

2021.12.09
男にとっての革小物とは
いま注目すべき
レザーブランド5選
<店長>
最近集めていたTシャツを断捨離。30枚ほどなくなってスッキリしました。
<佐藤さん>
メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
革小物の代表格である財布は、何年くらいで買い替えるのが正解か

佐藤さん、お財布ってどのくらい使ったら買い替えていますか?

3〜4年です。財布は毎年新調したほうがいいという説があるのは知っています。確か、新品の方が金運が良くなるというような話だったと思うんですけど、一度使うと愛着がわいて、1年で買い換えるのは忍びないんですよね。

わかります、その感覚。特にレザーの財布は使い込むほど味が出てくるから、1年で買い換える気にはならないですよね。

そうなんです。でも3〜4年使うと飽きてくるので買い換えたくなってきます。

なるほど。でも風水的に言うと、財布の金運は1000日が有効期限なので、3年だとちょっとオーバー。だから2年で買い換えるのがベストだという説もありますよ。

なんですかその説は(笑)! 初耳です。まあそんなのは迷信といえば迷信ですけど、僕も験を担ぐのは嫌いじゃないし、自分の気持ちを整えるうえでもいいことだと思うので、ちょっとその説に乗ってみます(笑)!

佐藤さんが今使っているお財布は?

一昨年の正月に買い換えたものですので3年目。有効期限が切れていますね(笑)。どうりで最近、どうも金まわりが……。

ではちょっと、当店のオススメ革小物をご紹介していきましょうか(笑)。

なるほど、そう来るわけですね(笑)。
1番手はポール・スミス! クラシカルな雰囲気の中に光る遊び心が魅力

まずはポール・スミス。ブリティッシュカルチャー好きの佐藤さんには、なじみの深いブランドではないですか?

そうですね。世代的にも、ここは欠かせません。新卒で就職したとき、最初に買ったスーツはポール・スミスだったなあ……。

遠い目をしていらっしゃる(笑)。佐藤さんも、スーツを着て会社に通っていた時代があったんですね?

もちろん、新人の頃はスーツ着ていましたよ。その後、ストリートファッション誌の編集者になり、独立してフリーランスのエディター兼ライターになったので、スーツを着ていたのは本当に社会人になりたての数年だけですけどね。

そうですか。ポール・スミスはやっぱり、現代風にアップデートされたブリティッシュトラッドの雰囲気がいいですよね。

その通りです。ここのブランドは、現在もデザイナーを務めているポール・スミス氏が1970年に、地元のノッティンガムでセレクトショップを開いたところからスタートしています。

日本にもゆかりの深いブランドですよね。

ポール氏自身が大の日本贔屓ということもあって、日本には1980年代前半に進出して人気を得ています。本国イギリスではすでに知られた存在でしたが、まだ世界的なブランドではなかったので、日本での展開は早かったようですね。アメリカでは1987年に五番街に路面店を構えたことから、“ヤッピー”と呼ばれるヤングエグゼクティブ層に人気が広がり、世界的流行につながったそうです。

ポール・スミスの魅力をひとことで言うと?

「遊び心」でしょうね。財布などのレザーグッズにもそうした特徴は表れています。トラッドやクラシックを基調にしながら、どのアイテムにも必ず一ひねり加えられているのが最大の魅力です。

一見、シンプルなスムースレザーの財布でも、内側がカラフルなマルチストライプだったり、鮮やかな染色のレザーだったりと、必ず遊びのポイントがありますよね。

こういうのを使えば、気持ちも明るくなりそうです。ユニセックスなので自分で使ってもいいですし、誰かへの贈り物にしても喜ばれそうですね。
ポール・スミス
ホワイトハウスコックスは、馬具由来の丈夫で味のあるレザーが光る

次は……。おお! ホワイトハウスコックスじゃないですか。ここの財布はかっこいいですよ。財布だけじゃなくて、ベルトもオススメです。

歴史の長いブランドですよね。もともとは馬具メーカーだったとか。

1875年にホワイトハウス氏とサミュエル・コックス氏の二人が創業し、150年以上も続いているイギリスの老舗馬具メーカーです。設立当初から1920年代までは、鞍など乗馬用品を中心に製造していて、イギリス軍用の馬具も納品していたそうです。

財布やベルトに使われている丈夫なレザーが有名ですけど、馬具で使われていたものからの転用なんですね。

そうです。1930年代からペット用の首輪をはじめ、財布やベルトなどの革小物の製造もするようになったのですが、従来は使われることがなかったブライドルレザーを使用したことで有名になりました。

馬具といえば、耐久性の高いブライドルレザーですよね。

約10週間、樹皮や種子など自然の草木を使ってタンニン鞣しし、さらに天然の染料を革の深部にまで染み込ませ、じっくりと時間をかけて作るのだそうです。

ブライドルレザーは、馬の手綱や鞍など激しい動きに耐えるため頑丈な作りをしています。光沢のあるサドルレザーの製品もいいですよね。

サドルレザーも馬具用に開発された革。植物性のタンニンで鞣したあとオイルを染み込ませる手法で作られます。厚めの革が使用されるので、無骨な雰囲気がいいですよね。

現在も熟練の職人がひとつひとつ手作業で作っているそうですよ。冒頭の話を否定するようですが、ブライドルレザーもサドルレザーも、2年間しか使わないのはもったいなくないですか?

