講習会レポート
ベーカリー新製品開発コンテスト
3回受賞者誕生記念 入賞作品実演セミナー
2023年6月27日(火曜日)
会場:株式会社トクラ大阪
主催:カリフォルニア・レーズン協会
協賛:戸倉商事株式会社/株式会社トクラ大阪、小田象製粉株式会社、タカナシ販売会社
保要信勝シェフ(第16回受賞)
松木崇至シェフ(第22回、第24回受賞)
野﨑桃子シェフ(第26回受賞)
今回の講習会主催者でありますカリフォルニア・レーズン協会では、カリフォルニア・レーズンの需要拡大と認知訴求を目的とした製パン業界向けの新製品開発コンテストを1992年より30年以上に渡り実施されています。
昨年に、ママパンの母体である戸倉商事とご縁の深い株式会社志津屋の小林健吾シェフが、同コンテスト史上初となります3回受賞の快挙を達成されました。
小林シェフを筆頭に、歴代受賞者3名を含めました計4名のシェフによる非常に豪華なセミナーが開催されました。
|第16回 2007年大会 審査員特別賞を受賞|
Boulangerie MAISON NOBU
保要シェフ
「老若男女誰でも作れる」をコンセプトにしたシンプルなカリフォルニア・レーズンのパン。
シンプルが故に何度でも食べたくなるパンでした。
当時働いておられたお店で恩返しになればと思いコンテストに応募され、見事に受賞。
その後「アメリカでお店をやる」と周りに宣言し、努力を続けたことで、アメリカのシリコンバレーにある某有名企業よりベーカリーカフェの話が来たそうです。
日本では、レーズンと言われても「ぶどうパン」の印象しかないかもしれないが、アメリカではおやつ代わり・サラダの具材・料理など色々な所で使用されている食材であるといった、カリフォルニア・レーズンの故郷アメリカで働かれたからこそのお話もありました。
また、アメリカ行きのきっかけとなったこのコンテストで「人生が変わった」というシェフから、「応募してみたいという気持ちがあるなら出すべき、夢や目標をあきらめず続けることが大事!」と熱いお話も頂きました。
|第22回 2013年大会 レーズン大賞受賞、
第24回2015年大会 消費者推薦賞受賞|
ホテルグランヴィア京都
松木シェフ
食べた時の口溶けを考えて作られたコンテストの為のパン。
ブリオッシュ生地・折り込み生地・マカロン生地の3種類を使って、食感とメイラード反応による色のコントラストを生み出されていました。
この作品のポイントであるレーズンゼリーに至った経緯は、過去の受賞作の傾向として「レーズンを炊き込む、漬け込む。」といった方法で中をしっとりさせるといった点が多いことに着目し、それ以上にカリフォルニア・レーズンにもっと水分を持たせる方法があればと考え、ゼリーにすることに繋がったそうです。
3種類の生地それぞれの食感の違いが楽しく、中に入ったゼリーとクリームチーズの味のバランス・口溶けが計算されつくされていて、全ての素材の一体感が感じられるパンでした。
|第26回 2018年大会 金賞受賞|
ブーランジュリー ル バムタン
野﨑シェフ
初応募での初受賞を達成。第26回のコンテストではカリフォルニア産チーズの部門があり、野﨑シェフはモントレージャックとコルビージャックの2種のチーズとカリフォルニア・レーズンを合わせた「甘じょっぱいパン」で見事金賞を受賞されました。
レーズンとチーズ以外にも、さつまいもが具として入っていて、酸味・塩味・甘味と3つの味をバランスよく感じられました。
生地の表面にコルビージャックチーズと白ごまを纏わせ、香ばしさをプラス。仕上げに特製のはちみつバターを塗ることで、さらに味わい豊かなパンに仕上がっていました。
応募にあたり「業務時間外での試行錯誤が大変でしたが応募して良かった」と語られています。
少し複雑な成形に関しましても、「パンのビジュアルを良くするのに手間を惜しまない」ともおっしゃっておられ、大変努力家な一面を感じました。
|第7回、第16回、第30回と史上初の3回受賞|
株式会社志津屋
小林シェフ
1時間という限られた時間の中で複数のパンのご説明を行っていただき、非常に濃厚な内容で密度の濃い時間となりました。
まずは、第7回1998年大会のアイデア賞受賞パン「パン オ ルヴァン ナチュレーヌ」です。
小林シェフが当時、長野県にあるパン屋さんでシンプルなレーズンとナッツのパンを食べた際に感銘を受け「こんなパンが作りたい」との思いで作られたパンです。
イーストを使わず、レーズン酵母だけで作れないかなと試行錯誤して出来上がった、カリフォルニア・レーズンへのこだわりも詰め込まれたパンでした。
ルヴァンリキッドもカリフォルニア・レーズンを使って起こされています。
レーズン酵母に関しては、沈殿物があり、溢れ出るほどの活性があるものが良いとおっしゃっていました。
使ったレーズンは、ペーストにして次の種に使ったりされているそうです。
できた元種で、リンゴやローズマリーなど色々な酵母を作るのも面白いとのご紹介もされていました。
また、発酵具合の目安を確認するために、写真のような容器に入れて、発酵具合が一目でわかるような工夫を行われているそうです。
第16回2007年大会の審査員特別賞受賞パン「大地の恵み」
牛乳をたっぷりと使用した生地に、牛乳に一晩漬け込んだカリフォルニア・レーズンを混ぜ込んだ、とてもミルキー感あふれるパンでした。
牛乳以外にも、脱脂濃縮乳という某有名アイスクリームの原材料になっているものを混ぜ込むことで、より一層のミルキー感を出されています。
レーズンを一晩牛乳に漬け込むと、水分を吸収しレーズンの周りに乳脂肪が絡み、白っぽくコーティングされているようでした。
生地にも90%程の牛乳を含ませ、レーズンでさらに加水とミルキー感を高めていきます。
シナモンシュガーでコーティングされたさつまいもは、香りも甘みも最高です。窯に入れた時から、シナモンの良い香りが会場を包みました。
第30回 2022年大会
特別賞受賞パン
「京抹茶のツヤヤかレーズン」
こちらも高加水のハード系でありながら、歯切れの良さも持ち合わせた味わい深いパンでした。
抹茶とホワイトチョコの組み合わせにカリフォルニア・レーズンが見事にマッチ。
皮生地に入れたクープが綺麗で、華やかさもあるパンに仕上がります。
「カリフォルニア・レーズンの旨味が一番いい状態で残り、甘みをスッと消しツヤヤかで喉ごしの良い感じに仕上がる」と、長年パンに関わり続け、24年連続でコンテストに応募されているからこその境地のようなものを感じました。
洋酒を水に対して10%入れることで、そのまま仕込み水に使用した際に全体に爽やかさをプラスする工夫をされておられました。
アシスタント:ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ市川さん、ホテルグランヴィア京都 松木シェフ、ブーランジュリー ル バムタン 野﨑シェフ、Boulangerie MAISON NOBU 保要シェフ、株式会社志津屋 小林シェフ、アシスタント:株式会社志津屋 荻野さん
今回の特別講習会は募集定員数を大きく上回る応募があり、見事抽選で当選された方のみが参加できる非常に貴重なセミナーとなりました。
コンテストへの参加意欲を見せられる方もいらっしゃいました。各シェフから受賞へ到る道のりや思いを語られる場面もあり、言葉には代えがたい熱量を感じられました。
カリフォルニア・レーズンという「パン」にとってはつながりの深い材料でありながらも、扱われる方の数だけのアプローチの違いがある奥深さを感じる講習会となりました。
参加をさせていただき本当にありがとうございました。
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