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Dr.Martensの魅力

2020.09.01

Dr.Martens

メンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

トレンドの続くドクターマーチン

UKストリートスタイルを象徴するロックな靴の大定番であり、昨今トレンドが継続しているドクターマーチン。
第二次世界大戦後間もなく、ドイツ人医師のクラウス・マルテンが開発した、“バウンシングソール”と呼ばれるエアークッションのきいた靴底を施したワークブーツを中心に発展したブランドです。

ドイツ軍の従軍医師であったクラウス・マルテンは1945年、スキーで負傷した足の治療中に、痛みを和らげる靴をつくれないかと考えました。軍支給の硬い革底ブーツでは、歩行時にどうしても痛みが走るからです。
そして友人のフンクとともに試行錯誤し、古タイヤを加工して空気を封入したエアークッションソールの開発に成功します。

ソールのイギリスでの製造権を獲得した作業用と軍用の靴メーカー、R.グリックス社は1960年、ドクターマーチンのエアークッションソールを施した最初のワークブーツを完成させ、「1460」のコードをつけて販売します。
そのブーツは当初、郵便配達人や警察官、工場労働者などに向けた実用本位の作業靴でした。



ところが1960年代後半、モッズから発展したワーキングクラス層の若者集団・スキンヘッズが、反体制・アンチファッションの表現として用いるようになります。
スキンヘッズは、労働者階級というアイデンティティを誇示するため、モッズスタイルをベースにワークアイテムをミックスし、独自のスタイルを形成していった集団。本来は牧場労働者が使うランチコートや、炭鉱や港湾労働者の服であるドンキージャケット、土木作業者が使うサスペンダーなど、ワードローブの多くはワークウェアでした。
最たる特徴である坊主頭もまた肉体作業者の象徴。
そんな彼らがもっとも愛したアイテムが、ドクターマーチンのワークブーツだったのです。

bild:Eugene Peretz, flickr.com, CC BY-SA 2.0

定番のサイドゴアブーツ

スキンヘッズの前身であるハードモッズや初期スキンヘッズは、黒革のものやロングタイプも履きましたが、やがてチェリーレッド(赤茶色)の8ホール(紐を通す穴が片側8つずつ)、最初期型の「1460」が一番クールだと認識されるようになります。
つまり数あるドクターマーチンのブーツの中で、ストリートスタイルの基本となるのはミドルカットのレースアップブーツということになります。
しかしドクターマーチンのブーツはレースアップタイプだけではありません。
ラインナップの中では、1460と同じくらいの長さの丈を持つ、ミドルカットのサイドゴアブーツもとても人気がある定番商品です。

ドクターマーチンのサイドゴアブーツは1970年代初頭にリリースされ、1970年代後半のツートーンやネオモッズ、1990年代前半のニューモッズ、90年代中期以降のブリットポップなど、モッズ由来の様々なUKストリートスタイルに欠かせないアイテムとなりました。

bild:Alan Stanton, flickr.com, CC BY-SA 2.0

しかし、サイドゴアブーツ自体の歴史はもっと古いものです。
もともとは1830年代中頃、ロンドンの靴職人が即位したばかりのヴィクトリア女王のために、脱ぎ履きしやすくフィット感の得やすい靴としてつくり、献上したもの。
当時、両サイドに伸縮性のあるゴムを施した靴は、非常に画期的だったそうです。
ところが、ヴィクトリア女王よりもこのブーツに関心を抱いたのは、洒落者として知られる夫のアルバート公でした。アルバート公は、ブーツのデザインを紳士靴に落とし込み、現在のサイドゴアブーツのスタイルを完成させたと言われています。

こうした歴史のあるブーツが、1960年代前半、全盛期のモッズの間で人気となり、“チェルシーブーツ”と呼ばれるようになっていきます。ロンドンのチェルシー地区に生息するモッズに由来してこの名になったのですが、モッズが履きはじめたきっかけは、ビートルズの影響だったと推測されています。

マーチンのサイドゴア

自分の好みに合ったスタイルを

1962年、当時の流行最先端であったモッズスタイルでデビューしたビートルズは、揃いのタイトなスーツにチェルシーブーツを合わせた出で立ちでした。
しかし、ロンドンのストリートに生息したモッズの多くは、ビートルズを仲間とは認めませんでした。
前身となったバンド、ザ・クオリーメン時代は革ジャンにリーゼントでロックンロールやスキッフルを演奏するロッカーズだったし、第一、リバプール出身の田舎者だと見くびっていたからです。

ところが、ビートルズはあっという間に世界を席巻する人気者になってしまいます。ストリートのモッズたちは、表向きにはビートルズを馬鹿にしつつも、彼らのスタイルを意識せざるを得なかったのでしょう。
この頃のモッズは、老舗メーカーがつくる革底のチェルシーブーツを履いていました。でも、スウィンギングロンドンやスキンヘッズの流行を経て、1970年代初頭にリリースされたドクターマーチン製のチェルシーブーツ、コード「2976」は、洗練されたスタイルと手頃な価格によって注目され、以降、モッズの子孫たちの定番になっていったのです。

bild:Paul Hudson, flickr.com, CC BY 2.0

ドクターマーチンのサイドゴアブーツにも、現在はいくつかの種類があります。
爪先が丸く、定番のレースアップシューズに形が近い初期型の“2976シリーズ”。
爪先にスティールが入った安全靴仕様で、よりぼってりしたシルエットの“2311シリーズ”。
そして爪先が細く、ドレスシューズらしさがあるレディースの“フローラシリーズ”や、ビジネス靴としても使えるメンズの“ケンジントンシリーズ”です。

好みによって選ぶタイプは人それぞれだと思いますが、荒々しい後期モッズやスキンヘッズのスタイルにより共感し、ロックテイストなストリートスタイルを目指したいなら2976か2311シリーズがおすすめです。
最初期のサイドゴアブーツからビートルズへの流れをくむ、洗練されたスマートなスタイルを目指したいのなら、フローラやケンジントンシリーズがおすすめです。
さて、あなたはどのタイプがお好みでしょうか?


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