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COLUMBIA看板

2021.11.11

米国最大のアウトドアブランド、コロンビア

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

二つの顔を持つコロンビア

40年以上の歴史を持つアメリカの老舗アウトドアブランドには、大きく分けて二つの系譜があります。
ひとつは、生活に根ざした野外活動用のギアを提供する目的でスタートした、純アウトドア用品メーカー。
各ブランドの原点には、ハンティングや釣り、樹木伐採、荷物運搬用などのウェアや道具があります。
そしてもうひとつは、自然回帰を標榜したヒッピーを中心とする若者の生活を支援するために生まれた、サブカルチャーの香り漂うブランド。
その多くは、キャンプ用品や野山歩きの道具、ウェアを主体として発展しています。
非常にざっくりした分け方ですし、登山に特化した純スポーツ系アウトドアブランドはこのくくりには収まらないのですが、アウトドアをライフスタイルとして捉えている総合ブランドは、どちらかのカテゴリーに当てはまることが多いようです。

前者のブランドの多くは、アメリカにフロンティアスピリッツがまだ色濃く残っていた時代、第二次世界大戦より前に誕生しています。
代表的なブランドとしてL.L.ビーン(メイン州で1912年創業)、ダナー(オレゴン州で1932年創業)、エディ・バウワー(ワシントン州で1920年創業)などが挙げられるでしょう。
後者のブランドの多くは、西海岸を中心にヒッピーが大増殖した1960年代〜70年代に誕生しています。
代表的なブランドは、ザ・ノース・フェイス(カリフォルニア州で1968年創業)、パタゴニア(カリフォルニア州で1973年創業)、マーモット(コロラド州で1974年創業)、グレゴリー(カリフォルニア州で1977年創業)などです。

では、1938年にオレゴン州で創業したコロンビアは?
単純に創業年から考えると、前者のカテゴリーに入りそうなものですが、実は後者の性格もあわせ持つブランドと言っていいようです。
コロンビアはなぜ、そのようなダブルフェイスなブランドになったのでしょうか?
創業のいきさつとブランドヒストリーを追いながら、その秘密を探ってみましょう。

アウトドアを楽しむ若者bild:Dicoplio Family, flickr.com, CC BY-SA 2.0

世界初のフィッシングベスト

コロンビアの創業者、ポール・ラムフロムはユダヤ系ドイツ人です。
彼はナチスが台頭し、ユダヤへの迫害が激しくなった祖国から家族を引き連れて脱出。アメリカに亡命して1938年、オレゴン州・ポートランドに定住します。
ポールはその地で、ローゼンフェルドハットカンパニーという小さな帽子問屋を買収。コロンビアハットカンパニーと命名し、ビジネスを開始します。
社名は、オフィスの近くに流れるコロンビア川にちなんで付けられたそうです。

コロンビア川bild:tsaiproject, flickr.com, CC BY 2.0

帽子専門問屋からスタートしたコロンビアを、今日のような総合アウトドアブランドへと転換させたのは、2代目社長のニール・ボイルです。 ニールは、創業者ポール・ラムフロムの次女、ガート(ガートルード)・ボイルの夫でした。

ガートは10代の頃から、父が起こした家業をサポートしていました。そして1948年にガートと結婚したニールも、1950年からラムフロム家の事業に参加しています。
1960年、同社の幹部になっていたニールは、ビジネスを拡大させるため自社製品の生産に乗り出します。
同年発表されたコロンビア最初のオリジナル商品は、今や世界中で当たり前のように愛用されている、さまざまなツールを収納するためのマルチポケットが付いたフィッシングベストでした。

このフィッシングベストを発明したのは、ガート・ボイルでした。
彼女は熱心な釣り人であった父や夫、夫の友人からのリクエストに耳を傾け、ミシンを使って手作りで世界初の便利なフィッシングベストを生み出したのです。

このベストは市場で大ウケ。
それを受けてニールは、スキーグローブ製造会社のコロンビアマニファクチャリングカンパニーを買収し、社名をコロンビアスポーツウェアカンパニーと改称します。
そしてハンターや釣り人、スキーヤーのためのアウターウェアの製造販売へと、事業内容を多様化。
1964年に創業者のポールが逝去すると、ニールは会社を完全に受け継ぎ、事業拡大に尽力します。

米国最大のアウトドアブランドへ

ニールの事業拡大計画は、折から増殖していたヒッピーたちからの需要を見込んでいました。
しかしニール1970年、47才にして志なかばで急逝、会社の経営権はガートに移ります。
その頃のコロンビアは、ニールの拙速な拡大路線が祟って多額の負債を抱えていました。
画期的なフィッシングベストの発案者ではあるものの、それまで会社の経営は父や夫に委ねていた平凡な主婦のガートは、その負債額に驚き、慌てて会社を売却しようとします。

