

2022.9.7
スケートブランドの“アイコン”と歴史
メンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん
メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?
ホットロッドなDOGTOWNのロゴ
2021年の夏におこなわれた東京オリンピックで、正式競技に採用されたスケートボード。日本人選手が大活躍し、コロナ禍によって萎縮しがちだった私たちの気分を大いに盛り上げてくれたことは記憶に新しいところです。
スケートボードは1970年代にアメリカ西海岸で最初に注目されて以降、世界中で幾度も大規模なブームを繰り返し、昨今はもはや廃れることないライフスタイルの一つとして確立しています。
それにしても、オリンピック以降はこれまでにないほど、スケートボードとスケートファッションへの注目度が高まっているようです。
そこで今回は、数あるスケート系ブランドから6つを厳選。各ブランドの“アイコン”に的を絞って解説していきたいと思います。
まずはスケート史的に最重要ブランドであるDOGTOWNから。
1970年代に一世を風靡し、今日のスケートボードカルチャーの礎を築いた伝説的なチーム・Z-BOYSのメンバー、ジム・ミューアが創設したブランドです。
DOGTOWNとはZ-BOYSが本拠地としていたロサンゼルス・ヴェニスビーチの異称。
70年代当時のこの地区は不良の吹き溜まりのようなところで、とても治安が悪く、警官が街を終始パトロールしていたためこのように呼ばれるようになったといいます。
DOGとは警官の蔑称ですね。
ロゴは独特の書体で「DOGTOWN」と記された十字架です。このデザインからは、1960年代に南カリフォルニアからはじまったホットロッド文化(車やバイクを激しく改造して楽しんだ人々のアートワークやファッションのこと。「カスタムカルチャー」とも呼ばれる)の香りが漂います。
クロスロゴと呼ばれるこのアイコンをデザインしたのは、DOGTOWNで数々のスケートアートを制作した、デザイナーのウェス・ハンプストン氏です。
彼がデザインしたこのロゴをはじめとするDOGTOWNの数々のホットロッド的アートワークによって、スケートボードカルチャーは“サーフカルチャーの弟分”という立ち位置から離れ、西海岸の伝統的不良文化としっかりつながったと言ってもいいかもしれません。

DOGTOWN(ドッグタウン)
雑誌のタイトルロゴだったTHRASHER
続いてご紹介したいブランドはTHRASHERです。
ご存じの方も多いと思いますが、THRASHERのブランドロゴは、1981年にエドワード・リギンズという人物がサンフランシスコで創刊し、現在も存続する世界最初のスケートボード雑誌『THRASHER MAGAZINE』のロゴと同じ。
THRASHERとは『THRASHER MAGAZINE』のスピンオフブランドだからです。
THRASHERのロゴが“MAGLOGO”(MAGはMAGAZINEの略)とも呼ばれるのは、こうした背景によるものです。

THRASHERのロゴはもうひとつ、“FLAME LOGO”とも呼ばれています。
FLAMEは「火炎」という意味ですが、文字どおり、THRASHERのロゴの上部は炎が燃え上がるデザイン。
スケートボードという当時の新進カルチャーシーンが、いかに熱く燃え上がっていたかを象徴するようなロゴなのです。
このシンプルながらユニークなロゴデザインは雑誌創刊以来、現在まで何度も盗用の憂き目を見ています。
あまりにも有名で、あまりにもスタンダードなロゴのため、ついつい模倣してしまう人が後を立たないようですが、そうした盗用の疑いがあるデザインを見つけるたび、THRASHERは画像とともに、激しい言葉で非難するコメントなコメントをSNSに投稿しています。
そうした過激な姿勢も、スケートブランドらしいところなのかもしれません。
THRASHER(スラッシャー)
続いてはSANTA CRUZ。
リチャード・ノヴァックという人物がカリフォルニアのサンタクルーズで1973年に創業した、世界最初のスケート専門ブランドです。
スケート系としては歴史が長いブランドだけに、そのブランドロゴを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
1973年という、Z-BOYSもまだ登場していなかった頃にデザインされたロゴなので、サーフィンとのつながりを感じさせる爽やかテイストなものです。
しかし1985年にリリースされた有名な「Screaming Hand」ロゴは、当時のスケートがハードコアパンクやスラッシュメタルなどのラウドロックシーンと密接なつながりを持ちはじめたことを感じさせるもの。
この頃のグラフィックのほぼすべては、ジム・フィリップスというアーティストがデザインしていました。ほかにも数々のスケートボード用グラフィックをデザインした彼は、スケートのサーフィンカルチャーからの分離を決定づけた立役者でもあるのです。
SANTA CRUZ(サンタクルーズ)
ELEMENTのtreeロゴに秘められた意味
ELEMENTはスケートボード人気が加速の一途だった1992年に、アメリカ東部のアトランタで創業したブランドです。
創業者は、4歳の頃から熱心にスケートをやってきた東海岸出身のスケーター、ジョニー・シラレフと、当時一世を風靡していたスケートブランドであるニューディール所属のプロスケーター、アンディー・ハウエルです。
創業当初のブランド名はUNDERWORLD ELEMENT、略してUNDERWORLDと呼ばれていました。
折からのヒップホップムーブメントにも触発されたUNDERWORLDは、カリフォルニア乗りの強かった従来のスケートに都会的なエッセンスを組み合わせ、斬新なスタイルを提案します。
ところが会社は多くの課題に悩まされて事業崩壊し、創業時のメンバーは次々と会社から離れていきました。
1994年、共同創業者のアンディーが離脱したタイミングで、ジョニーはブランド名をELEMENTと改め、拠点をカリフォルニアに移して事業の立て直しをはかります。
木をモチーフにした印象的なELEMENTのロゴは、その頃に誕生したものです。
ちなみにELEMENTというブランド名は、古代ギリシアで考えられていた宇宙を構成する4つの基本要素(=エレメント)、「WIND(風)」「WATER(水)」「FIRE(火)」「EARTH(大地)」に由来しています。
そうした基本要素があったうえで育つ、この世の中に必要不可欠な5番目の要素として、ブランドロゴには「TREE(木)」のモチーフを採用したわけです。
中央に配置された木のモチーフは二重丸で囲まれていますが、外側の円は上部が4本に分かれています。
この4本線が、上記の基本4要素を表していることは容易に想像がつくでしょう。

