Miani ミアーニ
地域:Friuli-Venezia Giulia
地区、村: コッリ・オリエンターリ地区
造り手:Enzo Pontoni エンツォ・ポントーニ
創業年:1984年
イタリア北東部の州で、東はスロヴェニア、北はオーストリアに国境を接する。特にその東端部の丘陵地帯となるコッリオ、およびコッリ・オリエンターリ地区は「イタリアの現代白ワインの聖地」とさえ呼ばれる。コッリオ周辺の土壌は古代の海底に由来し、ポンカとよばれる泥灰土と砂岩が混じる柔らかな石灰質。この州は個性ある土着品種の宝庫でもあり、白はフリウラーノ、リボッラ・ジアッラ、ピコリット、ヴィトフスカ、赤はレフォスコ、スキオペッティーノなどが中でも重要。フリウラーノはかつてトカイ・フリウラーノと呼ばれたが、DNA上はトカイとは全く無関係で、南仏のソーヴィニヨン・ヴェールがヴェネト経由で19世紀中期に持ち込まれたという説が現在は有力である。ちなみにコッリオの人々は1891年に「世界葡萄生産者会議・第1回」がゴリツィアで開かれた史実を誇る(第2回はブルゴーニュ)。「当時からここは偉大なワイン産地としてヨーロッパ中に認識されていたのだ」と彼らは主張する。
平均収穫量8.4hl/haという、世界的にも類のない低収穫を断行する生産者。この数字は、ブルゴーニュ特級の法定上限35hl/haや、ドメーヌ・ルロワの平均15hl/haさえ下回る。さらに驚くべきは、その収量ゆえの凝縮感とは裏腹な、飲み口の良さ。しっかりとした飲み応えなのに、全く身体に応えないクリアな余韻が、白にも赤にも通底する。自社瓶詰は1984年から。当時はメカニックだったエンツォ・ポントーニが父を手助けしていたが1990年、父の他界と共にワイン造りに専念。非常に控えめな人物で、社交を嫌い、ワインフェアや試飲会には一切出席せず、畑仕事に専念する。畑は現在計22ha。樹齢は4年から70年まで幅広く、最古木はリボッラ・ジャッラとフリウラーノとなる。赤、白とも温度管理なしで発酵。葡萄の糖度が極めて高いため、赤は野生酵母では完全に発酵が終了せず、培養酵母を使用する。平均生産量は、最少のレフォスコが年600本、最多のメルローとソーヴィニヨンでも、各2,000本限りである。
ブドウ園は母方(Edda Miani)の一族のものだったが、1980年代にエンツォが引き継いで元詰めを開始。1984年がファースト・ヴィンテッジ。元々は父と一緒にワイナリーの運営は行っていて、エンツォもメカニックの仕事との兼業だったが、1990年代に入って父が死んだので、ワイン造りに専念しはじめた。
ドメーヌ解説:
家族経営のワイナリーで、Enzo Pontoniがオーナー/ワインメーカー/アグロノミスト。雇われコンサルタントはなし。一部の報道で醸造コンサルタントのRoberto Cipressoが関与しているという話が出たことがあるが、事実ではない。
エンツォはメカニックとして17年間働いた人物で、現在44歳。非常に控えめな人で、社交を嫌う。ワインフェアや試飲会には一切顔を見せず、黙々と自らのワイン造りに専念している。
メルロ、レフォスコ、タッツェレンゲ、カベルネ・ソーヴィニョン、ピニョーロ、シャルドネ、トカイ、ソーヴィニョン・ブラン、リボッラ・ジャッラ
自社畑面積: 畑は合計12ヘクタールだが、うち8ヘクタールはリース。
・品種別の面積:畑は全部で20以上のパーセルに分かれる
メルロ:1ha レフォスコ:1ha
タッツェレンゲ/カベルネ・ソーヴィニョン/ピニョーロで合計1ha
シャルドネ:1ha トカイ:2.5ha
ソーヴィニョン・ブラン:2ha リボッラ・ジャッラ:1ha
かつてあったピノ・グリ、リースリング、マルヴァジアはもう植わっていない
・畑の土壌: 泥灰土(ポンカ)
・標高:70-120m
・畑の方位:パーセルによって様々。赤品種は南向き、トカイとリボッラは南東、シャルドネは南西など
・傾斜:さほど急ではないがそれなりの斜面