しかし当時のコロンビアに対する経済界の評価は驚くほど低く、提示された金額は負債を完済することもできないものでした。
そこでガートは一大決心し、大学4年生だった息子ティム(ティモシー)・ボイルとともに事業を継続、コロンビアを再建させる方向へ歩を進めます。

彼女は負債を処理しながら細々と経営するのではなく、亡き夫が成し遂げられなかった拡大戦略を引き継ぐことにしました。
下手をするとさらなる大ヤケドを負ってしまうわけですから、これは大きな賭け。
しかしそれを成功させてしまうのだから、ガートの経営手腕も大したものです。

One Tough Motherの表紙

それに、時代の風も味方してくれていたのは間違いないでしょう。
1970年代はヒッピー全盛期を経て、世界中でヘビーデューティ(アウトドアウェアをタウンユースするトレンド)が盛り上がっていました。
彼らからの需要を追い風に、確かな製品作りで定評のあるコロンビアは、着実にビジネス基盤を再建、発展させることができたのです。

ライトクレスト ジャケット ライトクレスト ジャケット
セカンドヒルジャケット セカンドヒルジャケット
レッドテーブルパインズフルジップフーディー レッドテーブルパインズフルジップフーディー
ウッド ロード ジャケット ウッド ロード ジャケット

そして80年代に入ると、コロンビアはさらに大きく飛躍します。
1982年に発表した“インターチェンジシステム”を採用するツー・イン・ワン・ジャケット(アウターとインナーがジッパーで着脱でき、気候に合わせて3ウェイの着こなしができるジャケット)「バガブーパーカ」が、多くのアウトドアファンから支持され大ヒット。コロンビアスポーツウェアはアメリカで最大級のアウトドアメーカーに成長するのです。

80年代から実質的に会社を動かしていたティム・ボイル率いる現在のコロンビアは、キャンプやハイキングから釣り、ウィンタースポーツ、ウォータースポーツ、フェス、ハンティング、登山、ゴルフ、ランニングなど、さまざまなアウトドアアクティビティやスポーツに対応する商品をラインナップしています。

“オシャレ化”が進行するコロンビア

さて。
それではこのへんで、奥歯に物の挟まった言い方はやめてはっきり言いましょう。
正直なところ、コロンビアというブランドはちょっと前まで、値段は手頃だけど今ひとつ垢抜けない、いかにもアメリカの田舎のお父さんが好みそうなブランドでした。
しかしそんなコロンビアが最近、大きく様変わりしていることをご存知でしょうか?

きっかけはここ10年来のヒット商品、“ロマビスタ”シリーズのリリースでした。
ロマビスタは、コロンビアが総力を上げて開発した、ワークスタイルのフーディッドジャケット「ロマビスタフーディー」を原点とするシリーズです。
テーマを“堅牢性”に求め、耐久性が高いコロンビア伝統のステッチワークなど、登山やフィッシングをはじめとしたタフなアウトドアフィールドで培った技術が盛り込まれています。

「ロマビスタフーディー」は、表地に耐久性の高いコットン生地、裏地には保温性・伸縮性・吸湿速乾性に優れ毛玉のできにくい、コロンビアオリジナルの“MTRフリース”という生地が用いられています。
酷寒の冬山に着ていくような本格ウェアではありませんが、その程よい保温性とシンプルでスタイリッシュなデザインが、タウンユースにちょうどいいということで話題作となります。

そしてフードを省いて立ち襟を採用した「ロマビスタスタンドネックジャケット」と並び、デザインエッセンスを踏襲しつつ素材を簡略化した長袖Tシャツ「ロマ ビスタ ロングスリーブクルー」や、ボトムスの「ロマビスタパンツ」を立て続けにリリース。
“ロマビスタ”シリーズは、昨今のアウトドアブームに乗って大ヒットとなり、コロンビアは一気におしゃれブランド化しているのです。

ロマビスタスタンドネックジャケットが表紙の雑誌

“ロマビスタ”シリーズ

ロマビスタフーディー ロマビスタフーディー
ロマビスタ スタンドネック ジャケット ロマビスタ スタンドネック ジャケット
ロマビスタ ロングスリーブクルー ロマビスタ ロングスリーブクルー
ロマビスタ パンツ ロマビスタ パンツ

実際、最近のコロンビアは、ショップのディスプレイも、他のアウトドアブランドより格段にいい雰囲気ですし、有名セレクトショップで商品が扱われることも増えてきました。
ロマビスタシリーズも全身アウトドアもので固めるのではなく、他のアパレルブランドのアイテムにさりげなくミックスするような、ファッション感覚優先のコーディネートに最適なアイテムだと思います。

本物のアウトドアウェアを、快適に、そしておしゃれに街で着こなしたいという層に大歓迎されている現在のコロンビア。
機能性は十分でデザイン性は高く、そしてブランドネームもアゲアゲ状態ですので、今こそ選んで間違いなし! だと思います。

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