ELEMENTのロゴが描かれたスケートデッキを目にしたことがある人も多いと思います。
ELEMENTはアパレルもさることながら、デッキのメーカーとしても大変人気があります。
フェザーライトプレスという独自製法によって製造されるそのデッキは軽くて丈夫、そして洗練されたデザインで、プロから初心者まで、トップクラスの人気を誇っているのです。
ELEMENT(エレメント)
INDEPENDENT=ミリタリーにあらず
1978年に登場したINDEPENDENT(インディペンデント)も、老舗スケートブランドとしてリスペクトされています。
スケーターだけではなく、ハードコアパンクスやアーティストなどからも熱い支持を受けるブランドなので、ライブ会場などでもこの特徴あるブランドロゴが描かれた服を着ている人をよく目にします。
INDEPENDEMNTのクロスロゴは、古くからヨーロッパで使われていた象徴的な図案である“鉄十字(アイアンクロス)”をモチーフとしています。
中世以来、ドイツを中心とする欧米の軍隊では、武勲のあった将兵に鉄十字勲章を贈る習わしがありました。
そのためミリタリーのイメージが強いようですが、INDEPENDENTが創業以来用いている鉄十字ロゴは、『タイム』誌に掲載された当時のローマ法王ヨハネ・パウロ2世着用の服に描かれていた鉄十字を参考にしたのではないかと言われています

INDEPENDEMNT(インディペンデント)
続いてご紹介したいのがDC SHOES。
1994年にプロスケーターであるダニー・ウェイの兄、デーモン・ウェイ、コリン・マッケイ、ラリードライバーのケン・ブロックらによって創設されたスケートシューズブランドです。
ブランドロゴは言わずもがな、「D」と「C」の文字の組み合わせ。ではDC SHOESのDCとはどういう意味かといえば、このブランドの前身であるDROORS CLOTHINGの頭文字からとったものなのだそうです。
そしてお気づきのとおり、この2つの文字の組み合わせデザインはシャネルのロゴのパロディでもあります。
世界に名だたる高級ブランドを茶化してしまうところが、反逆のスポーツであるスケートボードのブランドらしいと言えるのではないでしょうか。
DC SHOES(ディーシーシューズ)
スケートボードのファッションは、ブランドのロゴを効果的に受かったものが多く、またそうしたロゴドンの服が映えるスポーツでもあります。
ぜひ、そのロゴの意味を思い返しながら、スケートファッションを楽しんでください。
そして最後に、これからスケートボードをやってみたいという人に朗報。
非常にコスパの良い、オリジナルのスケートボードコンプリートセットをご紹介します。
スケートボードに最適の木と言われているカナディアンメープルの7層デッキ、柔らかめのウィールによく回るABEC7のベアリングなど、初心者〜中級者に最適なパーツが完全にセットされているのに、驚愕の低コスト。
シンプルで風合いのあるデッキは7色がラインナップされ、サイズも体格に合わせて3種類から選べます。
無地のデッキなので、今回ご紹介したブランドロゴのステッカーをガンガン貼って、自分なりのカスタムをするのもきっと楽しいと思いますよ。