フリーエディター/ライター
藤原 綾さん
フリーエディター/ライター。
出版社での女性誌編集部を経て、2007年にフリーの編集者として独立。
以後、『sweet』や『SPRiNG』などの女性誌、コレクションブランドからストリートブランドのムック本や
カタログのビジュアル制作を手掛けるなど幅広いジャンルで活動中。手掛けた作品は数百冊に及ぶ。
こちらのコラムでもちょこちょこ紹介しているNACHU&DIARY。“何気ない日常の一枚として、記憶に残る大人のデイリーユースウェア”を提案していて、定番+程よくトレンドを取り入れた着やすいアイテムが揃います。
また、“誰にでも着こなせる”こともテーマになっていて、体型カバーやサイズ展開への配慮も魅力のひとつ。ネットでしか買えないからこそ、失敗しないお買い物をしてほしいと様々な工夫を凝らしているのも特徴です。
そんなNACHU&DIARYがデビュー10年目を目前に控え、新たに定番としてデニムシリーズをスタートさせました!
今回は企画プロデュースのNACHUさんとDIARYさんをゲストに迎え、今後の展開が気になるデニムシリーズ誕生の裏話を伺いました。
今回、デニムシリーズが始まると聞きましたが、今までデニムは出してなかったんですか?
NACHU(以下、N)「やったことはありますけど、そのシーズンで売り切りという形でした。シリーズとしてきちんと展開するのは今回が初めてです」
DIARY(以下、D)「季節に左右されず、長く着てもらえる商品が作りたかったんです。季節ごとに新しい商品をどんどん買い足すというより、一度買ったらずっと着られるような定番があってもいいんじゃないかなと思って」
3型からスタートするそうですが、それぞれの特徴を伺っていければと思います。まずはこちらのサロペットから。
N「春夏はコットン、秋冬はコーデュロイと、素材を変えて同じ型でサロペットを発売してきたんですけど、これがとても好評で。だったら、年間を通して着てもらえるデニムでも作りたいねって話になったんです」
D「メンズでもデニムの人気が再燃していますよね。まず一番に、オールシーズン着てもらえるような定番商品を作りたいという気持ちがあって、そのうえで、デニムだったらそれができると思って選びました」
このサロペットは、ゆったりしてる割りにだぼだぼして見えないのもいいですね。
D「足元が綺麗に見えるようにテーパードシルエットにしています。スニーカーに合わせてカジュアルに着てもしいいし、ヒールに合わせれば上品に着こなせます。その辺のシルエットは結構こだわってますね」
NACHU&DIARYの商品って、着た人の身長と選んだサイズ、そのときのサイズ感の感想が書いてあるじゃないですか。あれ、便利でいいですよね。
N「やっぱりひとりのモデルさんがひとつのサイズを着ても、自分の体型と違ったら想像しづらいと思いますし、その人によって着方も違いますよね。だったら、自分の体型と近い人がどうやって着ているのかわかったほうが購入しやすいかなと思って」
素材も柔らかいですね。
N「やっぱり動きやすさを考えると柔らかいほうがいいですよね。これの素材違いがドラマで使われたんですけど、その女優さんの役どころが、3歳くらいのお子さんを連れたお母さんだったんです。動きやすくて、体型もパッと隠れるので、初期のマタニティウェアにもいいと思います」
D「この形だと体型カバーはもちろんなんですけど、妊婦さんでも4か月くらいまでなら着られます」
N「スタッフで妊婦さんがいるんですけど、これだったら全然わからないねって言ってたので間違いありません(笑)」
スタッフの人にも着てもらうんですね。
N「DIARYと席が隣なので、サンプルが届いたら2人でどうする? って相談しつつ、他のスタッフの人にも実際に着てもらって意見を聞く感じです。“ここが気になる”っていう意見をたくさんもらいながら作っています」
