2021.7.1
“スポーツサンダル”というジャンルを代表する2大ブランドKEEN & Teva果たしてどちらを買うべきか
<店長>
最近集めていたTシャツを断捨離。30枚ほどなくなってスッキリしました。
<佐藤さん>
メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
Q.KEENとTeva。ブランド誕生のきっかけとは
佐藤さん。そろそろ決着をつけましょうか。
え? いきなりどうしました!?(笑)
スポーツサンダルが恋しい季節になってきましたが、どれが一番いいのかと、お客様から聞かれることがあるんです。
ほお。
それで、当店にあるものはどれもおすすめですが、特に定評のあるKEENかTevaを選べば間違いないですよ、とおすすめすると……。
はいはい。
じゃあどっちがいいのか、はっきりしてくれと。
なるほど。
私としては、この2ブランドに絞るだけでもう精一杯で。
はあ。
最終決着は佐藤さんにお任せしようかと。
いやいやいや。それはちょっと荷が重いですね(笑)。
私には店長という立場もあって断定することはできません。ここはぜひ、佐藤さんに白黒つけてもらおうかと……。
(笑)。参りましたね。僕はスポーツサンダルが好きなので、どちらも履いたことはありますが、それぞれ特徴的で甲乙つけがたいですよ。
そこをなんとか。きっちり、かたをつけてください(笑)。
う〜ん。じゃあ、“蘊蓄派”の僕の手法にのっとり、両ブランドの歴史をひもとくことからはじめましょうか。
お願いします。
まず創業年ですが、Tevaは1984年、KEENは2003年です。
へえ、KEENは今世紀に入ってから創業したブランドなんですね。
そう。意外と新しいですよね。スポーツサンダルの世界では有名なブランドなので、もっと老舗と思っている人も多いようです。
じゃあ、Tevaの勝ちですか?
いやいや、気が早い(笑)。歴史が長いというのはひとつの魅力ではありますが、それだけで勝負は決けられないでしょう。
ですよね(笑)。両方ともアメリカのブランドですよね?
TevaもKEENもアメリカのカリフォルニア州に本拠地を置いています。
あれ? Tevaは確か、グランド・キャニオンがゆかりの地だとか?
ビジネスの拠点はカリフォルニア州のゴリータという街ですが、ブランド誕生のきっかけとなった地は、ネバダ州のグランド・キャニオンですね。
Tevaは、世界で初めてのスポーツサンダルを開発したブランドですよね?
そうです。開発したのは、地球物理学者という肩書きを持ちながら、グランド・キャニオンのリバーガイドを務めていた、マーク・サッチャーという人物。彼は川でおこなうラフティングなどのレジャースポーツの際、水辺用のものであるはずのビーチサンダルが簡単に脱げてしまうことに不満を抱いていたそうです。
なるほど、それでストラップを。ウォータースポーツをやっているときにサンダルが脱げると、危ないですもんね。
転倒事故などを起こしやすいですし、それを気にしているとスポーツの楽しさが損なわれてしまいますからね。そこでマークは、従来のビーチサンダルに、アウトドア用の腕時計で用いられるようなナイロン製ストラップをプラス。サンダルを足首に固定するスタイルを考案したんだそうです。
スポーツサンダルの誕生ですね。
そうです。単純なようで、とてもイノベーティブな発想ですよね。そのサンダルを売り出すためにTevaブランドを立ち上げたのが1984年のことです。
Q. 両ブランドの共通点、創業者の実地にもとづくひらめきとは
KEENの方は、どんな誕生秘話があるのでしょうか?
