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2020.12.2

PYRENEX(ピレネックス)

メンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新」が発売
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

ピレネー山麓の老舗工場

フランスのダウンウェアブランド、PYRENEX(ピレネックス)。
その名から予想できるかもしれませんが、フランス・スペイン国境にまたがるピレネー山脈の麓にある会社です。
今から160年以上前の1859年、アベル・クラボスという人物が創業。以来、一貫してサン・セベという町で羽毛製品を生産し続けています。

pyrenex_1.jpgbild:Frederic BISSON, flickr.com, CC BY 2.0

ピレネックス社は、食用として処理されたグース(ガチョウ)の副産物である羽毛を使い、掛け布団や枕などの寝具を生産する会社として創業しました。
サン・セベのある南西フランスは、食肉やフォアグラなどの家禽産業が盛んな地域。原材料となる羽毛を、常時大量に入手しやすい環境だったのです。

そんな南西フランスの中でも、サン・セベは特に厳しい気候の土地です。すぐ近くの峻険なピレネー山脈から、冬になると冷たい風が吹き下ろしてくるからです。
ピレネックスがそこを選んだのにも、実は大きな理由がありました。
厳しい気象条件のもとで育った水鳥からは、おのずと保温性が高く柔らかい羽毛が取れるのです。

良質な羽毛素材を使い、ハイクオリティな製品を生産するピレネックス社の事業は順調に発展し、1960年代に入る頃には寝具だけではなく、シェラフやダウンジャケットなど、登山家やキャンパーのための本格的アウトドアアイテムを生産するようになりました。
ただしこの頃のピレネックスは、まだ独立したブランドではありません。
OEMメーカーとして、様々なアウトドアブランドに製品を提供していたのです。

ピレネックス社が製品提供していたブランドとしてまず挙げられるのが、フランスのモンクレールでしょう。
また2002年にそのモンクレールから独立して創業したイタリアのデュベティカも、ピレネックス社から製品提供を受けています。
高級ダウンジャケットメーカーとして名高いモンクレールやデュベティカの商品が、中身はピレネックスだと聞くと、このブランドの良さが理解できるのではないでしょうか。

頑なに創業の地に居続ける理由

そんなピレネックス社が自社のブランド名を冠してアパレル事業を開始したのは、1990年代に入ってからのこと。
高級ブランドへ製品提供をしていた技術力の高い一流ファクトリーであることも広く知られ、世界中で多くのファンを獲得していきます。
現在、創業者から数えて5代目へと引き継がれている同社は、若手デザイナーや有名ショップなどとコラボしたプレミアムラインも展開し、よりファッションシーンを意識した商品を生み出すようになっています。

世界に名だたるダウンウェアブランドに成長したピレネックス社ですが、いまだに(こう言ってはなんですが)フランスの片田舎であるサン・セベに本社と自社工場を置いています。
高い建物といえば協会の尖塔くらいしかない、おとぎ話に出てきそうな古いヨーロッパの街並みを残す市街地から少し離れた田園地帯。
アドゥール川という綺麗な川のほとりが、ピレネックス社の本拠地です。
パリの直営店や有名百貨店、セレクトショップにコーナーを展開するおしゃれなファッションブランドと、田舎工場の風情漂うその建物とは、一見つながりにくいものです。

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でも、その地に居を置き続け、頑なに原毛から一貫生産し続けているからこそ、ダウンウェアの最高峰とまで謳われる現在のピレネックスがあるのかもしれません。
創業した1800年代と変わらず、ピレネー山脈からは冷たく厳しい風が吹き下ろしてきます。そこで育ったグースが、暖かくフワフワの羽毛を育んでくれることも、昔と変わりありません。
ピレネックス社もおしゃれなダウンウェアとともに、事業の原点である羽毛寝具の生産をいまだ継続しています。
そんな堅実な姿勢こそが、このブランドが多くの人々を魅了する理由なのではないかと思わずにはいられないのです。

最高級ダウンを使用した代表作

ブランドの魅力を存分に堪能できる代表作、アヌシーとスプートニックをご紹介しましょう。

アヌシーはスーツやジャケットの上から着ても違和感のない、オン・オフ兼用可能なアウターです。
肩廻りや腕のパターンが立体的なので重ね着してもストレスを感じず、十分な長さがある着丈はドレッシーな印象を作ってくれます。

高密度に織られた素材は内貼りもしっかりしていて、少しの雨なら十分に防げる撥水性能を持っています。
フード周りに使われているのは狸の仲間であるフィンラクーンの毛皮。繊細なのにボリュームがあり、防風・防寒にはもってこいの素材ですが、ファスナーがついているので好みに合わせて、また気候の変化に合わせて取り外すこともできます。

スプートニックはダウンジャケットらしいベーシックなデザインを持つ、フランス本国でもベストセラーとなっているタイムレスな定番です。
着丈が短めに作られているので、カジュアルかつスポーティに着こなすことができるでしょう。
フードはファスナーによって着脱可能。取り外せばよりシンプルでシャープな趣になります。

ピレネックスの最大の売りは、なんと言ってもダウンの品質。生後15週間前後の成熟した水鳥の羽毛を使用していることに、高品質の秘密があります。
一般的なダウン製品に使われる生後5週間前後の若鳥の羽毛と比べ、ピレネックスが使う成鳥の羽毛はよりかさ高があり、保温性に優れているそうです。
ダウンの製造過程は鮮度が重要なので、ピレネックスはその羽毛を採取から24時間以内に加工しています。
こうした要素に加え、ファミリービジネスならではの160年以上にわたって守られてきたマル秘技術や厳格な品質管理により、フワフワで暖かく、復原力の強い高品質のダウンが生まれるのです。

当然ながら、アヌシーにもスプートニックにもピレネックスが誇るそんな最高級ダウンがたっぷりと使用されています。

pyrenex_3.jpgbild:Pete Toscano, flickr.com, CC BY-SA 2.0

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