何より伝統があるので流行も年齢問わず身につけたいアイテム。
まずは、初心者さんが使いやすい少しカジュアルなデザインからご紹介しましょー！ カメオを取り入れたスタイリングにあまり自信がないという方も気軽に挑戦できるアイテムばかりです。
「CLASSICA」イニシャルペンダント
アクセの定番、イニシャルネックレスは、カメオのエントリーアイテムにぴったり。M、A、Kとスターの4種類。自分のアルファベットがあったらラッキー！ 金具の色がそれぞれ違うので、選ぶものによって印象も変化。これも運命ととらえて、好きな色よりも自分のイニシャルで選ぶのが吉。上品な化粧箱に入っているので、贈り物にも最適です！
「ZEUS」パンクモチーフのブローチ
馬蹄は昔から“力”のシンボル。病や災害を魔除けとして飾られたもの。テンダーロインを筆頭に、アクセサリーにもよく登場するモチーフです。組み合わせた四葉のクローバーは、言わずもがなの幸運アイコン。ヨーロッパでは、夏至の夜に摘むと魔除けの効果を発揮するといわれています。スカルも実は縁起物。ヨーロッパではお守りとして使われてきた歴史があるし、仏教でも無常の象徴。死の対極にある生を引き出すモチーフといわれています。
「ROMANTICA」モチーフイヤリング
ほどよいサイズ感と選べる4種類の定番モチーフで、カメオの最初の一歩にふさわしいイヤリング。王道のモチーフだけど、古さを感じさせないデザインで、顔まわりをパッと華やかにしてくれます。ストレートにロマンティックなワンピースに合わせたり、あえてパンツスタイルに合わせて少し女性らしさを加えたり、使い方はいろいろ。顔なじみのいい色や、好みのモチーフで選んでみてください。
【中級者編】
おしゃれにはまあまあ自信あり！ 自分なりの好みのスタイルがある程度確立されている人は、もう一歩進んで、ちょっと変わったモチーフやモダンな印象を与える変わり種に挑戦！ 今までのカメオのイメージを払拭して、新たな可能性を感じさせてくれるスタイルです。
「CAROUSEL」モチーフピアス
パールやストーンも用いながら、顔のパーツを表現した斬新なピアス。シンプルなブラックドレスに合わせるだけでも、スタイルに表情がしっかりと出ます。目頭、黒目、二重のシワ、まつ毛など、ちょっとした部分への深いこだわりが感じられる個性的なカメオ使いで、コーデにも新鮮な印象をもたらしてくれそう。ネックレスもあります。
ハッピーモチーフペンダント
私が先輩のネックレスに見惚れたように、思わず凝視したくなる繊細＆ユニークなペンダント。ランプのようなフォルムを囲うように、テントウ虫や四葉のクローバー、幸せの鍵、お花……と幸福を呼ぶと言われるモチーフで囲って。全身無地で、ちょっとポイントに欠けるありがちコーデにひとつ加えると、新鮮なアクセントとして活躍してくれます。
「ZEUS」スカルペンダント
一見、カメオに見えないビジュアルながら、よく見ると上品なシェルカメオっていうギャップがたまらないペンダント。ハードなモチーフに見えて、シェルの柔らかな風合いで女性らしくつけられるし、パートナーとシェアするのもおすすめ。あえてフェミニンなモノトーンのワンピースと合わせるとバランスアップ。Iラインのすとんしたシャープなものでも、レース使いのガーリーなものでも好相性。
【上級者編】
なんだかんだ、個人的にカメオが一番似合うのはヴィンテージのワンピースだと思います。友人のスタイリストも、海外の古着屋から取り寄せるなど、一点物へのこだわりがハンパございません。もちろん、当時のニュアンスを感じさせる新作でも構いませんが、カメオに刻まれた時間の長さにすんなりなじむと言いますか。背筋を伸ばして、所作も美しく。上品でクラシカルな佇まいを楽しんでください。
ストーン×シェルカメオペンダント
カメオの周りに細やかな光を放つストーンをぐるりとあしらった、ラグジュアリーなペンダント。主張が強いので、このインパクトに負けない柄物ワンピに似合います。結構派手なものでもなじんでくれるので、気分を明るくしたいときにも取り入れたいところ。スクエアのフォルムで、緩やかなラインのワンピースにほんのりシャープなニュアンスを加えてくれるのも嬉しいポイントです。こちらを主役にしたいときは、花にはブラウン系の落ち着いた色味を、天使にはブラックやレッドなど強い色味の服をセレクト。ペンダントの存在感が際立って、カメオの細やかな手仕事も際立ちます。チェーンの色もそれぞれ異なり、ピンクゴールドは肌馴染みがよく、ブラックは柔らかなワンピスタイルをキリッと締めてくれる効果も。
「微笑みの少女」マエストロのブローチ
ナポリ出身のアゴスティーノ・チェントベッリ作、証明書付きのワンランク上の逸品。アゴスティーノ氏はオブジェなども手掛けているカメオ界でもトップクラスの技術者です。優しい微笑みを浮かべながら蝶々を見つめる少女は、髪飾りやブラウスまで柔らかな動きで表現され、葉っぱ一枚一枚まで精巧に刻まれた小さな芸術品。風が吹くと、今にも動き出しそうな実に繊細な技術は、熟練されたマエストロならでは。定番の婦人の横顔とはまた違う印象で、カメオらしい重厚な雰囲気の中に、少女の純粋な気持ちが刻まれているかのようです。これからずっと先、娘や孫にまで受け継ぎたい至極のブローチは、一生ものに最適。金具には18金のイエローゴールドを使用し、細部までリュクスな印象に仕上がっています。
1974年4月5日 ナポリ出身
美術学校の在籍中からすでに、その類まれな才能を発揮し注目を集めていた。
豊かな表現力、確かな技術と芸術への情熱が、深い海の底に眠っていたシェルに息吹を与える。
シェルカメオだけでなく、サンゴやストーンなどへの彫刻、装飾や彫金なども自らが行い、自身の追求する芸術を求めて、努力を怠らない。
彫刻された表面は滑らかで、非常に柔らかい。
間違いなく、世代はもちろんカメオの世界でもトップクラスの彫刻技術をもつマエストロである。
ジュエリーのみならずオブジェなど、カメオマエストロにとどまらない芸術家として活動を行っている。
「春 -プリマヴェーラ-」マエストロのブローチ
こちらは大ベテランである名匠、パスクァーレ・オッタヴィアーノの作品。優美な立体感を演出する透け感や、絶妙な重なり具合を表現できるのは高い技術があるからこそ。目を凝らしても、どこまでもその優雅で緻密な彫りにうっとり。芸術品を身につけている感覚で、一生愛し続けたいブローチです。値は張りますが、その理由がひと彫りひと彫りにきちんと込められた名品に仕上がっています。。
1938年10月17日 エルコラーノ出身
美術学校でカメオの技術を習得後、ナポリの偉大なカメオマエストロ・シャランガの工房に入り、弟子として教えを受け、さらにその技術を磨いた。
彼はシャランガからその作風を受け継ぎ、シェルカメオの彫りとコントラストにはアンティークな薫りが漂う。
80歳を超えた現在、なお現役でカメオ界を牽引する存在である。古典彫り(オッタヴィアーノスタイル)と呼ばれる技法を駆使し、レースの透け感や重なり具合など、他の彫刻家たちと一線を画す。
ファッション初級～上級まで、さまざまな着け方で楽しめる歴史深い究極のアクセサリー、カメオ。彫りに込められた願いや思いは、身につけている人にも届くはず。守り神のような気分で楽しんでみてはいかがでしょうか？
