Sold Out
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長年アルザスワインを特に好んで仕事の中心の一つとしてご紹介してまいりましたが、ブルーノ・シュレールのワインに出会ったときは、今までアルザスワインの味わいとしてもちつづけてきたすべての概念を覆さざるをえないほどの衝撃でした。アルザスでは1981年からビオディナミの認証をとっているフリックに続き、最近ズイント・ユンブレヒト、マルセル・ダイスがビオディナミの認証をとり、バルメス・ビュシェ、クライデルヴァイスがビオロジックの認証を得ていますが、これからもぞくぞくと後に続いていくと思われます。
一方、シュレールは我が道をいくとばかり何の認証もとらず、またヴァン・ナチュールの会にも参加することなく、ひたすら7haの畑仕事に精を出しています。たまに気がむくと、パリのワイン専門店やレストランの催しに呼ばれて、パリに出てくるのですが、遅刻して登場するので有名です。
「合田さん、シュレールって知っている?」とローヌの素晴らしい造り手マルセル・リショー(1996年を境にヴァン・ナチュールに転向)から名前を聞いたのは1997年のこと。 それがきっかけで、私はヴァン・ナチュールの造り手に出会いました。シュレールは、若いヴィンテージでもテクスチュアーがやわらかく、ゲヴュルツトラミナーやリースリングの品種特徴と思っていたアフターの苦さがなく、ピュアで、イタリアワインに感じるようなユニークさや創造的なニュアンスが強く印象に残りました。しばらくして、ブルーノの奥さんがイタリア人で、イタリアの食べ物とワインが大好きで、フィレンツェ郊外でサンジョヴェーゼを作ろうとしていることを知り納得しました。
父上のジェラールはもっぱら畑を担当していますが、何十年にもわたって一度も除草剤、化学肥料を使っていない畑は健全そのもので、収量をできるだけ低く抑え、濃縮度の高いブドウが栽培されます。中くらいのフードルを使いシュール・リーで、酸化防止剤の使用を可能な限りおさえ熟成させたブルーノのワインは、独特の風味を備え、するどい酸が奥行きのある果実味をしっかりと支え、高いレベルでバランスが整い、ミネラリーな味わいに支えられた凝縮度の高い見事なワインです。ブルーノが作るワインは、もっともヴァン・ナチュールのスタイルをあらわしているアルザスワインだといえるでしょう。
目の前の新たな素材に興にのって、次々と新しいレシピを考える天才シェフのように、ブルーノは毎年毎年のヴィンテージの違いを楽しみ、自由な感性でワインを仕上げていきます。ジェラール&ブルーノ親子が作るワインは、もっともヴァン・ナチュールのスタイルをあらわしているアルザスワインであり、また何にも束縛されない自由な感性と自然なワイン作りだけが実現できた味わいだといえるでしょう。アペラシオンを超えて評価されるべき偉大なワインであり、そのユニークで優れた感覚とシュレール家のあたたかで深い人間性を映し出した味わいは、ワイン味わう喜びを必ずあなたに届けてくれるにちがいありません。
1958年
もともと16世紀頃から続く栽培家の一族、1950年代末にジェラールが自社醸造を開始、1982年からブルーノが参画。
本人の略歴:
経歴で自身のイメージを作られないように公開していない。
栽培方法:オリジナルメソッド。本人の言葉を借りるなら、"何でもない。"やってきたことをやり続け、今まででやってこなかったことを試し続けている。何十年にわたって畑は無農薬。
-その栽培方法の開始時期: 昔から
-その栽培方法を適用している畑名: 全区画
酵母のタイプ: 野生酵母
圧搾方式: 2014年の時点でヴァスランの水平式2台と空気圧式1台。
空気圧式のものはもともとあった水平式1台が壊れてしまい購入、2013年から使い始めている。可能ならヴァスランが欲しかったようだが探すのが困難な上にあるかわからない(現在は無いメーカーのもの)ため選択の余地がなかった様子。圧搾にかかる時間もヴァスラン水平式は6〜7時間、空気圧式は4時間程度と短いがその分負荷が大きい。シャンパーニュのようにその性質からバルブを好まない造りでない限り、ヴァン・ナチュールの生産者は負荷の少ない上に抗酸化作用と香気成分を持つバルブを多く搾り出す水平式ヴァスランを好む。2015年にはもう一台また別のプレス機が届く予定だがこちらも内容は秘密とのこと。プレス機が複数台あると場所を取るが収穫後のぶどうを数時間放置することなく圧搾に進めるので多いに越したことはない。以前は時間のかかる水平式一台しかなく、当時はプレスだけで深夜の二時三時を回ってしまったと話していた。