確かに(笑)。まあ、もともと根拠薄弱な話だからいいんじゃないですか(笑)。僕だったら、一生ものとして長年使って革を育てあげたいですね。

(笑)。確かに、ブライドルレザーもサドルレザーも、使い込んで味を出すことによってより光る素材です。だから、新品の香りがする最初の1〜2年は物足りない感じがしそうですね。

そうそう、育て上げるのにある程度の時間が必要なので、早く買った方がいいってことですよ。

なるほど(笑)。
ホワイトハウスコックス
イル・ビゾンテのレザー小物は、アーティスティックな感性による味付けに注目

続いていきましょう。イル・ビゾンテです。

さすが店長! いいラインナップです。僕はここのブランドの、型押し水牛マークが大好きです。

ユニークなロゴですよね。どんな由来があるんでしょうか?

ブランド名の「ビゾンテ」も、イタリア語で水牛を意味します。「イル」は英語の「THE」にあたる冠詞ですから、“ザ・水牛”というブランド名なんですね。

ほほう。相当な水牛好きがつくったブランドなんですね。

(笑)水牛好きなのかどうかわかりませんが、イル・ビゾンテの創業者、ワニー・ディー・フィリッポは、水牛の持つ力強く誇り高いイメージに魅せられ、自分のブランドの名前とロゴマークに採用したのだそうです。

設立は確か、1970年でしたよね?

そうですね。1970年にイタリア・フィレンツェの高級店街から一本入った通りに、小さな革製品の店を出し、注文に応じて地下室でバッグやベルトを作っては売り始めたのだそうです。

重厚なレザー素材を使いながらカジュアル感もある、独特の立ち位置にいるブランドですよね。

創業者のワニー氏は、パリのアートスクールでアートを学んだあと、妻ナディアの親戚のバッグ工場で働き、ユニークなデザインを職人的な技法で製品に反映させる技を身につけたそうです。だから、クラシックとカジュアルの中間をいくような、唯一無二のデザインになったんですね。

なるほど。イル・ビゾンテは本物志向の人に人気があるんですよ。

フィレンツェの職人気質の香りが、違いのわかる人を惹きつけるんでしょうね。
イル・ビゾンテ
デンツは世界最高級のグローブブランド。一度手にしたら誰もがうなる品質の良さ

次は手袋です。世界最高級グローブブランドとして名高い、デンツを紹介させてください。

僕はこのブランド、知らなかったんですけど、そんなにすごいブランドなんですね。

そうなんです。製品は手袋中心なので知名度は高くないかもしれませんけど、1777年にイギリス・ウースターで、ジョン・デントという人物がスタートさせたブランドです。

なんと、18世紀ブランドでしたか! これ、持ってみるとわかりますね。ただもののブランドではないということが。ずっと触っていたくなるような、最高のレザーの感触です。

そう。手袋だから、ずっとはめていたくなりますよね。創業者のデンツは天才的な人だったようで、創業当初からこんなハイクオリティの手袋を生産し、手にしていることを忘れてしまうほどのフィット感を持つことから、“シークレットフィット”と呼ばれて名声を博したのだそうです。

なるほど。こんな高級な手袋したことがないです。ちょっと目からウロコが落ちる感覚ですね。

1953年、エリザベス2世が戴冠式をした際に使用した手袋もデンツのものだったそうです。

王室御用達ですか。すごいなあ。ちょっと僕にはまだ早いかもしれません。もう少し大人になってから……。

って、佐藤さんおいくつでしたっけ?

52歳です。

十分な大人じゃないですか! ぜんっぜん早くないです! 早急に使ってください(笑)。

そうでしたね(笑)。検討します!
デンツ
ディーゼルの革小物はカジュアルに、そしてチャレンジングな気持ちで楽しみたい

そして最後にオススメしたいのが、ご存知ディーゼルです!

あ、ディーゼルですか。ここのブランドのことはもちろんよく知っていますが、レザー製品を意識したことはあまりなかったかも。

そうかもしれませんね。でも、さすがはディーゼルと言うべきなのか、デザイン的にも品質的にも優れたお財布が多いんですよ。

ディーゼルはレザージャケットに定評がありますし、革素材の使い方がうまいのかもしれませんね。

今回ご紹介している中では、もっともカジュアルな革小物になります。柔らかい羊革を使っていたり、目立つロゴが配置されていたりと、保守的なデザインになりがちなレザー小物のジャンルで色々とチャレンジしている姿勢は、ディーゼルの本領発揮という感じですね。

ディーゼルが1978年の設立当初から掲げる最大のブランドコンセプトは「Brave=勇敢」ですからね。人々をあっといわせるようなものを創りだすことをブランドの信条にしています。

何かチャレンジしたい目標を持っている人は、ディーゼルのお財布を身につけていると勇気がもらえそうですね。

うまいこと言いますね(笑)。でも、確かにその通りだと思います。女性と違ってアクセサリー類をあまりつけない男性にとって、腕時計と並んで常に身につけている革小物はお守り的と言うか、自分の気持ちを入れたくなるものですよね。今回ご紹介しているブランドのアイテムはどれも、そんな使い方にふさわしいものではないかと思います。