日本屈指の老舗靴下メーカーさんです。
1925年に窪田莫大小(クボタメリヤスと読みます)工場として、当時靴下生産が盛んだった兵庫県加古川市に創業しています。
自社ブランド「HALISON」を立ち上げたのが1966年。
国内外の有名ブランドや高級セレクトショップなどの靴下も、実はハリソンが作ったものだったりします。
海外工場での外注生産化が進んでいく業界のなかで、今も100%国内自社生産を続けています。その理由は「靴下作りの話」にて書いていますので、ぜひ読んでみてください。「へえー、そうなんだ」という話がいろいろ出てきますよ。
というわけで第125回目となる特集、今回はハリソンの魅力にフォーカス。
早稲田にある東京店をお訪ねし、取締役店長、窪田憲次朗さん(写真右)にお話を伺ってきました。
いちばん大切な場所は、踵とつま先。
足を締め付けるでもなく、かといって緩めるでもなく、優しく包み込むようなホールド感。
このホールド感がしっかりできてる靴下だと、履いてて疲れなかったり心地よかったりします。
それを実現するためにいちばん大切な場所は、踵とつま先です。靴下を見るとわかるのですが、立体的に編まれてる箇所が2つだけある。それが踵とつま先です。
「踵やつま先に対してのホールド感っていうのは、工場のもつデータ量によって変わるんですね」と窪田さん、「履いた時に靴下がずれこんじゃう。それは“踵の作りが浅い”と僕らは言うんですけど、結局浅いと中に入り込みやすい。逆に深すぎるともたつく」
つまり工場がどういうデータをどれだけ持っているかによって、ホールド感が左右されるといいます。
生産量を増やさない
踵やつま先のホールド感にこだわると、そのこだわりに時間をどれだけかけるかということも問題になってきます。
靴下は、シリンダーを360°回転させながら編み機で編んでいきます。それが踵にきたところで180°の半回転に切り替わり、糸を余分に編みながら立体的な膨らみを作り出していきます(写真上)。当然、シリンダーの動きを半回転ごとに止めながら編んでいくわけですから、踵やつま先は、編むのにほかより時間がかかる場所になります。
「つまりその時間をいくらかでも端折れば、1足でも2足でも生産量を増やせる。結局、量産をきかせたいということになると、まず踵やつま先の編みが端折られるというのは、実際あると思います。逆に踵やつま先の編みをしっかりやれば、できあがる靴下の数量が減るということです」
やはり品質にこだわると、量産化は難しいのでしょう。
100%自社工場生産を続ける理由
もう一つ重要なのが、度目(編みのループ)の調整です。
脚は踝に向かって細くなっていくので、それに合わせて靴下も締めのテンションを細かく調整して編んでいきます。例えばふくらはぎは度目を粗くし、くるぶしに向かってだんだん締め、土踏まずも締める、というふうに。
窪田さんが言うには、履いていくにつれ“ゆるゆるずるずる”してくる靴下は、この度目調整がちゃんとできてないのだとか。
「顕著な例では、日本向けにレギュラー丈の靴下をヨーロッパの工場で作って輸入しても、向こうで主流のロングホーズ規格の度目調整のまま作られ、履いたらずるずるに、なんてことがあります」
コットンなのかリネンなのか、素材によっても違います。こうした度目調整もまた、工場独自で積み上げたデータに基づいて調整されていきます。

結局、90年のデータ蓄積を持つハリソンにとって、確かな品質を求めるなら、どうしても100%自社工場生産というカタチにならざるを得ないし、丁寧に編んでいくためには、編み機一台あたりの生産量も抑えられたものにならざるを得ない、ということのようです。
フォーマルかカジュアルか。スタイルに合わせて履く靴下もさまざま。それでも基本のロングホーズだけは押さえておきたい。
A. ロングホーズ
ハリソンのラインアップでも人気の高いのがこのスタイル。もっともフォーマル度が高い靴下になります。
