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2020.07.15

ripndip / LORD NERMAL POCKET TEE

メンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド 〜メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

スケートカルチャーのど真ん中で

ブランド名の由来になった『Rip N Dip』というのは、
ストリートのスケートスポットで技をメイクしたあと、かっこよくその場を立ち去ることを指すスケートスラング。
スケートボードカルチャーのど真ん中で生まれ、成長してきたこのブランド=ripndip(リップンディップ)にふさわしい名前と言えます。

アメリカ・ロサンゼルスに居を置くリップンディップの創業者は、フロリダ州オーランドで生まれ育ったライアン・オコナーという人物です。 幼い頃からスケートボードに親しんでいた彼は、地元のフロリダで2009年、母親のガレージに置いてあったプリンターを使ってTシャツの制作を開始します。

当時、ライアンのスケート仲間はみんな自分のインディペンデンスなブランドを持っていたのだそうです。 そんな仲間達から刺激を受け、彼自身もスケートデッキのグリップテープに、「ripndip」と書いて滑り出したのが、ブランド立ち上げのきっかけになったといいます。

bild:David Martyn Hunt, flickr.com, CC BY 2.0

2011年には事業を本格展開するため、ロサンゼルスに移ったリップンディップ。
スケートボードの聖地である西海岸へと拠点を置いたことで、ファンの幅も着実に広がり、2016年はシュプリームロサンゼルス店の隣でポップアップショップをオープン。その後、旗艦店をスタートさせます。
2019年には日本にも進出し、世界で二番目の旗艦店として、原宿にショップをオープンさせました。

現在、カルト的な人気ブランドにまで成長したリップンディップのアイコンは、中指を立ててニヤリと不敵な表情を浮かべる猫。 この猫はロードナーマルという名前です。ロード(Lord)は"主"とか"主君"という意味で、ナーマル(Nermal)はアメリカで猫につける一般的な名前です。 日本語で近い雰囲気を強引に探すとするなら、「ニャンコ先生」といったところでしょうか。


こうした人を食ったような皮肉感と可愛らしさが同居するユーモアセンスがこのブランドの真骨頂で、 まさにストリートから湧き上がってきたブランドの心意気を感じさせます。

世界を席巻する"スケーター系"

現在、スケートをベースカルチャーとするストリートファッションの人気が、世界的にとても高まっています。
リップンディップのライアン・オコナーによるブランド創業ストーリーにも見られるように、自身がスケーターである若手クリエイターが、新しいブランドをどんどん立ち上げているのです。
そうした新興のインディペンデントブランドに引っ張られる形で、既存のラグジュアリーブランドもテーマとして取り上げるなど、"スケート"がファッションシーン全体のメインキーワードと言える状況になっているのです。
こうした状況を作り出したのは、1994年に創業して以来スケーター界最強ブランドとして長く君臨し、ルイ・ヴィトンとのコラボも記憶に新しいシュプリーム、そしてストリートラグジュアリーのパイオニアとして知られ、現在はルイ・ヴィトンのデザイナーも務めるヴァージル・アブローのオフホワイトであることは間違いありません。

彼らの動きに触発されて2010年代に入ってから、本当に枚挙にいとまがないほどたくさんのスケーター系新興ブランドが、世界各国で誕生しました。 スケートを中心とするリアルなライフスタイルと独自のセンスを投影した彼らのブランドは、ラグジュアリーとストリートの垣根を飛び越えて大人気となっています。
枚挙にいとまがないと言いつつも少しだけ具体例を挙げると、イタリアのMSGM、ロシアのゴーシャ・ラブチンスキー、ラスベート、アメリカのブレイン・デッド、 パラダイス、FTC、ノア、コールミー917、クウォーター・スナックス、イギリスのパレス・スケートボード、フランスのヘラス、オランダのポップ・トレーディング、ヨーロッパ各国のスケーターによるジェット・ラグ・ブラザーズなどなど。

そうした急成長するスケート系ストリートブランド界の中で、ここ数年ひときわ認知度をあげているのが、このリップンディップというわけなのです。

bild:Goran Vlacic, flickr.com, CC BY-SA 2.0

ユニークな反骨精神を楽しむ

今回紹介しているポケット付きのクルーネックTシャツを含め、リップンディップの服はグラフィックこそ斬新でユニークですが、 アイテム自体はシンプルでベーシックなものが中心です。
ロングTシャツ、コーチジャケット、スウェットパーカ、ポロシャツ、ワークシャツなどなど、その形状にさして目新しさはありません。 これはリップンディップだけではなく、現在注目されている各国の新興スケート系ブランドに共通して言えることでしょう。


モード系ブランドのように真新しく斬新なデザインの創造を目指すのではなく、1970年代にロサンゼルス・ベニスビーチを拠点としたZ-BOYS時代から連綿と受け継がれている、 "スケーター系"という文脈上にある既存スタイルを、独自の味付けで再構築したようなものなのです。

過去のスタイルに最大限のリスペクトを持った上で、「それじゃあ自分の世代はこういう表現を加えてやろう」という、 言うなれば"上書き保存のスタンス"で成り立っている点が、ストリートスタイルの面白さであると言えます。


このリップンディップも、スケーターというカルチャーが貫いてきたユニークな反骨精神を楽しむのに十分な味付けが施されています。 ほんの小さなキャラクタープリントがされたポケットTというシンプルなアイテムでも、その気概は十分に伝わってくるでしょう。



世界のファッションシーンで大注目のスケーター系。その中でも最先端を走るリップンディップ。スケーターも丘スケーターも、この機会にワードローブに加えてみてはいかがでしょうか。


bild:Wapster, flickr.com, CC BY 2.0

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