色はインディゴとライトインディゴの2色展開ですよね。それぞれ印象が変わって見えます。
N「インディゴはやっぱり何にでも合わせやすいですし、大人でも着やすいと思います。ライトインディゴは今人気なのでラインナップに加えたくて。実際にはもう少しウォッシュがかかってワントーン明るくなると思います」
D「夏はタンクトップに合わせてもいいし、冬はニットに合わせてもいいし、定番色なので合わせる色も素材も選ばないのがいいですよね」
N「素材も、ダンガリーよりは厚いけど、ハリのあるデニムよりは薄手で柔らかい。ちょっと厚手のダンガリーみたいなイメージです。着心地がよくて、動きやすくて、どの季節に着ても馴染むことを意識しました」
コーデュロイとコットンと合わせるとサロペットのバリエーションは結構増えますね。
N「今の時点では、コーデュロイもコットンも継続する予定です。今までも人気商品として伸びてきたので、別の素材を着てシルエットが気に入っていただけた方には、ぜひデニムも試してほしいです」
続いてはジャンスカですね。これは、今までもあった型ですか? 前当てが低いというか、ウエストが高いというか。きれいなシルエットですね。
N「これは完全な新作です。吊り紐を細くして華奢に見せるようにしました。ハイウエストスカートにストラップが付いているようなイメージですね」
新作を作るにあたって、この商品はどういうきっかけで生まれたんですか?
D「スカートをひとつ入れたいねっていう話になったんですけど、普通のデニムのロングスカートにすると、少し野暮ったい感じがするし、もうどこにでもあるし、定番とはいえ少しデザイン性を入れようという話になりました」
吊り紐を細くした理由はなんですか?
N「華奢にすることで、ジャンスカにありがちな子どもっぽさがなくなるかなと思って。それに、冬だけ着るなら太いストラップでもいいかもしれませんが、夏まで着てもらいたいと考えると、薄手の半袖Tシャツに合わせても目立ちすぎないことも必要かなと思ったんです。太いとやっぱり少し邪魔な気もして」
シルエットを綺麗に見せるために、どんな部分にこだわりましたか?
D「腰回りが変に張って見えないように工夫しました。この服を着るときに一番気になるのは腰回りだと思うんです。ここが張りすぎているとシルエットがうまく出ないし、太ってない人でも太って見えることがあるので、少しだけヒップの幅を広くしています。かと言って広げすぎてはいないのでダブダブした感じにはなりません」
このスリットも絶妙な深さですね。
D「そうなんですよ! 本当にちょうどいいんです」
N「私達、なんだかいつもスリットがすごく気になっちゃって、この深さを決めるのにすごく時間がかかるんですよ(笑)。ここ2、3年、スリットが入っている商品を作っているんですけど、とにかく時間がかかる」
D「開きすぎているといやらしく見えるし、かといって浅いと歩きづらいから、なんか気になっちゃうんですよね。実際にスタッフの人に着てもらって、大股で歩いてもらったり、しゃがんでもらったりして、足の出方がエロく見えないかとか、動きやすさはどうだとか意見を出し合って、ちょうどいい深さを決めています」
実際にできあがったのを見て、いかがですか? 自慢できるポイントは?
D「個人的に……めちゃくちゃ可愛いと思ってます! 語彙力がないんですけど、でも、やっぱりめっちゃ可愛い(笑)! やっぱりシルエットが今っぽいし、トレンド感もあるし、さっきのサロペットもそうですけど合わせやすいですよね。しかも、デニムだけどカジュアルになりすぎないのも好き。これは自分でも買おうと思ってます」
N「これを着て、秋冬は上からニットを重ねてもいいと思います。ウエスト回りがすっきりして、だぼっとせず、着膨れも避けられます」
確かに。スカートだからトイレも問題ないし。購入したら、ご自身ではどんな着方をしようと思っていますか?