・植樹本数:新しい畑は6500本、古い畑は3000本
・仕立て:ギュヨ、コルドン、Vertical Bush(フランスのゴブレ剪定と似ているが、もう少し仕立てが高いもの)
・収量:平均して12キンタル/ha(搾汁率70%で8.4hl/ha)。法的上限は100キンタル/ha。樹1本あたり2-4芽のみ残し、房数は1本に二つだけ。
・グリーン・ハーヴェストは若いブドウ樹のみ。
・収穫タイミングはかなり遅いが、過熟ではない。
・樹齢:4 - 70年。一番古いのはリボッラとトカイ。
・完全な有機栽培で、ビオディナミも一部取り入れているが認証は得ていない。
・ブドウ樹の繁殖はセレクシオン・マサル。
○白ワインの醸造法
発酵タンクの種類;ステンレスタンクでデブルバージュしてから樽で発酵
発酵温度:管理しない
プレスの方法:破砕・除梗ののちプレス。長時間かけてプレスは優しく行う。
スキンコンタクト:なし
オークの種類:フレンチオーク
樽の容量:ボルドー・バリック(225l)またはブルゴーニュ・ピエス(228l)
新樽比率:30%
熟成期間:10-11カ月
バトナージュは、熟成開始後最初の3-4カ月間、週に1-2回
MLF:トカイとソーヴィニョン・ブランはせず、他の品種は実施
その他:収穫はパーセル毎に行い、ブドウの温度が上がらないよう早朝に摘む
○赤ワインの醸造法
除梗:100%
アルコール発酵のタンク:ステンレスタンクと木製発酵槽
キャプマネージメントの方法:ルモンタージュ
発酵前浸漬:なし
発酵後浸漬:年と品種による。マセレーションは14-18日間。
発酵温度管理:特になし
樽の容量:ボルドー・バリック(225l)またはブルゴーニュ・ピエス(228l)
樽の産地:フレンチオーク
新樽比率:100%
熟成期間:30-36カ月
MLF:樽内で起こる
lプレスの種類:プヌマティック
l酵母はほとんど培養酵母(ブドウの糖度が極めて高いため、天然酵母では辛口にならない)。MLFは天然のバクテリア。
l発酵開始時にごく少量の亜硫酸を添加。
l瓶詰め時の亜硫酸量:白は28mg/l、赤は15mg/l(ともにフリーの量)
l清澄・濾過:清澄は赤白ともになし。白は軽く濾過、赤は濾過なしで瓶詰め。
熟成:
年間平均生産量:10000本
lそれぞれの生産本数と品種比率
MIANI Rosso :1200本。メルロ50%、カベルネ・ソーヴィニョン30%、タッツェレンゲ+ピニョーロで20%
COF Merlot:2000本
COF Ribolla Gialla:900本
COF Sauvignon:2000本
COF Tocai Friulano:1000本
Refosco Vigna Calvari:600本。カルヴァーリはクリュの名前
Miani Biancoは1996年以降生産されていない。
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イタリアの東端にある略称「フリウリ州」は、オーストリア、スロヴェニアと国境を接し、歴史のなかで民族の移動を余儀なくされた地です。近年東欧に悲劇が訪れた際、多くの難民を暖かく迎えた実績もあり、この地の人々は静かで忍耐強さ隣人愛に満ち、困難な状況に対応する柔軟性があると評されます。料理にも地方的な風味と国際性をうまくないまぜにした独特な味わいがあり、料理・ワインともに素晴らしい地方です。
シャルドネ、ソーヴィニョン、カベルネ、メルロなど国際品種が多く栽培されているため、フランスのコピーのように思われがちです。が、これらの品種の栽培の歴史はイタリアでもっとも古く、フリウリ産ワインは、イタリア以外では考えられない個性的な味わいと洗練されたスタイルを備えています。バートン・アンダーソンは、フリウリを「イタリアの現代の白ワインの聖地」と言っていますが、この地で生まれる優れた技と人間味あふれる味わいのワインに、大いに感銘をうけています。