
2020.6.17
夏本番前
今こそ知りたい『サーフブランド』
メンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん
メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?
実力派ブランド・ハーレー
サーファーは、1950〜60年代にアメリカ・西海岸で成立したユースカルチャー。
元来は余暇にすぎなかった波乗りを、単なる趣味ではなく人生そのものと考えた彼らは当初、同時代のビートやヒッピーと同様、既存社会へのカウンター思想を持つ人たちととらえられたそうです。
そこから幾星霜を経た現代の“サーフ”は、老若男女が楽しめる総合的なライフスタイルとして定着。
真剣に波乗り道を追求する人から、ライトにビーチの雰囲気を楽しみたい人までをも含む、大きなカルチャーとなっています。
サーフ系と呼ばれるブランドも、世の中には多数存在します。
今回はその中から5ブランドをピックアップ。
歴史や魅力を紹介したいと思います。
最初のブランドはHurley(ハーレー)です。
1979 年、23 歳の若きボードシェイパー、ボブ・ハーレーが、二人のビジネスパートナーとともに、カリフォルニアのコスタメサで、サーフボードメーカーとして創業。
設立当初は、ハーレー・サーフボーズという名前でした。
ボブのつくるボードはサーファーたちの間で高評価となりましたが、ブランドとしてのハーレーがメジャーになるのは、もう少し先。
ハーレー・サーフボーズはまず、ライセンス事業に注力していきます。
1982年、同社はオーストラリアの新進気鋭サーフブランド、ビラボンの製造販売ライセンスを取得し、翌年ビラボン USA を設立しました。
ビラボンは当時からとても人気の高いブランドだったので、以降、ハーレー・サーフボーズはビラボンUSAの運営に専念します。

そしてビラボンとの契約が終了した1999 年。社名をハーレー・インターナショナルに改めるとともに、満を辞して自社ブランド「ハーレー」の展開をスタートします。
新生ハーレーのデザインには、ビラボンUSAのデザイナーも参加。
世界トップクラスのサーフブランド・ビラボンの運営で培ったノウハウを余すところなく投入したハーレーのアイテムは、高品質な素材を使ってスタイリッシュにデザインされていたため、海を愛する人達から高い支持を集めるまでさほど時間はかかりませんでした。
2002 年にナイキ傘下となったあとも、ハーレーはサーフィンやビーチライフを楽しむ人々に愛され続け、確固たる地位を獲得。
2019年にはナイキから離れ、米投資会社のブルースター・アライアンスの資本が入り、今後の展開がさらに注目されています。
Hurley(ハーレー)
大人気マルチブランド・デウス
続いてのブランドはDeus ex Machina(デウス エクス マキナ 通称・デウス)。
ちょっと難しいこのブランド名は、ラテン語で“機械仕掛けの神”を意味します。
オーストラリア人のデア・ジェニングスがデウスを創業したのは2006年ですが、彼のキャリアは1978年に地元のシドニーで、「ファントム・レコーズ」という小さなレコード店をオープンしたことから始まっています。
インディーズ系レコードを扱ったデアの選球眼は確かで、ファントム・レコーズは開店後ほどなく、シドニーの音楽好きの間で名の知れたショップになります。
1979年には同名のレコードレーベルもスタート。そこからはデアのおメガネにかなったパンク、ソウル、サイケ、サーフなどのジャンルのバンドが次々にデビューしていきました。
マルチな才能を持つデアは1984年、マンボ・グラフィックというブランド名で服づくりも開始。
政治や宗教といった重いテーマを風刺とユーモアで料理し、どぎついグラフィックに落とし込んだマンボ・グラフィックのウェアは、カルト的な人気を博するようになります。
2006年、デアは新事業として、カスタムバイクとパーツを販売するショップを起こします。そのショップこそがデウス エクス マキナです。機械を意味する「マキナ」という言葉は、バイクショップだったことに由来しているわけです。
そしてデアは、かつてファントム・レコーズからマンボ・グラフィックを展開して成功を収めた手法を、21世紀に再現します。
デウス エクス マキナのブランド名を冠した、オリジナルウェアの展開を始めたのです。

時代の空気感を察知する能力に優れたデアが送り出すデウスの服は、あっという間にファンを獲得します。
そんなデウスが“バイク”とともに掲げたもう一本の大きなテーマこそが、“サーフ”でした。
世界中どこの国でも、多くの男性にとって憧れの“バイク&サーフ”をテーマにしたデウスは、破竹の勢いで拡大をしていきます。
地元オーストラリアからパリ、ミラノ、LAのベニスビーチへ、そして日本にも2011年に上陸し、原宿にフラッグシップショップをオープンしました。
Deus ex Machina(デウス エクス マキナ)
人気沸騰中の新興2ブランド