D「つるんとした光沢のあるカットソーに合わせて……、足元はショートブーツがいいかな」
N「それは何系の彼女なの(笑)?」
彼女?
N「DIARYは、彼氏のタイプを想像して服を選ぶんですよ。『今日はサーフ系の彼氏を想像してコーディネートしてきました』とか言って(笑)」
D「恥ずかしい(笑)! ……えー、これは何系の彼氏だろ」
N「ジェンダーレスな感じ?」
D「あー、でもジェンダーレス男子はタイプじゃないんだけど。うーん、花屋経営のシンプルなシャツとか細身のパンツを履いているような男の人の隣を歩くときのイメージかな」
具体的でいいですね(笑)!
D「聞かれてもいないのに、『ねえねえ、NACHUちゃん。今日はサーファーの彼女なんだ』ってNACHUに伝えています」
N「このジャンスカはどんな男の人の横でも歩ける優秀アイテムです(笑)」
では、最後にシャツワンピを。
D「いろいろなコーディネートが楽しめることが最大のポイントですね。これにタイトなパンツを合わせても、フレアスカートを合わせてもいいですし、春はこれ一枚で着られます」
N「共布のベルトがついているので、前で結んでウエストマークすることもできますし、前を開けてベルトを後ろで結んでジャケット感覚で着てもいいと思います」
かなり汎用性が高いですね。一枚あれば、秋から春まで使えそう。
N「このシャツワンピは、社内でも、試着してみて『絶対買う!』って言ってくれる人も多かったですね。着てみたら使えるってことはすぐにわかってもらえるので」
ディテールはいかがですか?
D「ボタンにマーブル調のものを使用して、少し高級感を出しました。プライスはおさえても、少しでも上品に仕上げたくて」
ポケットも結構深いですよね。
N「ポケットはマストですね。どんな商品でも必ずポケットはつけちゃいます」
他のブランドさんでも、ポケットがないとお客さんから指摘されるという話を聞いたことがあります。
D「やっぱりそうですよね。私も、ポケットがないと、何でポケットつけてないの⁉ってイライラしちゃう(笑)」
N「NACHU&DIARYの服は、必ずポケットが付いていると考えてもらって大丈夫です」
服を作る過程で、大切にしていることはなんですか?
D「やっぱり、仕上がったとき、自分たちが可愛いと思うか思わないかは大切にしています。着たいものを作るというよりは、ビビッと刺さるものを作って、仕上がったときに自分たちの気持ちにも響くかどうか。お客様とダイレクトに繋がれるので、お客様の求めているものや気になることに対して、即座に反映できることもブランドの強みだと思います」
N「周りの人に配って、実際にワンシーズン着てもらった感想をもらっています。売りっぱなしではなく、生の声を反映させることも大事だと思うんです。あと、私、身長が155cmしかなくて、それが服選びのネックになっているんですね。ウエストはMサイズ、長さはSサイズっていう商品も多くて。同じ悩みを抱えている人も多いと思うので、商品によって丈は一緒だけど幅を広くするとか、誰でも着られるサイズ感は意識しています」
今後、デニムシリーズは増えていくんでしょうか?
N「はい。シーズンごとに、少しずつ増やしていきたいですね」
D「今回からブランドタグも変わるんですよ。ジャケットなど、厚手のものは大きなタグに変更しました。お客様の声や時代の流れを汲み取って、少しずつアップデートを繰り返しながら、お客様と一緒に歩んでいけたらいいですね」
仕事仲間というより友達のような関係のNACHUさんとDIARYさん。毎日着られる気楽さ、手に届く価格、こんな服が欲しかったという地に足のついた満足感は、ふたりが着る人と同じ気持ちになって作っているからなのかもしれません。
笑いの絶えないインタビューを通じて、ふたりの笑顔がNACHU&DIARYの服に反映されている気がしました。
NACHUさんとDIARYさんの友達になった気分で、新作のデニムシリーズもぜひ楽しんでください!