軽快なおもてなしの料理 四月
おもてなしの料理の中には家族へのもてなしも入っているのです。
日常の中で、時にはいつもと違う発想でちょっとごちそうをと思うのは愛情であり、作る側にもいただく側にもたのしいことに違いありません。
いつもとは少し変えてその季節らしい器を出してみる、同じものでも切り方を変えてみる。いろいろとこまかな工夫があれば料理は生き生きとするのです。
この頃はおとりよせブームとかで主婦が何から何まで作らなくても美味しいものが入手可能です。少し手間をかけ、しっかり作ったものと市販のものの組み合わせで軽快におもてなしの方法を覚え、あまり負担にならないようにすれば時々やってみたくなるのではないでしょうか。
作ってみて気がつきました。これは母がよく作ってくれたおべんとうの中味でした。「娘って知らず知らず母のしていたことを受け継いでいるのだな」と改めて思いました。
いつもある材料なのですが、木の芽が散らしてあるだけで春。豆ごはんのおにぎりが少しあるだけで春。という風です。他は梅干しが入ったのりまきの俵形のおにぎり、おこわのおにぎりなど、どなたでも、いつでも出来るおべんとうです。花の下で花びらの洗礼を受けながら、御家族や親しい友人たちとの宴はきっと何よりの安らぎでしょう。
今年の桜は、被災なさった方々へのおなぐさめ、天国へ行かれた方々へのお供養かと思うと悲しいけれどことの外美しく見えます。早く安心してお暮しになれる日が来ますように、それまでせめて関西は元気にしていることが大切なのではないかと思う日々です。
おべんとうは亀甲型の一閑張の二段重になっていて、藤井収さんに昨年春にお願いしていて出来てきたものです。薄くて華奢なのに大変丈夫で、お正月にもちょっとしたおもてなしやお菓子重としてもお使いいただけます。
お使いなれていただくと重宝さも解っていただけるはずです。
お花見べんとうはかわいいお風呂敷に包んでもすてきですが、よく似合う布がありましたので作ってみました。また一段とお花見らしく持ちやすく、どこかに行きたくなります。おべんとう袋は「洗う」ことを考えて作らねばなりません。表も裏も木綿。芯も洗えるものを用いています。紐も綿。DMC(フランス製刺繍糸)を手で組んでいただいたものです。鰭崎まさ子さんとおっしゃる茶入の袋や帛紗などを縫っている作家に作っていただきました。
銘々皿は薄く挽いた美しい素地に荒い粉の蒔地をほどこし、たっぷりと塗ったものです。どちらも軽くて嵩が低く、お花見などに最適です。楕円になっているのも屋外で手にとってお使いやすい形ではないかと思います。
たとえばパックのお茶でも、重ねの出来るそば猪口を清潔なおふきんに包んでお持ちになると豊かでございますね。お箸も白い布に包んで少々ぬらしてお持ちになられることをおすすめします。