100%自社工場生産を続ける理由
もう一つ重要なのが、度目(編みのループ)の調整です。
脚は踝に向かって細くなっていくので、それに合わせて靴下も締めのテンションを細かく調整して編んでいきます。例えばふくらはぎは度目を粗くし、くるぶしに向かってだんだん締め、土踏まずも締める、というふうに。
窪田さんが言うには、履いていくにつれ“ゆるゆるずるずる”してくる靴下は、この度目調整がちゃんとできてないのだとか。
「顕著な例では、日本向けにレギュラー丈の靴下をヨーロッパの工場で作って輸入しても、向こうで主流のロングホーズ規格の度目調整のまま作られ、履いたらずるずるに、なんてことがあります」
コットンなのかリネンなのか、素材によっても違います。こうした度目調整もまた、工場独自で積み上げたデータに基づいて調整されていきます。
結局、90年のデータ蓄積を持つハリソンにとって、確かな品質を求めるなら、どうしても100%自社工場生産というカタチにならざるを得ないし、丁寧に編んでいくためには、編み機一台あたりの生産量も抑えられたものにならざるを得ない、ということのようです。