次に、サーフ業界の中では比較的、新顔に分類されるブランドを2つご紹介しましょう。
VISSLA(ヴィスラ)は南アフリカ出身のポール・ノーデが“Surf EveryThing”というメンタリティのもと、2013年11月に立ち上げたブランドです。
ヴィスラは、立ち上げ早々から大きく注目されました。
それもそのはず、創業者のポールはかつてビラボンUSAで社長を務めたこともある、サーフ業界の超有名人だったからです。
同じ南アフリカ出身で、サーフィンの元ワールドチャンプであるショーン・トムソンとともに波乗りをしながら育ったポールは、自身もプロとしてキャリアを積んだサーファー。
そのポールがビラボン退任後に立ち上げたヴィスラのブランドコンセプトは、“自由な創造”と“前向き思考の哲学”でした。
クリエイターやイノベーターにも愛される、クリエイティヴな雰囲気をまとったサーフブランドなのです。
VISSLA(ヴィスラ)
BANKS JOURNAL(バンクス・ジャーナル 通称・バンクス)は2014年、世界的なサーファーであるブラッド・ガーラックを筆頭に、デザイナーやミュージシャン、写真家など様々な業界の人間が集まり、日本・オーストラリア・アメリカの3ヶ国共同プロジェクトとしてスタートしたLA発サーフブランドです。
誕生から間もないブランドですが、圧倒的な勢いで人気拡大中のバンクス。
サーファーはもちろん、タウンユースのストリートウェアとしても世界中にファンを持つようになっています。
バンクスのTシャツはすべて、再生繊維を活用したオーガニックコットン素材を使用しています。また、ネームにはリサイクルポリエステルを採用するなど、地球環境にも配慮した持続可能性の高いモノづくりを目指しています。
機能性にも細かな配慮がなされた各ラインナップは、派手すぎず落ち着いたカラーリングのアイテムがメイン。
おのずと毎日袖を通したくなるような着心地の良さと、ナチュラルテイストのデザインを売りとしているブランドです。
BANKS JOURNAL(バンクス・ジャーナル)
重鎮・クイックシルバー
そして最後にご紹介するのが、QUIKSILVER(クイックシルバー)。世界のサーフ界で、ビラボンとともに双璧をなす重鎮ブランドです。
現在はカリフォルニア州ハンティントンビーチを拠点としているクイックシルバーですが、1969 年に創業した地はオーストラリアのビクトリア州ベル海岸トーキー。
創業者はアラン・グリーンとジョン・ロウという2人の若きサーファーでした。
彼らは世界で初めて、サーフィン用に特化したパンツ=ボードショーツを世に送り出し、クイックシルバーの知名度を一気に上昇させました。
それまでのサーフィンはスイムパンツを穿いてやるのが当たり前でしたが、サーフィンの特殊な動きを考慮して開発されたクイックシルバーのボードショーツは機能性が高く、瞬く間に世界中のサーファーへと広がったのです。
クイックシルバーのロゴマークは、葛飾北斎の絵画「富士山と波」(富嶽三十六景 神奈川沖浪裏)をモチーフにしたものであることも有名です。
創業者が北斎の絵を見て、「これこそ自分たちのライフスタイルを象徴するものだ!」と感銘を受けたことから、このロゴが創られたそうです。
ちなみにクイックシルバーは、創立者の一人の娘の名前にちなんだ女性向けサーフブランド、ロキシーも展開しています。ロキシーのロゴマークはハートをモチーフとしていますが、クイックシルバーのロゴを鏡像で向かい合わせに並べた形になっています。
「富士山と波」の絵に対する深い愛着がうかがい知れて、我々日本人としてもちょっと嬉しくなる話です。
1980年代にはサーフで培ったノウハウを応用し、スノーウェアとスケートウェアの展開も始めたクイックシルバーは、現在も世界トップクラスの横乗り系ブランドとして名を馳せています。
さて、駆け足で紹介してきた5つのサーフブランド。いかがだったでしょうか?
いずれもこれからの季節にぴったりの、アクティブ感とリラックス感を演出できるアイテムが展開されているブランドです。
昨今、かつてないほどサーフブランドへの注目度が高まっています。
いずれのサーフブランドも自然を愛し、地球のダイナミックな鼓動を感じながら遊び、暮らす人たちに向けたブランドなので、「サステナブル」や「SDGs」というキーワードが注目される現代社会にマッチしているのかもしれません。
リアルサーファーも陸サーファーも、今こそサーフスタイルで決めてみてはいかがでしょうか。
