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2021.9.29

大人な“スポーツ系”新鋭ブランド『BALR.』

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

サッカー選手とIT起業家

BALR. 最近、街中でよく見かけるシンプルで印象的なロゴ。気になっていた人も多いのではないでしょうか?
しかし「これ、なんていうブランド?」と聞かれると自信が持てず、口ごもってしまう人もいるはず。
このロゴを見て一発でブランド名を言える人は、最新ファッション事情に敏感なのかもしれません。
でも実は、何と読めばいいのか分からない名前であることこそが、このブランドのアイデンティティ。そして、一種のマーケティング戦略なのです。
今日、はっきりと記憶してください。BALR.=ボーラーであると。

BALR.は2013年5月に、サッカーオランダ代表選手のデミー・デ・ゼーウが中心となり、同僚のエルイェロ・エリア、グレゴリー・ファン・デル・ヴィールが株式保有という形で協力して立ち上げられた、オランダ発のスポーツ系ストリートブランド。
サッカー選手たちの華麗なライフスタイルにインスピレーションを受け、“サッカーとファッションの融合” というコンセプトのもと、スポーティーでありながらラグジュアリーなスタイルを提案しているブランドです。

サッカーの試合bild:Jimmy Baikovicius, flickr.com, CC BY-SA 2.0

立ち上げから8年しか経過していない若いブランドであるのにかかわらず、BALR.は現在、世界中のファッショニスタの間にすごい勢いで浸透しています。
BALR.のアイテムはいずれも、その難読ブランドロゴを前面に強く打ち出したものばかりです。
たった4文字のアルファベットとピリオドで形成されながら、「いったい何と読むのだろう?」と惑わせたことが、人々の興味を逆に強くかき立て、急速なブランドの認知、そして拡散・浸透につながったと言って間違いありません。

インスタグラムを中心とするSNS も、BALR. の快進撃に一役買いました。
フォローしているおしゃれな人が、やけに目立つロゴの服を着ているのに、いざそのブランド名を頭の中で再生しようとすると「んん?」となってしまう。
このもどかしい感覚を消費者に与えることこそが、BALR.が発明した野心的なブランド認知戦略だったのです。

BALR.が立ち上げ当初から、時代の空気をとらえた見事な戦略をとった背景には、3人のサッカー選手とともに、ラルフ・デ・ヘウスとユール・マンダースという2人のIT起業家が創業に携わっていたことも大きいようです。

難読ブランド名という革新的戦略

数年前にブランドが日本へ上陸するやいなや、BALR.ロゴが大きく配された黒&白基調の服を着てメディアに登場するモデルやタレントが続出しました。
世界的に見ても、ダニエウ・アウヴェス、ネイマール、フェルナンド・トーレスといったサッカー界のファッショニスタをはじめ、各界セレブが愛用。
その姿が、インスタグラムなどを通じて拡散されました。
おしゃれなセレブがこぞって着ている、見慣れないロゴの服って一体なんなのだろう? 多くの人が気にするようになるまで、さほど長い時間はかかりませんでした。
これぞBALR.の創業者たちが考えた、ブランドヒットの一里塚だったわけです。

BALR.のInstagram

その後BALR.は、オランダ出身の世界的DJであるハードウェルとコラボをしたり、アップルやスターバックス、コカ・コーラ、ナイキなどの世界的企業と協業したりと、畳みかけるように大きな話題作りを仕掛けていきます。
そして、オランダから世界へと羽ばたいていきました。

ここで一瞬だけ、大きく脇道にそれることをお許しください。
“読めないブランド名”といえば、私は1990年代末ごろに人気を博したドメスティックブランド、20471120のことを思い出します。 私と同世代の中には、「懐かしい!」と膝をたたく方もいるかもしれません。
このブランド、“トゥーオーフォーセブンワンワントゥーオー” という通称もありましたが、正式名称は“トライベンティ”です。
トライベンティというのは、イタリア語で「20と20の間」という意味。
なんじゃそりゃ!? という謎かけのようなブランド名ですし、リリースする服もクセが強いものばかりだったのですが、ファッション通の間では評価の高いブランドで、20471120のロゴを見て「ああ、トライベンティね」と言えば、おしゃれさんの証であるような雰囲気がありました。

1995年にスタートして確固たる地位を築いたものの、2000年代に入るやいなや解散してしまった、時代の徒花的裏原ブランド、20471120。
BALR.とはまったく無関係な話ではありますが、“読めないブランド名”をコンセプトとした確信的戦略という意味で共通するものがあるなあ、と思い出しました。
“普通の人には読めないブランド名を知っている”――ファンにそんな優越感を与えることも、ブランドの価値を高めるひとつの方法論なのでしょう。