このごろは日本でも愛用者が増えてきましたが、そもそも靴下の世界的なスタンダードといえばこのロングホーズです。
英国の伝統的なスタイルで、パンツの裏地と肌がこすれ合わないため膝下のシルエットを美しく見せてくれます。またヨーロッパでは靴下を人前でたくし上げる動作はマナー違反とされていることもあり、ずり落ちても脛を見せないロングホーズはもっともエレガントな靴下とみなされています。
ビジネスやパーティーには必須のソックスです。
B. レギュラーソックス
日本の靴下の一般的なスタイル。ロングホーズと比べ、洗濯時や収納時の取り扱いがしやすく、ビジネスからカジュアルまでいろんなシーンで見られます。
C. シューズインソックス
石田純一さんによる「素足に靴を履く」ブームから人気が出て、すっかり定着した感のあるシューズインソックス。その名前の通り、靴の中にすっぽり収まり素足に靴を履いているような状態に。スリッポンスタイルにおすすめ。
D. 5本指ソックス
1970年にスペインで開発され、「足指が動きやすい健康ソックス」として人気を集めています。ムレにくい、冷え性の改善、外反母趾の予防などの効果があると言われています。
肌心地を決める素材。メインとなるのは高級コットンとして知られるスーピマ綿とエジプト綿。夏はシャリ感のあるリネンも心地よくておすすめ。
スーピマ綿
米国アリゾナ州を主産地とする高級コットン。スーピマとは、ピマ種コットンを改良した高級ピマ(Superior Pima)という意味。繊維が長いため柔らかな肌触りと見た目の美しさ、光沢感が出ます。
エジプト綿
エジプト産の高級コットンで、スーピマ綿と同じく長綿または超長綿と呼ばれ、繊維が長い。繊維が長いと撚糸を強くかける必要がないためため柔らかな肌触りと美しい見た目が出ます。
リネン
サラッとした涼感で夏を代表する素材。通気性が良く、糸が強いのが特徴です。
靴下の履きこなしは、ボトムスかシューズの色に合わせるのが基本。丈が長いほどフォーマル度が増すため、靴やボトムスもドレッシーなアイテムに合わせるとしっくりきます。逆に、丈が短ければカジュアルスタイルに。もちろん応用を効かせてわざとハズしたり、補色(真逆の色)でコントラストをつけたりするのもありです。
同系色のグラデーションで
ベージュ色のロングホーズに、同系色のチノパンとドレスシューズ。シンプルなスタイルながら、パンツ、靴下、靴の順で、淡い色から濃い色へとグラデーションにしているのがポイントです。
華やかなネイビー
ネイビーはフォーマルスタイルの代表カラーだけど、ブラックやグレーにはない華やかさがあります。なのでロングホーズもネイビー色だと、エナメルシューズやピンクのパンツみたいな華やかアイテムと合わせてもしっくり。
しかもカジュアル崩れせず、ドレス感を残してくれるのでおすすめです。
アーガイルはアクセントに
個性の強いアーガイル柄は、カジュアルダウンさせるより、シックなドレスアイテムに合わせると足元のアクセントとしてきれいに収まります。
赤を挿し色に、靴の色は靴下のステッチの色と、パンツの色は靴下のベース地の色と合わせてみました。
リネンの素材感
リネン混素材のレギュラーソックスに、同じくリネン混のカジュアルパンツを合わせてみました。そして靴も同じくリネンで底を編んだエスパドリーユ風シューズ。
ボーダー柄のブラウン×グリーン色も、それぞれパンツとシューズの色に繋いでみました。
靴の色に合わせるシューズ・イン・ソックス
靴を履いてしまえば見えなくなってしまうので、シューズ・イン・ソックスなんて何色でもいい? それでも歩いてる隙にちょっと見えたときなんか、靴やインソールの色と同系色だったりすると、とってもオシャレ。
鮮やかな足元に対し、落ち着いたオフホワイトのショートパンツを合わせてみました。
スポーティーな5本指ソックス
スポーティーなスタイルには、汗でむれない5本指ソックスを選ぶのも良いと思います。ちなみにこの5本指ソックスみたいな踝丈の靴下は、スニーカーに合わせるのがセオリーです。