醗酵容器の素材と容量(L):ほぼ全てFoudre Alsacienne(フードル・アルザシエンヌ)、マセラシオン用に樹脂、例外的な使用かマセラシオン用ととして小さなステンレスタンクも数台。容量は不明。
熟成容器の素材:全てFoudre Alsacienne(フードル・アルザシエンヌ)、小さいものはバリック228l程度のものから伝統的な大きなものまで。
セラー環境:地階のコンクリート造りの蔵で全ての作業が行われている。大体の畑は村から3km圏内にまとまっているが、ビルストゥックレのみ丘一つ越えた先で10km弱離れている。
年間生産ボトル本数:かなりの変動があるのであまり意味がないと思うと話していたが、
醸造について
選果場所:場所は決まっていない。選果の必要があると気付いた時。
マセレーションの有無: 赤はあり、白はPigéとNaturellement réfuséのみあり
マセレーション期間: 赤は3週から4週間、マセラシオンシリーズの白は4~5週間を目安に1年になることもあり。
酵母の添加有無: なし
アルコール醗酵: 最短でおよそ10日、最長でおよそ1年。2014年は一月以内に幾つかのリースリングを残して発酵が終わっている。
醗酵温度コントロールの有無:"見ているが"しない
熟成容器: 木樽と例外的な場合にステンレスタンクを使用
熟成期間:ヴィンテージ、ブドウの状況によってまちまちなので一概に言えない
濾過: Non Filtré表記のあるものと特殊な場合を除き行う。1972年からあるフィルターを使用していたが今年から(現在瓶詰め前の2013年ヴィンテージやそれ以前のヴィンテージでもまだ瓶詰めされていないキュヴェがあればそれも)Lenticulaire(粒状式)を採用、先々週から使い始めている。ブルーノにとっては非常に優秀なフィルターの様で喜んでいた。
清澄:しない。もしするなら卵白を使う。1983年ヴィンテージのGewürzのみ卵白を使い清澄を行った。
澱引き:熟成中はしない。ピノ・ノワールの場合、木樽かステンレスタンクで発酵開始後プレス、"その後一度2日間ほど白ワインのようにデブルバージュして大きな澱を下げてから、細かな澱だけを残して再度熟成用の樽に詰め"、熟成開始。""で囲んだ部分はブルーノのオリジナル。
SO2添加のタイミングと量: 最大でも20mg/L。ビン詰め時のみ。
シュレールだけでなく、レオン・バラル、ティエリー・ピュズラ、マルク・アンジェリ等の自然派の造り手たちは、毎年のようにAOC委員会による審査の際「AOC固有の特徴に欠ける」という理由で、下の格付けかヴァン・ド・ターブルに格を落とされることがあります。
ある造り手は、INAO (l’ Institut National des Appellations d’ Origine 国立原産地呼称機関)と論争を繰り返し、「AOCが求める生産地の特徴など、あまりにもいい加減で、ナンセンスこの上ない」とINAOをl’ Institut Negativiste de l’ A pathie Organoleptique(生理学的に感覚が鈍くて無為無策な、消極的機関)と割り切り、誇りをもってヴァン・ド・ターブルを名乗っています。(とはいえ、積極的にINAOと喧嘩をしているわけでなく、柔軟に友好的に接しているようです。)
培養酵母を使わず、補糖もせず、最小限にSO2の量を抑え、そのヴィンテージの特徴を最大限に表現するワインを造ることを使命としてワインを造った結果、同地域の多くのワインとスタイルが異なることは当然のことです。アフターの限りない透明感、美しい酸の余韻は、ヴァン・ナチュールの醍醐味です。
基本的に、INAOが何といおうと「我が道を貫く」造り手たちにとって、信念を曲げるより、格下げを潔く受け入れたために、シュレールの2004、5年のいくつかのワインも、AOCが与えられていません。 ㈱ラシーヌ 合田 泰子
2015年は、天候が良くブドウは早熟で病害もない年だったが、雨量が少なかったため、圧搾して出た果汁の量は非常に少なかった。そのため収穫量は通常の半分で、提供できる本数も例年の半分に減ってしまったとのこと。