無駄な話に付き合わせてしまってすみません(笑)。

それでは気を取り直してBALR.のアイテムを使ったコーディネートを考えていきましょう。

大人な“スポーツ系”コーデ

BALR.は3人の有名サッカー選手が立ち上げた、“サッカーとファッションの融合”をコンセプトとするブランドですから、そのラインナップは非常にスポーティな印象です。
そして、黒と白を基調とした“ラグジュアリー感”もブランドの指標としているため、大人のタウンユースにも最適なアイテムが揃っています。
このブランド特性をうまく取り入れた、大人な“スポーツ系”コーディネートを考えてみましょう。

コーディネート1

まずはTシャツです。
BALR.のブランドコンセプトカラーは黒と白。特に初めてBALR.に袖を通すという人には、よりブランドの特質を意識できるブラックがおすすめです。
このTシャツには目立つロゴプリント以外、さほど大きな特徴がないように思われるかもしれませんが、裾のカットにご注目ください。
フロントは直線状になっていますがバックはラウンドしていて、タックアウトして着ると、さりげないアクセントとなります。

ブランド Tシャツ ブランド Tシャツ

身体のラインを出す“アスレチックフィット”を採用しているのも特徴です。
ルーズシルエットのトレンドが続くなか、自分の本来のものより大きめのサイズを選ぶ人は多いと思いますが、このTシャツに関してはジャストサイズで、身体に密着させるように着た方が、本来の味を引き出せます。

ボトムスもスポーツ系ブランドのアイテムを合わせましょう。HUFの「イシューフリースパンツ」などどうでしょう?

イシューフリースパンツ イシューフリースパンツ

色はブラック。BALR.のTシャツに合わせてブラックで統一するように選んでいくと、精悍でスポーティーなスタイルがつくりやすいものです。
だからスニーカーも、ブラック&ホワイトで。
クラシカルな印象の、オニツカタイガー「1183B395」など合わせるとかっこいいですね。

EDR 78 EDR 78

これからのシーズンに必須の上着は、トレンド継続中のコーチジャケットを合わせるのがおすすめです。
アディダスの「TANGO ファンダメンタル コーチジャケット」。もちろんカラーはブラックを選択します。

TANGO ファンダメンタル コーチジャケット TANGO ファンダメンタル コーチジャケット

全身黒ずくめのなか、要所要所に浮かぶ白いロゴ。
どうでしょう? ソリッドなスポーツ系トータルコーディネートになったのではないでしょうか。

BALR.は将来の名品ブランド

BALR.のアイテムを使ったコーディネートをもうひとつ、提案します。
このブランドからは様々なアイテムがリリースされていますが、服とともに大きく支持されているのがバッグ類。
デイリーユースに最適なバックパックから、スポーツや旅行で重宝しそうな大きめのボストンバッグ、大小のショルダーバッグも展開されています。

コーディネート2

そのなかからピックアップするのは、軽いお出かけから小旅行、ランニングなどのスポーツ時にまで使える、汎用性の高いウェストバッグです。

その名の通りの使い方をするならば、ベルトのように腰に巻くのが正解のような気がするウェストバッグですが、現在、大半の人はボディバッグのように、片方の肩から斜めがけして使いいます。

肩から斜めがけすると、ウェストバッグの収納部は、背中の高い位置や胸元といった目に入りやすい位置にきます。
ここに目立つロゴが配置されるBALR.のウェストバッグは、コーディネートの重要ポイントになるわけです。

U-SERIES WAISTPACK U-SERIES WAISTPACK

BALR.のバッグはこちら

ウェストバッグを強調するため、トップスは薄い色のものを選ぶといいでしょう。
チャンピオンの名品スウェットパーカー「リバースウィーブ」ではどうでしょうか。
色はホワイト、サイズはジャストより1〜2サイズ上をチョイスします。

リバースウィーブ ポリプロピレン L.W.D. プルオーバー スウェットパーカー リバースウィーブ ポリプロピレン L.W.D. プルオーバー スウェットパーカー

ボトムスには、オーセンティックな雰囲気のチノパンツを合わせてみましょう。
これまた名品の誉れ高き、ディッキーズの「874」。私なら色はチャコールを選びます。

874 オリジナル ワークパンツ 874 オリジナル ワークパンツ

そして秋はワークブーツが恋しくなる季節です。
名品ワークブーツといえばこれしかありません。“イエローブーツ”の通称で知られるティンバーランドの「10061 6インチ プレミアムブーツ」です。

6インチ プレミアムブーツ ウィートヌバック 6インチ プレミアムブーツ ウィートヌバック

BALR.は若きブランドですが、その急速な浸透具合と確信的なモノづくりの様子からいって、これから定番化していくことは間違いありません。
現在ではまだ目新しい感のあるBALR.を、“近未来の名品ブランド”と自分の頭の中で勝手に位置付け、すでに定評のあるブランドの名作と合わせてテーマ性を密かに楽しむコーディネート。
わかりにくい? 独りよがり?
そんな声も聞こえてくるようですが、ファッションって、本来そういうものなのだと思うのです。

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