KEENはアメリカ・カリフォルニア州のアラメダという街で、マーティン・キーンとローリー・ファーストという二人の人物によって設立されたブランドです。つま先を覆う形状が特徴のサンダルですが、これは、創業者であるマーティンの個人的な体験が原点にあるそうです。
個人的な体験ですか。
ええ。ある日、ヨットを楽しんでいた彼は、デッキで足のつま先をぶつけてケガをしてしまいます。そのとき、現状で足先を保護してくれるサンダルが存在しないことに気が付いたそうです。
そして、ひらめいちゃったんですね。
そうですね。マーティンはもともと、サッカニーやトミー・ヒルフィガー、ケースイス、クラークスといった著名ブランドでキャリアを積んできた人物。相棒のローリーもアウトドアブランドの商品企画で腕を磨いた経歴を持っています。そんな彼らが手を組み、足先を保護してくれるサンダルの開発を決意。キーンが誕生することになりました。
なるほど。個人のひらめきから開発された、画期的なサンダルが創業のきっかけとなっている点が、両ブランドの共通点なんですね。
そういうことですね。
それぞれの象徴的なモデルを紹介していただけますか。
Tevaの商品のなかで特に有名なのは、「ハリケーン」というモデルです。これは、マークが最初に開発したストラップ付きサンダルに改良を施したもので、その後のブランドを代表する定番アイテムとなりました。一方、KEENを代表するモデルは、創業と同時に発表した「ニューポート」です。これには創業者二人が考え抜いた末に生み出した、つま先を保護するための機能を備えた“トゥ・プロテクション”が採用されています。
TevaもKEENも、創業者の最初のアイデアによって生み出されたアイテムが、今も人気商品になっているわけですね。
そういうことですね。「これを世に問う」という創業者の気概のようなものが感じられる魅力的なアイテムです。そしてTevaには「オリジナルユニバーサル」というモデルも……。
あ、佐藤さん。「オリジナルユニバーサル」の説明は私にさせてください。これ、個人的に好きなアイテムなんです。
どうぞどうぞ(笑)。
では(笑)。「オリジナルユニバーサル」は「ハリケーン」よりもシンプルなソールを備えたモデルです。ストラップの形状などはハリケーンと同様ですが、スニーカーライクなハリケーンのソールと比べると、ビーチサンダルに近いフラットなソールになっています。“オリジナル”という言葉から推察できるとおり、Tevaの原点であるファーストモデルの復刻版なんですね。ビーチサンダルにストラップをつけたら……というマークのひらめきがそのまま形になったような、シンプルでベーシックなスタイルが魅力のアイテムです。
おすすめですね?
激しくおすすめです!(笑)
Q.KEEN vs. Teva、軍配はどちらに?
今日、アンクルストラップがついたスポーツサンダルは巷に普及していますが、実地での経験に裏打ちされたマーク・サッチャーのひらめきによるTevaの誕生がなかったら、生まれてはこなかったものです。
そういう観点から言えば、Tevaはスポーツサンダルの元祖、オリジナル・オブ・オリジナルですから、一番エラいということになりますね。
確かにエラいと言えばエラいですね(笑)。でも、気軽に履けるサンダルでありながら、まるで靴を履いているかのような安心感が得られるKEENのアイデアも、かなり素晴らしいものだと思います。僕がKEENのサンダルを最初に買ったきっかけの話、したことありましたっけ?
いいえ(笑)。興味深いですね。
2015年のフジロックに行ったときのことです。その頃の僕はTevaの「ハリケーン」を愛用していて、当然のようにフジロックにも履いていったんですね。
ほうほう。
その年のフジロックには、19年ぶりに活動を再開した、イギリスのRIDEというバンドが出演していました。僕の学生時代の思い出のバンドですので、張り切ってグリーンステージの前方に陣取って観ていたんです。
あ、サンダルはやばいですね。
お気づきですね(笑)。そう、サンダル履きなので注意はしていたんですが、『Chelsea Girl』という名曲のイントロで頭に血がのぼり、最前列のモッシュピットに突っ込んでいったんです。
あ〜あ(笑)。
気がついたら、右足の小指の爪が剥がれていて、RIDEのステージが終わってから、急いで救護所に駆け込みました。
つま先の保護が大事だというのは、ウォータースポーツだけの話ではないんですね。
そうなんですよ。それで僕はKEENの「ニューポート」を買って、翌年以降の夏フェスには、必ずそっちを履いていくようになりました。
なるほど。非常に具体的な話、ありがとうございました(笑)。
店長さんは個人的に、Tevaの「オリジナルユニバーサル」が好きだとおっしゃっていましたが、どういうところに魅力を感じるのですか?
もともと、ビーチサンダルのようなシンプルなサンダルが好きなんです。「オリジナルユニバーサル」は誕生の経緯を見ればわかるとおり、ビーチサンダルをベースにしてストラップを追加したような形ですから、このシンプル感がたまらないんですよ。
確かに、おしゃれですよね。
足元の抜け感を演出できますし、ソックスをプラスして履けばコーディネートのアレンジも効くし、ファッションアイテムとして使い勝手がいいんですよね。
Tevaはご紹介した「ハリケーン」や「オリジナルユニバーサル」だけではなく、さまざまな形のモデルがリリースされていますよね。
スリッポンタイプや、鼻緒だけのビーチサンダルタイプ、それにスニーカーやブーツタイプまであって、当店でも取り揃えています。こうしたラインナップの充実っぷりも、Tevaの魅力と言えますね。
なるほど。話せば話すほど、TevaもKEENもいいブランドだということが分かってきますね。
では佐藤さん、そろそろ。
え? 何ですか?
軍配はどちらに?
(笑)。引き分けで良くないっすか?
そうですね(笑)。無理に勝敗を決めることもないですよね。私もお客さんのニーズをよくヒアリングし、最適なものをおすすめすることにします。
そういうことですね(笑)。頑張ってください。